【駐在員の本音】静まり返る夏と冬の職場 ― 海外駐在で学んだ「サマーバケーションとホリデー文化
第30話
8月。送ったメールが一日経っても返ってこない。
二日経っても、三日経っても。
気づけばオフィスは空席だらけになっていた。
「会社ごと消えたのか?」と本気で思った。
それが、初めて体験した“サマーバケーション文化”だった。
サマーバケーションの衝撃
アメリカやヨーロッパでは、夏に2週間から1か月まるごと休むことが珍しくない。
メールは「I’ll be out of office until Aug 21.」の定型文で埋め尽くされ、誰とも連絡が取れない。
日本で働いていたころ、長期休暇といえばお盆や年末年始。
それも数日だけで、休むにしても“分割で少しずつ”が常識だった。
だからこそ、突然の“沈黙”は衝撃だった。
会議は開けない、承認は止まる、進捗ゼロの日々。
プロジェクトは、目に見えない大きな時計の針ごと止まってしまった。
板挟みの現実
日本本社からは「なぜ進んでいない?」と問われる。
だが現地では「休暇中に連絡はしないのが常識」。
どちらの文化も知ってしまった駐在員は、その真ん中で立ち尽くすしかない。
説明のしようがない沈黙が続く。
さらに待っている“冬の休暇”
驚いたのは夏だけではない。
同僚に「サマーバケーションから戻ったら、次はホリデーシーズンだね」と笑われたとき、意味が分からなかった。
やがて12月になると、衝撃の理由が分かる。
クリスマスから年始にかけて、オフィスはほぼ稼働しない。
“誰も返事をしない12月”が、夏と同じ規模でやってくるのだ。
一年のうち、二度も仕事が止まる。
これこそ、駐在初年度に体験する大きなカルチャーショックだと思う。
最初はただ混乱するばかりだった。
けれど何度も同じ状況に直面するうちに、少しずつ対処の仕方を覚えていった。
案件は休暇に入る前にできるだけ前倒しで動かすようになったし、期限を区切って「異議がなければ進めます」と伝える工夫もした。休む同僚から代理の担当者を紹介してもらい、連絡先を事前に共有することも自然な流れになっていった。
つまり、こちらでは「休暇をどう避けるか」ではなく「休暇を前提にどう設計するか」が仕事の常識なのだ。そう気づいたとき、ようやく心の中の戸惑いが少し和らいだ。
最後に
日本では「迷惑をかけないために休まない」。
こちらでは「迷惑をかけないために前もって休む」。
文化が違えば、同じ“休み”にも真逆の意味が宿る。
最初はただ戸惑うばかりだったけれど――
夏と冬、静まり返ったオフィスを経験してようやく思う。
休む勇気もまた、働く力のひとつなのだ、と。
心に残った方は、「スキ」と「フォロー」で応援していただけると嬉しいです。
👇前回のお話
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださりありがとうございます。スキ/フォローだけでも励みになっています。無理のない範囲で応援いただけたら嬉しいです。