【IR特別対談:後編】「街」としてのnoteの展望|AI時代にプラットフォームが果たす役割
前編では、AI技術がクリエイターの創作活動に与える変化について、CEO加藤貞顕とCXO深津貴之の見解をお伝えしました。AIによって創作の可能性が広がる一方で、新たな課題も生まれています。
後編では、この変化を踏まえて、プラットフォームとしてnoteがどのような役割を果たし、どのような戦略で未来に向かうのかについて詳しく聞いていきます。
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noteのAI戦略:3つの柱で支えるクリエイターエコシステム
──前編でお話しいただいたような環境変化を踏まえ、noteはどのようなAI戦略を描いているのか?
加藤:noteのAI戦略は大きく3つの柱で考えています。
1つ目は、AIを使ってコンテンツの創作をお手伝いすること。note AIアシスタントのような機能や、法人向けのAI執筆サポートなどがこれにあたります。
2つ目は、サービス全体で、読者とコンテンツがより出会いやすくする仕組みを、AIを活用して裏側でどうつくっていくか。
そして3つ目は、これはどの会社も同じだと思いますが、社内業務の改善です。AIによって業務改善できる領域が非常にひろがっているので、これにどう取り組むか。この3つが主な課題だと考えています。
深津:コンテンツを扱う会社として、クリエイターが創作をはじめるための支援に加えて、創作を続けられるようにするためにどうサポートしていくか、を考える必要があるということです。AIによってだれもがコンテンツをつくることができ、コンテンツが溢れる時代になった時、クリエイターがきちんと収益を得て活動を継続できるか、エコシステムを維持できるかという点が非常に重要になります。
例えば、コンテンツが無限に増えるのであれば、クリエイターに対してコンテンツ以外の収入源をサポートする必要が出てくるかもしれません。ファンクラブやコミュニティ運営の価値を高めたり、仕事が欲しい人と仕事をお願いしたい人を直接つなげるマッチングの仕組みを強化したり、クリエイターのキャリア育成を支援したり、といったことが考えられます。
──変化が訪れた時代において、noteが今後もビジネスチャンスを掴んでいくための強み、優位性の核となるものは?
深津:noteに集うクリエイターの多様性です。生成AIが強くなればなるほど、人間そのものの価値が相対的に高まります。さまざまな分野のクリエイターがnoteというインターネット上の『街』に集い、活躍し、協業できるような、人のポートフォリオの多様性が私たちの強みです。
加藤:私も近しい考えです。我々はずっとnoteを『街』と表現してきましたが、多様な人々がたくさん集まって、そこかしこで出会いがあり、新しい何かが生まれるのが街の魅力です。人々がわざわざ遠くから集まってくるのは、そこにおもしろいことや機会があるからです。すでにnoteがそれを持っていることが強みであり、AIなどのテクノロジーを活用して、そこをいかに強化していくかが、今後ますます重要になると考えています。

CXO 深津 貴之(ふかつ たかゆき)
インタラクションデザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブファームTHE GUILDを設立。現在はnoteのCXOなど、領域を超えた事業アドバイザリーを行う。執筆、講演などでも精力的に活動。
note:https://note.com/fladdict
プラットフォーマーの役割:不確実性への対応とリスクヘッジ
──今後もクリエイターが安心して創作活動を続けられるようにするために、プラットフォーマーとしてどのような価値を提供していくべきだと考えている?
加藤:大きなテーマは変わりません。『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする』ことです。
AIの活用で創作をはじめるハードルは下がりますから、より続けられるようにする部分が重要になってきます。AIによってコンテンツが増え、社会環境が変化する中で、クリエイターが必要な情報や人に出会えるようにし、それが収益や仕事、あるいは友人関係といったさまざまな『続けられる要素』につながるよう手助けすることが、私たちの役割です。コンテンツが増えるからこそ、つながりの部分の価値が高まると考えています。
深津:抽象的な話になりますが、生成AIやテクノロジーの進歩によって、未来の不確実性(ボラティリティ)の幅と速度が増しています。ものすごいAIが登場するかもしれないし、しないかもしれない。コンテンツが爆発的に増えるかもしれないし、クリエイターの権利が侵害されるようなことが起こるかもしれない。個々のクリエイターや企業では対応しきれないほど、未来の選択肢の幅が不透明かつ大きくなっているのが現状です。
このようなボラティリティが高い時代にプラットフォーマーがやるべきことは、特にクリエイターの持続可能性を維持するという観点から、クリエイターの代わりにリスクをヘッジし、安全マージンを確保することです。
ダムのように、水が多ければ貯め、足りなければ放出する。プラットフォーマーが技術や環境の変化を吸収するバッファーとなることで、どんな未来が現れても個々のクリエイターが対応できるよう支援する。これが、プラットフォーマーの重要な役割だと考えています。
加藤:結局、私たちがやるべきことはシンプルです。noteになにかを書き、だれかに見てもらう。その結果、お金や仕事、友人といったなんらかの機会を得る。そういった価値をクリエイターに提供するためには、プラットフォームとしての規模が重要です。
多くの人が集まる場所で、適切な出会いの仕組みがあり、そこに収益やさまざまな機会、チャンスが集まる。私たちはnoteを『街』だと考えていますが、良い『街』として機能する状態をつくることが、これまで以上に重要になってくると考えています。
将来のビジネスチャンス:コンテンツ増加がもたらすプラットフォームの優位性
──この先のnote社の目標や、考えているビジネスチャンスについて
加藤:パーソナルコンピューターの登場からインターネット、そしてAIへと続く流れは、一貫して個人の力を強化するツールの発展という背景があります。AIはそれをさらに拡張するものです。
そうなると、個人が企業や大きな組織に頼らずとも、自身のアイデアやビジョンを発信し、仲間を集めてビジネスや創作活動を行うケースが今後ますます増えてくるでしょう。その際には必ずなんらかの流通の仕組みが必要であり、その一部を担うのがnoteです。世の中の大きな方向性と私たちのやっていることは一致しており、非常に大きなチャンスがあると考えています。
もちろん、AIの発達や環境変化は激しく予測は困難ですが、人々の力をエンパワーする仕組みを作り続けていけば、今後もnoteの価値は高まっていくと信じています。

