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蒼いLove Letter|vol.2|背伸びした152cmの夏

あの高2の夏、私は友達三人でツアーに参加した。
強い日差しと、冷えすぎた船内の空気。
デッキから戻るたび、火照った肌がひやりとした。
窓の外の水面は、太陽を跳ね返してまぶしかった。

少しだけ、出会いも期待していた三人。
背伸びをしていたのかもしれない。

そこで出会ったのが、大学生グループの彼だった。
話が面白くて、よく笑わせてくれた。
汗ばむ季節なのに、彼の隣はなぜか落ち着いた。
年上の余裕が、涼しく見えたのかもしれない。

新しく買った水着は着てたけど、
恥ずかしくてパレオを外せなかった。
152cmの私は、少しだけ大人ぶって、
でもきっと、ちゃんと子どもだった。

旅の終わり、駅のホームで連絡先を交換した。

「秋の学園祭、来ない?」

夏の終わりに届いたその一言を、
私は何度も読み返した。

秋。
空は少し高くなっていた。
大学のキャンパスには焼きそばの匂いと、
少し冷たい風。

ちゃんと案内してくれて、
人混みではさりげなく前を歩く。
振り返るたびに笑う顔が、やっぱり頼もしかった。

彼は175cmだと言っていた。
並ぶと自然と見上げる高さ。
その角度ごと、私は少しだけ恋をしていた。

でも。

きれいな先輩を見つめる彼の目が、
ほんの少し、違って見えた。
長い髪を無造作にまとめ直すその人に、
彼の視線は一瞬だけ長かった。

その先輩が、冗談みたいに言った。

「彼女さん?」

彼は迷わず答えた。

「違いますよ」

秋の風が、急に冷たくなった気がした。

それでも私は思っていた。
まだ始まっていないだけ。
これからだと。

そのあと、彼と二人で会った。

落ち葉が道路の端に集まりはじめた頃。
彼の運転する車は、家の近くで静かに止まった。
エンジンを切ると、音がふっと消えて、二人きりになった気がした。

「今日はありがとう」

彼が何かを言いかけて、やめる。
その迷いが、少しだけ愛おしかった。

軽いキス。

唇が触れた瞬間、
世界がほんの一瞬、止まったみたいだった。

心臓が速すぎて、
ちゃんと息ができていたか分からない。

「またね」

ぽん、と頭に触れる手。
その手のひらが、思っていたより大きくて、あたたかい。

175cmの彼を見上げたまま、私はうなずいた。
たぶん、ちゃんと笑えていた。

遠ざかるテールランプの赤を見送りながら、
胸の奥がふわっと軽くなっていく。

あのとき私は、
これから始まると思っていた。

この恋に冬が来ることなんて、
ほんの少しも考えていなかった。

あとで知った。
彼は、あの先輩に振られていたと。

少しだけ、胸の奥が静かになった。

いま思えば、彼はまだガキだった。
でもあの夏の私には、ちゃんと大人に見えた。

それでも。

あの頃の私に会えるなら、
きっとこう言う。

つっぱしっちゃえ。
どうせ今は、止めたって無理なんだから。

夏の光も、
秋の風も、
あのキスの鼓動も。

全部、ちゃんと私の季節だった。

いまでも少しだけ、
背の高い人を見上げると胸がドキッとする。

でも今なら、ヒールを履いて160cmになるかもしれない。
並ぶ高さは、自分で選べる。

もし覗き込まれたら、
きっと笑って言う。

「覗き込むなって。」

それくらいの余裕は、もうある。

そしてきっと、
あの頃の私は、可愛かった。

はず! 💙



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