【駐在員の本音】帰国便の先に“私の仕事”はあるのか
第29話
赴任してから、いろいろな仕事を経験した。
営業の数字を追う日もあれば、企画書を急いで仕上げる日もある。
本社との調整、現地スタッフとの会話。
専門とは言えない分野にも手を伸ばし、気づけば業務の幅は広がっていた。
成長の実感
その広さは、赴任前には想像もできなかったものだ。
海外で働くという環境は、強制的に枠を超えさせる。
人が足りなければ自分で動くしかなく、言葉が通じなければ身振り手振りで伝えるしかない。
正解は分からないまま進んできたが、それでもなんとか形にしてきた。
その繰り返しの中で、少しは成長できたのだと思う。
浮かぶ問い
けれど、ふと立ち止まると、胸の奥にひとつの問いが浮かぶ。
——この経験は、帰国したときにどう評価されるのだろうか。
海外で積んだ「広さ」は、日本での「深さ」と比べてどう映るのか。
ジェネラリストとしての適性があると言われるのか、あるいは「専門性が薄い」と判断されるのか。
想像はしてみるものの、答えはどこにも書かれていない。
進む仕事
机の上には、処理しきれていないメールが並んでいる。
来週の会議の資料もまだ完成していない。
目の前の仕事は次々にやってくるのに、未来のイメージは曖昧なままだ。
数字や成果を出しても、それが帰国後の配属やキャリアにどうつながるのか、見通せない。
曖昧さ
「多様な経験をした」と言えば聞こえはいい。
けれど、その多様さが逆に自分をぼやかしてしまう気もする。
器用にこなすがゆえに、ひとつを極めきれない。
そんな焦りが、静かに胸の中に積もっていく。
比較の目線
周りを見れば、現地で根を張るローカル社員がいる。
専門性を磨き続けている同僚もいる。
帰国後に彼らと並んだとき、自分の立ち位置はどこになるのか。
考えるほどに霧が濃くなっていく。
不安のまま
不安は消えない。
それでも朝が来れば、会議に出て、報告書を書き、次の週を迎える。
未来が見えなくても、仕事は進んでいく。
成長の手応えと、行き先の見えない不安。
その両方を抱えながら、今日もまた仕事に向かっている。
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