【駐在員の本音】図を信じる日本人、文字を信じるアメリカ人 ― 異文化に揺れる資料作成あるある
第31話
初めての“文字だらけの資料”
アメリカ本社での最初の会議。
席に着くと、厚めの紙束が配られた。ページをめくった瞬間、思わず息をのんだ。
――グラフもチャートもほとんどなく、文字ばかりがびっしりと並んでいたのだ。
日本なら、色付きの棒グラフや円グラフがスライドに大きく表示され、「一目で理解できる」ように工夫されている。
その感覚のまま臨んだ私は、「これで本当に伝わるのか?」と戸惑うばかりだった。
文化の断層に気づくまで
最初は「不親切だ」「要点がわからない」と苛立ちすら覚えた。
しかし、やがて背景にある文化の違いが見えてきた。
日本:暗黙知を共有し、図やグラフで直感的に理解する。
アメリカ:契約社会ゆえに、誤解を避けるため文章で定義を残す。
つまり、日本は「スピード」を、アメリカは「正確さ」を優先しているのだ。
同じ資料でも、根本的に求めているものが違っていた。
ぶつかる“あるある”の壁
多国籍チームの中では、その差がさらに鮮明になった。
日本人からは「もっとビジュアルで示してほしい」と言われ、
アメリカ人からは「説明が足りない」と突っ込まれる。
どちらのスタイルだけでも通用しない――。
駐在員なら一度は味わう“資料作成あるある”だと思う。
模索と工夫のプロセス
そこで、私は少しずつ資料の作り方を変えていった。
グラフに注釈を添える:直感的な理解と、正確な定義を両立させる。
Executive Summaryを冒頭に置く:要点を1ページにまとめると、全員が入口でつまずかなくなった。
会議で補足を前提にする:すべてを資料に詰め込まず、議論の中で補うようにした。
最初は試行錯誤だったが、反応は確実に変わった。
「理解しやすい」「誤解が減った」と言われ、ようやく“伝わる資料”に近づけた気がした。
資料は文化の鏡
日本式の「わかりやすさ」と、アメリカ式の「正確さ」。
そのどちらかではなく、両方を組み合わせて初めて伝わる。
資料作成はただの業務ではなく、文化を映す鏡だった。
次の会議で資料をつくるときは、グラフと文章を“両輪”で置いてみてほしい。
きっと、異文化の壁を越える小さな一歩になるはずだ。
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