特許出願していればと思うもの
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許出願していればと思うもの」をお伝えします。
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1.ポジショニング戦略のおさらい
前々回の記事「ポジショニングの穴の注意点」で、ポジショニングの穴を見つけるときには自社目線でなく顧客目線で探すこと、穴を見つけたら先駆者としての証拠を残すことが重要でそれには特許出願が適していると書きました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/n255de2a390e7
今回は、上手くポジショニングの穴を見つけたのですが、特許出願をしていなかったため、複数の元祖といわれるお店ができてしまった例を説明します。
2.特許出願をしていればと思うもの
数年前にも、オートバイの排気管である集合管について、特許を取得していればという記事を書きました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/n8d30a8459f01
上記の記事である集合管では、お披露目した場所がレース場で、大勢の観客が観戦しておりましたし、メディアの取材もあったと思われるので、日本の「ヨシムラ」が元祖であるという定説は覆りそうもありません。
しかし、食品の分野ではそうもいかず、複数の「元祖」が出現することになります。
今回取り上げる、「苺(いちご)大福」がそうなりました。
大福餅は昔からありました。苺も昔からありました。でも昭和後期まで、これらを組み合わせたものはなかったようです。

https://www.oosumi-tamaya.co.jp/html/ichigo_mame_daifuku.html
(大角玉屋HPより引用)¹
今の若い人達は何の違和感もないと思いますが、私のようなオッサンには、初めて聞いたとき、アンコに生の果物?何それ?という印象でした。
確かに食べてみると美味しいです。
まさしく、「和菓子の穴」を見つけた典型的な例だと思います。
これを考えた人、天才ですね!
しかし、特許出願をしていなかったため、元祖を名乗る店、又は元祖といわれる店が複数出たようです。
インターネットで見てみると、5~6件以上の和菓子屋さんが元祖であるといわれているようです。
3.苺大福に関する特許を検索してみた
インターネット記事によると、特許出願等をしているお店もあると記載されています。
私も弁理士ですので、インターネット情報は取りあえず置いといて、自ら苺大福に関する特許を簡単ですが検索してみました。
特許分類はFI:A23G3/00が該当しそうです。
検索してみると、苺大福の内容が記載されている文献は、実昭開63-68787号公報(出願番号は実願昭61-164058)²がありました。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-S63-068787/23/ja

後年になってみると、他にも苺大福に関する出願はあるのですが、昭和後期で見ると私が見た限りこれだけでした。
この実用新案登録出願は、出願日が昭和61年10月25日で、三谷一二さん他1名が出願人となっております。
残念ながら、この出願は拒絶査定となっております。
今では、実用新案登録出願は基本的に無審査ですが、当時は特許出願同様に新規性進歩性等の審査がありました。
ちなみに、三谷一二さんは、苺大福の元祖といわれている「一不二」を経営していらしたようです。
4.上記の出願と他店のホームページとを比較
一方で、これまた苺大福の元祖といわれている「大角玉屋」のHPを見てみると、昭和60年に苺大福を製造販売したとあります。
https://www.oosumi-tamaya.co.jp/html/ichigo_mame_daifuku.html
(大角玉屋HPより引用)¹
上記の、三谷一二さんの出願日より前です。
また、三谷一二さんの出願内容を見てみると、苺大福そのものというより、苺大福の改良発明のようです。
権利範囲を決める請求項には「苺の酸味に応じて糖度が調整された餡で苺をくるんだ餡玉を薄い餅皮で包んだ大福餅。」とあります。
つまり、苺大福そのものの構成では権利を主張しておりません。
「苺の酸味に応じて餡の糖度を調整」しなければ真似し放題という権利範囲だったのです。
このことから、三谷一二さんも、既に出願時に苺大福を販売していて新規性がなく、苺大福そのものでは出願できないために改良発明で出願した可能性があります。
また、三重県のお店が元祖という情報もあります。
結局、誰が元祖なのかということになってしまいますね。
これ、苺大福を一番に考えた人が直ぐに特許出願をしていれば、と思うのは私だけでしょうか。。。
とはいっても、当時は今ほど知財について重要視されていなかったので、仕方が無い面もあると思います。
あと、特許出願していなかったからこそ、苺大福が全国に広まったともいえます。
そうやってみると、需要者にとっては悪いことばかりではなかったかもですね。
御社でも、何かを考えたとき、知的財産権で保護することを忘れないようにしてください。
この記事が御社の発展に寄与することを願っております。
引用
¹「いちご豆大福®」.大角玉屋HP.https://www.oosumi-tamaya.co.jp/html/ichigo_mame_daifuku.html
²三谷一二,庄司義勝.大福餅.実公昭63-68787号.
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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