【IR特別対談:前編】AIが拓くクリエイターの新たな可能性|note CEO・CXOが語る創作の未来
AI技術の急速な進歩がクリエイターの創作活動や情報発信のあり方を根底から変えようとしているなか、noteはこれからどう変化していくのか。
株主・投資家のみなさまにnoteが思い描くビジョンをお伝えするため、CEO加藤貞顕とCXO深津貴之に、AI時代におけるクリエイティブの可能性と課題について聞きました。
AIによって激変する創作環境:チャンスとリスクが共存する新時代
今年1月にGoogleとの資本業務提携を発表。この提携をきっかけに5月にカリフォルニアで開催されたGoogle I/Oに現地参加し、急速に進化するAIの現状を肌で感じたという2人。
──Google I/Oで感じた、AI技術の進歩の現状をどう捉えた?
深津:数年前に生成AIが登場した際、Google社は社員に対しコードレッド(緊急事態宣言)を発令したと言われ、AIシフトを強力に推進し始めました。今年のGoogle I/Oの発表を見る限り、Googleはチームレベルからビジネスモデル、戦略に至るまで、生成AIの導入に本気で舵を切り、組織体制を根本から変えてきたという印象を受けました。
加藤:私も、Googleという会社が全力でAIを取り込み、具体的なプロダクトに落とし込んでいるのを目の当たりにして、その本気度を感じました。巨大な企業が本気でAIインテグレーションを進め、実用的なアプリケーションを次々と投入することで、世の中が変わるスピードが一気に早まったと感じています。
──その中で、特にクリエイターを取り巻く創作環境はどのように変化していくと考えている?
深津:一言でいうと、ボラティリティが高まる、つまり良いことも悪いことも振れ幅が非常に大きくなる印象です。例えば、良い面で言えば、これまで文章や絵など単一の表現しかできなかったクリエイターが、一人でゲームや映画をトータルで制作できるようになる可能性があります。また、ある分野に特化した才能を持つ人が、AIのアシストによって苦手な部分を補い、新しい才能として開花するケースも増えるでしょう。
一方で、人間とAIがそれぞれつくるコンテンツの競争が始まったり、創作コストの低下によって世の中のコンテンツ量が爆発的に増加したりした際に、人間がそれを消費しきれるのか、といった課題も出てくると思います。
加藤:深津さんが言うように、AIによって創作は格段にしやすくなります。しかし、それによってコンテンツの数が大きく増えます。そうなると、今度はどうやって自分のコンテンツに出会ってもらうか、そのディストリビューションの仕組みやプラットフォームのあり方が重要になってきます。その出会いの仕組みにもAIが活用されていくでしょうし、環境全体が変化していくのは間違いありません。
noteのミッションとAI:「創作をはじめる」から「続けられる」へ
──noteが掲げるミッション「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」に対して、AI技術の発展はどのような影響をもたらすか?
加藤:テクノロジーは基本的に人々に力を与えるものですが、AIはその力が特に強いと感じています。インターネットやコンピューターが登場した時も、生産性が向上し、伝える力が増し、コンテンツの数が増えました。AIによって、その流れがさらに、そしてものすごく拡大されるのがこれから起こることだと考えています。
ですから、『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする』というミッションにおいて、AIは『つくる』という行為をより容易にし、ポジティブな影響を与えるでしょう。
一方で、『続けられるようにする』という部分では、コンテンツの数が爆発的に増える中で、どうやって自分の作品を見てもらうか、そして人間がつくったものとAIがつくったものが共存する中でどう生き残っていくか、という点が大きなテーマになります。チャンスもあれば淘汰される可能性もある。そこに対応していく必要があります。

代表取締役CEO 加藤 貞顕(かとう さだあき)
アスキー、ダイヤモンド社に編集者として勤務。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海)、『ゼロ』(堀江貴文)、『マチネの終わりに』(平野啓一郎)など話題作を多数手がける。2012年、コンテンツ配信サイト cakesをリリース。2014年、メディアプラットフォーム noteをリリース。
note:https://note.com/sadaaki
AI時代におけるクリエイターの価値と役割:人間ならではの強みとは
──AIが進化する中で、クリエイターの創作価値はどのように変わっていくのか。AIに代替される部分と、人間ならではの部分について二人の考えは?
