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ケーキを求めて熊野古道。一山越えた先に手に入れたもの【3度目のソロキャンプ】

2日目はただただゆっくりしようと思っていた。
ソロキャンプ2日目。
米を炊き、焼き肉を焼いて食べ、本当にちょうどいい天気だったので、テントの扉(と言うのか?チャックと言うのか?)を開けてゴロゴロしながらミヒャエル・エンデのモモをまた読み直そうかな、なんて思っていた昼下がり。


平日に1人でキャンプ場で肉を焼いて食べたりゴロゴロしている40代女性に、キャンプ場で働くお兄さんが恐る恐る近づいてきた。多分、恐る恐るだったと思う。
「こんにちは!」私から元気よく挨拶をする。
怪しい者ではないですよ、という意味だ。
お兄さんは「こんにちは。いい天気ですね。今から熊野古道を歩きに行かれますか?」とそう聞いてきた。
「ああ、私は中辺路(メインのルート)は全部もう歩いているんですよ。時々また歩いたりしますけど、前回も歩いたし、今日はここでのんびりしようかなーと思って。」と伝えた。
お兄さんは「そうですか。ここからだと湯の峰温泉まですぐだし、そこから一山越えたら熊野本宮に出られるし、それよりも、山を下りてすぐの場所にむちゃくちゃおいしいケーキ屋さんがあるんですよ。」というプチ情報を挟み込んできた。
何?
ケーキ屋さん?
キャンプ場と結びつきにくい単語やんかいさ。
「そのルートって大日越えですか?数年前に歩いたことがあります。でもケーキ屋さんがあの辺にあるとは知らなかったです。」と言うと、
「新しくできたとても有名なケーキ屋さんで、シュークリームがむちゃくちゃおいしいんですよ。今日は平日だからやってますよ。大日越えは1時間くらいで越えれるから。」とケーキ屋の回し者かというくらいにお兄さんが勧めてくる。
多分、ここのキャンパーに熊野古道のルートについて教えたりするのがお兄さんの日常なのだろうが、予想外に私が中辺路ルートを全部踏破したと言うもんだからびっくりして、ケーキ屋という奥の手を使ってきたような、そんな気がする。

しかし、こっちだって、それを聞いたら登らないわけにはいかない。どんなにメスティンを駆使しても生クリームは作れない。
よっしゃ、一山越えるか。そう決意した。
誰かが1時間という行程は私にとって2時間弱だろう。
それでも15時までには着くし、帰りはバスに乗って帰ってきてもいいし、本宮近くの1つしかないコンビニで何か調達をしてもいいな。
そう思い出発した。
口の中は完全に生クリームかカスタードクリームの受け入れ体制が整っていた。

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こんなにも空いている世界遺産、湯ノ峰温泉のつぼ湯は初めてだ。入ろうか3秒ほど悩んだがケーキをとった。
湯の峰温泉の登り口まで行き、看板を発見。さてここから登ろうか、と気合を入れる。

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10分ほど登った頃に、東京にいる友達のポン子さんともう一人の友達が高田馬場で会っているらしく、このタイミングでLINEでビデオ通話をすることとなった。
神聖なる熊野古道の山の中でたった一人でビデオ通話を始める私。山の中から高田馬場へと私の映像と声をお届けして、楽しいひと時であった。
さて。
電話を切ってから、ケーキ屋に向けて一直線に世界遺産の聖なる道を歩む。

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こんな神聖なる道の世界遺産、古からの巡礼路で、ビデオ通話する奴なんていない、多分。

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14:50に山を下りることができ、まさに山を下りてすぐの場所にケーキ屋があった。
そして予想もしなかった事態。

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まだ15時になっていないのに「15時販売分完売しました」の看板が。
なんて日だ!by小峠。
こんな田舎の(失礼)山を下りた場所のケーキ屋さんで、ど平日の15時前にケーキが売り切れるなんてことがあるなんて、予想もしていなかった。
私が呆然と立ちすくんでいる間、和歌山ナンバーの車が次から次へとやってきて、予約していたシュークリームを取りに来る。次から次へと。
ケーキ屋とは言っていたが、シュークリームしかないらしく、予約だけでいっぱいだったのだ。気分はショートケーキだったから、シュークリームしかないことと、完売していることとダブルの衝撃。
そんなー…。
私は生クリームかカスタードクリームのために1時間半かけて一山越えてきたのですよ。
そんなことは知ったこっちゃないわな。
しょぼんとして店を出る。

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コンビニでペットボトルの午後の紅茶レモンティーを買い、トボトボと歩く。バスは行ってしまった直後で、次に来るのは1時間半後。
なんて日だ。
平坦な道を歩くルートで、のんびり1時間かけて歩いて帰ることにした。

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すると車道沿いに小さな商店があり、入ってみた。
熊野牛が売っていたり、みかんが置いてあったり、どれも激安の野菜が並んでいた。
おお!
私の大好きなさつまいもちゃんの、ぶっといのが2本で100円!
いいねぇ。
ケーキの代わりにしよう。

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ケーキの代わりにこれを買って、すっかり上機嫌になる私。
よーし、これを今夜はクリームシチューにぶっ込んでやろうじゃないか。
わくわくしてきた。
忘れずに牛乳も買って車道沿いに歩きながら、キャンプ場へと戻る。

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寒くなってきたので先に温泉に行き、ひとっ風呂浴びた後、日は暮れて真っ暗になっていた。
ヘッドライトを装着し、調理を開始。
いもを洗ってザクザクと切る。
ミルフィーユ鍋用に買った豚肉と白菜の残りを別の袋に持ってきていたのでそれも入れ、予備の551の焼売もチャポン。そしてもち巾着もチャポン。
もう大集合だ。


そしてコンソメを入れてしばらく煮て粉末のルウを入れて牛乳を足してまた煮込んで出来上がり。

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いやん、最高やん。
むちゃくちゃあったまる。
家でも、クリームシチューを寒い冬の夜に食べるってのが私は非常に好きなのです。
ラージメスティンいっぱいのシチューをペロリと平らげる。
そうそう、お昼の白飯の残りも入れてクリームシチューもカレーライス的に食べたい私なので、ちゃんとそうさせていただいた。
ごはんに合うこってりクリームシチューだった。
商店で買ったちょっとしたカボチャサラダもつまみながら。
私は、秋になるとさつまいもとかぼちゃをとにかく食べる、お菓子も含めて。
無印良品のバウムクーヘンもかぼちゃ味一筋だし、安納芋味のカントリーマウムが登場する秋を毎年待ちわびている。
今夜のメニューは、秋の代表的なのりまき料理として完成度が高い献立だった。大満足だ。
ヘッドライトに照らされながら食べるクリームシチューは美しい。さつまいもの黄金の輝きが美しい。

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寒い夜の献立にミルフィーユ鍋とクリームシチューで臨んだソロキャンプ。
メシ部門は完全勝利だ。
もうすっかり生クリームとカスタードクリームのことは頭から消えていて、同じクリームでも、クリームシチューで幸せに満たされた。
出会ってくれてありがとう。
この場を借りて、100円のおいもさんに感謝の意を述べたい。
何もかも決めて用意する献立よりも、こういう旅先で見つけたものを買って調理する遊び心がたまらんなぁ。
旅と同じで、事前に用意周到に決めすぎないで、その場その場での成り行きに任せて転がす楽しさを思い出させてくれたおいもさんに感謝したい。

この後、またこの日の夜もお湯を沸かし続ける作業に取り掛かり、湯たんぽ2つで、ポカポカと寒い夜を凌ぐことができたのだった。




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