代表取締役CEO 加藤 貞顕(かとう さだあき)
アスキー、ダイヤモンド社に編集者として勤務。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海)、『ゼロ』(堀江貴文)、『マチネの終わりに』(平野啓一郎)など話題作を多数手がける。2012年、コンテンツ配信サイト cakesをリリース。2014年、メディアプラットフォーム noteをリリース。
note:https://note.com/sadaaki
深津:プラットフォーマーとして考えると、これから生まれてくるコンテンツの量は確実に100倍、1000倍、あるいはそれ以上になることが予想されます。
ここで重要なのは、コンテンツがそれだけ増えた時代に、個々の企業や個人のウェブサイトがその膨大な量のコンテンツを扱いきれるか、ということです。現実的ではないでしょう。
つまり、コンテンツが増えれば増えるほど、すでにAIを活用して大量のコンテンツを効率的に管理し、ユーザーに適切に届けるための高度なレコメンデーションや検索などの技術を持っているプラットフォームの価値が相対的に高まると考えられます。インフラを含め、自社で100万本の記事を管理するよりも、それを扱えるプラットフォームを利用する方が効率的です。個々の企業がそれぞれシステムを構築するコストと、プラットフォームが多数の利用者のコストをプールしてシステムを構築するコストを比較すれば、プラットフォームにコスト優位性が生まれるのは明らかです。
したがって、コンテンツが増えれば増えるほど、すでに多くのコンテンツを集め、ディストリビュートする能力を備えているプラットフォーマーは、そのポジションを活かしておもしろいいことができる優位性を維持し続けることができると考えています。
長期的なビジョン:多様な成功と揺るがない基盤の構築
──最後に、二人の個人的な野望のようなものはあるか?
加藤:いちばん大事なのは、参加しているクリエイターのみなさんにとって、それぞれのサクセスが成立している状態ですよね。サクセスというのは、たとえば友達ができるとか、仕事が見つかるといった、人それぞれだと思いますが、みんなが楽しめる状態をつくりたい。
そして、私は元々編集者なので、だれもが憧れる象徴として、大きな成功事例も生み出していきたいですね。たとえば映画のアカデミー賞のような、海外にも通用する新しい大きなコンテンツがnoteから生まれるようにしていきたいです。
そのためには、プラットフォームとして、日本国内で言えばLINEやX(旧Twitter)のように、より多くの人が当たり前に使っている状態になる必要があります。まずはそこを目指しつつ、新しいコンテンツの芽を見つけ出していきたいです。
深津:個人的には、AIなどによって未来の変動幅が非常に大きくなっている時期には、あまり長期的な未来予想を具体的に置かないようにしています。むしろ優先順位が高いのは、どの未来が来てもゲームオーバーにならないようにするための基盤づくり、つまり反脆弱性(アンチ・フラジャイル)の構築であると考えています。
中長期で目指すものがあるとすれば、noteおよびnoteで活動するクリエイターのみなさんの収入ポートフォリオを多様化すること。コンテンツ販売以外にも、どの未来が来ても大丈夫なように、分散投資に近い形のクリエイティブ体制を構築することが重要だと思います。

AI技術の進歩によって創作環境が大きく変化する中、noteはプラットフォームとして、クリエイターが安心して活動を続けられる「街」としての機能を強化し、多様な収益機会を提供することで、未来への橋渡し役を担おうとしています。
前編・後編を通じて見えてきたのは、AI時代においてもクリエイターの創造性と人間らしさが価値の中核であり続ける一方で、プラットフォームがその価値を適切に流通・マッチングさせ、持続可能なエコシステムを構築することの重要性です。
noteは、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションのもと、テクノロジーと人間性の調和を図りながら、クリエイターエコノミーの新しい未来を切り拓いていきたいと考えています。
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