【駐在員の本音】駐在前はゴルフをするなんて思ってもいなかった——それが僕の〈第三の場所〉になった。
第37話
駐在前はゴルフをするなんて思ってもいなかった。
接待のスポーツ、年配の人の趣味。どこか自分とは縁遠い世界だと思っていた。
けれど、アメリカに来て数ヶ月。週末の朝、芝の匂いを吸い込んだ瞬間にわかった。
ここは、仕事でも家でもない——僕の〈第三の場所〉になりうると。
ゴルフがくれた“避難所”の感覚
平日は家と職場の往復。慣れない英語、時差会議、寝る前の未読通知。
胸の奥で小さな石が増えていくような日々だった。
クラブを振り抜いた音が、その石をコツンと崩す。
打球が空に消えると、一緒に悩みも小さくなる。
それだけで、月曜にもう一度やってみようと思えた。
見ず知らずのローカルと回るということ
アメリカでは「1人予約」が普通だ。ティーに立つと、自然に見ず知らずの人と同じ組になる。
最初は怖かった。沈黙が怖い。英語が追いつかないのも怖い。
でも、ある朝の最初の一言で空気は変わった。
“Mind if I join?”
“Sure. Welcome.”
ぎこちない自己紹介。風の音。沈黙。
そして、フェアウェイに転がった僕の一打に、彼が言った。
“Nice shot.”
僕も返す。“Thanks.” それからは不思議と会話が続いた。
ラウンドの終わり際、グローブ越しの握手。
“Good round!”
それだけ言って、別々の車で帰る。もう会わないかもしれない。
それでも、その5時間だけは、孤独がほどけていた。
スコアより大事なもの
もちろん、スコアはまだまだ。ミスショットも山ほど。
ゴルフは全然うまくならないけど笑、それでも芝の上に立つだけで心が軽くなる。
朝日の中で深呼吸。
短い英語でも通じ合えた瞬間の軽さ。
歩数計はいつの間にか15,000歩。体も、気分も、少しずつ整っていく。
接待のイメージだった“昔の自分”が、ここでほどけていく。
今の僕にとってゴルフは、数字では測れない“心を整える習慣”だ。
第三の場所
駐在前はゴルフをするなんて思ってもいなかった。
けれど今では、ゴルフ場が僕の〈第三の場所〉だ。
スコア以上に得られたのは、孤独をほどく時間と、健康を取り戻すリズム。
——あなたにとっての“心を休める場所”は、どこだろう。
(ちなみに僕は、いまだにゴルフは全然うまくならないけど笑)
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