エッセイ マスオさんが日本を救う
私たち夫婦には子どもがおらず、私の両親も女房の両親もともに他界している。二人だけの家族である。しかし、というか、だから、と言っていいのかわからないが、社会の少子高齢化がとても気になる。若い人が結婚せず、子どもも増えない。人口がどんどん減り続けている。それだけでなく、児童虐待、高齢者の孤独、晩婚化(妊娠・出産は肉体的には早い方が危険が少ない)、介護者の不足・・・、それらの問題の根本の原因は核家族にあるのではないかという気がしている。
「サザエさん」という長寿アニメ番組がある。我が家でもいまだに毎週欠かさず見ている。私が高校ぐらいの時からずっとやっている。再放送も含めて週に2回ゴールデンタイムで放映されていた時期もあった。なぜこれだけ時代を越えて人気があるのか。
漫画の背景となっているのは、多分1970年代だと思う。(原作はもっと古い)パソコンも携帯も自家用車もなく、お茶の間に家具調テレビがデンと鎮座している時代だ。その頃に対する懐かしさもあるとは思うが、私が高校時代はリアルタイムなので、懐かしさだけでは人気の説明がつかない。あの家族の仲の良さは一体どこからくるのか。かみなり親父のいる、古い家父長制の名残りを引きずった三世代同居の、大家族。喧嘩もするがすぐに仲直りをする。タラちゃんが可愛い盛りで、手もそんなに掛からない。おじいさん、おばあさんも元気で家庭を支えている、そんな家族が一番いい時期で時間がずっと止まっているという非現実性も、魅力の一つだとは思うが、私は敢えて言いたい。あの家族を支えているのはマスオさんだと。
マスオさんは磯野家の長女サザエの夫であり、タラちゃんの父親であり、サザエの弟妹であるカツオとワカメの義兄である。苗字はフグ田であり、お婿さんではない。世間では「マスオさん状態」というらしいが、この結婚形態が、あの大家族の平穏な幸せを支えているんだと思う。
まずタラちゃんの子育て。サザエとマスオ以外にも、おじいさん、おばあさん、カツオにワカメと、みんなが面倒を見ている。サザエの負担はものすごく軽減されている。タラちゃんの情操教育にもとてもいい。タラちゃんが幼稚園にでも行くようになれば、サザエが働きに出ることも可能だろう(今でも無理ではない)。家事は母親のフネと二人でやっているから楽だ。父親の波平と母親のフネが将来、もし介護が必要になったとしても自分の親だから、サザエの精神的負担は、夫の両親の世話をするよりは、だいぶ楽になるはずだ。住居はもちろん一つで済むから、経済的無駄も少なくなる。これらはすべて、マスオさんが「マスオさん状態」に耐えてくれているからこそ可能になっているのである。
漫画ではマスオさんも大家族に憧れ、楽しんでいるように描かれているが、実際にはかなり窮屈な思いをしていると思う。しかし、男は、昼間は仕事で外に出ていることが多い。嫁姑が長い間顔を突き合わせていることを考えれば楽だと思う。多少のことは我慢しなくてはいけない。
今までの、結婚形態は男中心に出来過ぎていたのだ。大家族にしろ、核家族にしろ、家事と育児のより多くの割合を妻が担ってきた。その負担の重さを考えての晩婚化とその結果としての子どもへの負担。仕事と家庭の両立の難しさ。妻と子どものために、男はもっと我慢しなくてはならない。これからは、「女の子が生まれて良かった。」と言われる時代になればいい。男中心の時代は終わったのだ。