深津:AIが実務的な部分を担うようになると、人間の仕事は相対的にAIを統括したり指示したりする役割に近くなります。つまり、多くのクリエイターは、単独で作品をつくるというより、ディレクターやプロデューサーとしての側面が求められるようになるでしょう。つくりたいもののプランや戦略を決め、方向性を示し、実際の制作はAIに任せる、といった形です。
これにより、例えば小説を書く場合、これまでは執筆そのものに多くの時間を費やしていましたが、AIを使ってファンタジー世界の詳細な設定を構築したり、膨大な資料を作成したりと、1つの作品に対して投入できる情報量や労力の密度を格段に高めることができます。その結果、作家自身も文章力だけでなく、音楽や映像など幅広い分野への理解や判断力が求められるようになるかもしれません。
一方で、AIにリプレイスされないものの1つとして、『歴史』や『文脈』があります。その作家がどのような経験を積み重ね、その結果としてこの作品が生まれたのか、というストーリーや意義は代替されません。作家自身の物語の先に作品がある、ということがより重要になるでしょう。
また、AIと共に世界観そのものを創り上げ、ファンがその世界で二次創作をするなど、共に育てていくような、ユーザー参加型・共創型のワールドデザイニングといった、これまでにない創作の形も現れるのではないでしょうか。
さらに、AIをよりパーソナルな形で活用することも考えられます。例えば、20年分の日記をAIに読み込ませれば、そのAIはまるで自分のすべてを知っているかのようにふるまう創作のパートナーになるかもしれません。日々の記録を気軽に残しておくことが、将来的に創作だけでなく、医療やファイナンス、人生計画など、さまざまな場面で大きな価値を生む可能性があります。AIにリプレイスされない価値として『歴史』を挙げましたが、その歴史を記録しておくことの重要性はますます高まるでしょう。

CXO 深津 貴之(ふかつ たかゆき)
インタラクションデザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブファームTHE GUILDを設立。現在はnoteのCXOなど、領域を超えた事業アドバイザリーを行う。執筆、講演などでも精力的に活動。
note:https://note.com/fladdict
加藤:いまの深津さんの話は、すこし規模の大きな創作の話に聞こえるかもしれませんが、AIによってこれまでにないつくり方が可能になるわけですから、すべてのひとが創作の幅を広げやすくなります。
だからといって、全員が無理にAIを使う必要もないんですが、新しい選択肢ができたということと、それによって新しい表現や仕事が生まれるということが大事だと思います。
クリエイター支援の具体的な取り組み:AIが切り拓く新しい創作体験
──クリエイターの創作をサポートするという点では、2023年に発表された「note AIアシスタント」や、今年6月に発表された「AI学習への対価還元プログラム」があるが、クリエイターからの反響は?
加藤:note AIアシスタントは、noteのエディタ(記事の編集画面)上でAIを活用できる機能です。非常にシンプルですが、記事のアイデアやタイトル案、見出し作成などをAIがサポートしてくれるため、評判は良いです。
こちらに加えて、クリエイターが創作を続けやすくするための仕組みをさまざま用意していく中で、AIによる学習から新たに対価を得る仕組みとして提供できる可能性があると考え、AI学習に関わる対価還元プログラムの提供を、今年の8月からはじめることにしました。このプログラムに参加するクリエイターのコンテンツがAI事業者の学習用データとして利用された場合、それによって得られた収益をクリエイターに還元する、という内容です。
これまで3回にわたる実証実験を行い、多くの方から『新しい収入源となるのがおもしろい、嬉しい』という声をいただいたため、本格導入に至りました。金額の多寡はありますが、ご自身の作品がこういった形でも評価されること自体を喜んでいただけているようです。」
──AI学習への対価還元プログラムについて、今後の展望は?
加藤:この分野は日進月歩で、世の中がどう進んでいくか正直まだ見えない部分も多いです。ただ、インターネットにおけるクリエイターの収入手段は、広告モデルから始まり、noteなどが中心となって課金モデルが登場し、さらに多様化しています。AI学習への対価還元プログラムはその新しい選択肢の一つとして、非常に可能性があると考えています。
クリエイターの収益手段であると同時に、ご自身の作品がAIによって学習されることを望まない方もいらっしゃるので、オプトアウト(自身のコンテンツをAIの学習対象から外す意思表示)ができる仕組みをつくっていくことも重要です。対価の話だけでなく、そうした選択の自由も含めて、新しいエコシステムを構築していく必要があると考えています。
続けられるようにする仕組みという点では、収入面の話だけではありません。例えば、noteではクリエイター向けの投稿コンテストを実施しています。そこで受賞したクリエイターに出版社から声がかかったり、作品が映像化されたりすることや、人と人とのつながりが生まれることも非常に重要です。
これまでもこうした出会いをつくることに注力してきましたが、AIの時代においてはそのような人との出会いやつながりの重要性がさらに増してくると考えています。
AI技術の進歩によってクリエイターの創作環境は大きく変化し、新たな可能性とともに課題も生まれています。しかし、二人が語るように、この変化は必ずしも脅威ではなく、むしろクリエイターの選択肢を広げ、新しい表現方法を生み出すチャンスでもあります。
それでは、このような創作環境の変化を受けて、プラットフォームとしてのnoteはどのような役割を果たし、どのような戦略で臨むのでしょうか。後編では、AI時代におけるプラットフォームの役割と、noteが描く未来のビジョンについて詳しく聞いていきます。
▼ 後編はこちら
* * *
当社のIR情報は、TDnetでの開示に加え、IRサイトおよびIR noteにて発信しています。本記事に関するご意見・ご感想や当社IRに関するご質問がございましたら、下記IRお問い合わせ窓口よりお気軽にお問い合わせください。
