「先生!どこですか!!?」あの日、ICUで起きたこと
はじめまして。元看護師のりんご酢です🍎。
このnoteを見つけてくださり、ありがとうございます。
私はずっと思っていました。
医師は逃げない。
人の命を預かる仕事だから。
誰よりも冷静で、誰よりも強くて、
最後まで患者さんのそばにいる人。
それが医師だと信じていました。
だから、あの日の出来事は、今でも忘れられない。
今日はそんな時のことをお話しします。
モニターが鳴った。
突然モニターのアラーム。
胸骨圧迫。
薬剤準備。
気管挿管。
看護師も、
医師も、
臨床工学技士も、
誰一人立ち止まらない。
蘇生はドラマみたいに、一人のヒーローが患者さんを救う世界じゃない。
一人ひとりが自分の役割を全力で果たして、初めて一つの命に向き合えるチーム戦。
違和感
でも、その日は違いました。
指示を出していた医師が、突然いなくなったんです。
最初は、
「薬を取りに行ったのかな。」
「何か必要なものでもあるのかな。」
そう思いました。でも違いました。
本当に現場からいなくなっていました。
誰も立ち止まらなかった。
誰かを探している時間なんてない。
患者さんは待ってくれない。
その瞬間、隣にいた別の医師が自然と前へ出て
「次、アドレナリン。」
「胸骨圧迫交代。」
「○○準備。」
その声に合わせて、
看護師も、
臨床工学技士も、
全員がまた動き始めました。
私はその時、
「チーム医療ってこういうことだよな。」
そう思った。一人が止まっても、
患者さんの治療は止められるものではなくて、誰かが必ず穴を埋める。
戻ってきた医師
しばらくして、いなくなった医師が戻ってきました。
いや、正確には戻された形で。
別の医師に首根っこをつかまれるようにして。
その姿を見た時、正直怒りの感情がなかったかというと嘘になります。
「なんで逃げたの。」
「患者さんがいるのに。」そう思ったからです。
数年経って思うこと
あれから私はいろいろな現場で働きました。
訪問看護、精神科など
たくさんの患者さん。たくさんの医療者。
そこで気づいた事があります。
強そうに見える人ほど、実は誰にも弱音を吐けない。
「先生だから。」
「ベテランだから。」
「リーダーだから。」
そう言われる人ほど助けを求める場所がない。
あの日の医師はもちろん、
現場を離れたことが正しかったとは思わない。
患者さんを置いて離れることは、あってはいけないことだと思う。
でも今の私は、
「あの先生は最低だった。」とは言えない。
多分あの先生はあの日だけで心が折れたんじゃない。
あの日まで、
何日も、
何か月も、
あるいは何年も、
自分を追い込み続けた結果だったのかもしれないし、限界だったのかもしれないのです。
忘れられない二人
私が忘れられないのは、逃げた医師だけじゃありません。
何事もなかったように蘇生を引き継いだ医師。
そして、怒鳴り散らすのではなく、
首根っこをつかんででも現場へ戻した医師。
患者さんを助けることを最優先にした姿は、
今でも心に残っている。あれもまたチーム医療でした。
昔はドラマだと思っていた。
昔、『Dr.コトー診療所』を見た時、
極限状態に追い込まれる医師の姿を見て、
「ドラマだから。」
そう思っていました。でも今なら分かります。
あれは、医師が弱い話じゃない。
人の命を預かる仕事の重さを描いた物語だと。
「大丈夫。」と言う人ほど、大丈夫じゃない。
以前私は、
「『大丈夫です。』と言う患者さんほど、本当は大丈夫じゃない。」という記事を書いた。
あの時は患者さんのことを書きましたが、今なら思います。あの日の医師も、もしかしたら同じだったのかもしれないなと。
本当に苦しい人ほど、
「助けて」と言えない。
本当に限界の人ほど、
「大丈夫です」と言ってしまう。
患者さんも。
看護師も。
医師も。
あの日、私が見たもの
あの日ICUで見たのは、逃げた医師ではありませんでした。
誰かが限界を迎え、
誰かがその穴を埋め、
そしてまた誰かが支える。
そんな、人間の弱さと、チームの強さでした。
だから私は今、働き方は変わったとしても
「大丈夫?」
と声をかけられる人間でいたい。
だって、本当に大丈夫じゃない人ほど、
何も言わないことを、
私は看護師という仕事をする上で教えてもらったから。
ではまた★
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