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スケッチブックの初恋【全9話】|vol.1|なんなんだ!? ~隣の席の男子に胸がドキッ

――本作品は、真由美(まゆ)と大輔が過ごした中学時代の、淡くて少し不器用な初恋を描いた全九話の記録です。


二学期のはじめ。
父の転勤の都合で、この町の中学校へ転校してきた。

山がこんなに近くにあるんだ。

校舎の横を流れる川は水が透き通り、
水面の反射がまぶしい。

姉は三年。私は一年。

姉の担任は、おばあさんの国語の先生。
私の担任は、白衣を着た理科のおじいさんだった。

それぞれの担任に連れられて校長室を出る。

姉が小さく「頑張って」とポーズをしてくれた。
その仕草に、私は少し勇気づけられた。

教室に入ると、
夏休み明けのざわざわした声が耳に飛び込んできた。

その中に、自分だけが
“よそもの”のように感じた。

心臓が少し強く脈を打つ。

急に教室が静かになり、
視線が一斉に集まった。

ちょっと怖かった。

「はじめまして。
練馬から転校してきた、真由美です。
よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします!」

クラス中の声が返ってきた。
でも、まだ心は落ち着かない。

「じゃあ、真由美さんは……
 そこの空いてる席に座って」

先生に言われて、
後ろの方の席へ歩きはじめた。

知らないクラスの中を歩く時間は、
ほんの数秒なのにやたら長い。

席に着こうとしたとき、
隣の席の男子がふわっと笑った。

「俺、大輔。よろしく。」

「うん……よろしくお願いします。」

私はしばらく、大輔と机をくっつけて授業を
受けることになった。

理由は――
教科書が届くまで一か月もかかるから。

先生が申し訳なさそうに言った。

「書類が遅れちゃってね。手配はしてるんだけど……
しばらくは大輔のを見せてもらって。」

え?
一日じゃなくて一か月!?

心の中で思わずツッコミを入れる。

でもそれ以上に、胸がドキンと高鳴った。

毎日男子と隣で授業を受ける。

それも机をくっつけて。
この近い距離で。

(まじ?)

すると大輔が、
私の動揺に気づいたかのように笑って言った。

「大丈夫だって。むしろ俺の好みだし。」

“好みって何!?”

と混乱したが、すぐに続けて

「教えるのが、好みだし」

と言い直したから、
私は勝手に顔を赤くしてしまった。

大輔が小さな声で話しかけてきた。

「緊張してる?」

「え?」

「俺も昔、別の小学校から来たことあるから……
 気持ちわかるよ。」

思いがけない言葉に、
胸の中がふっとゆるむ。

「……そうなんだ。なんか安心した。」

「うそぴょん!転校したことないよー」

「練馬ってさ、大阪?」

え?
衝撃の一言だった。

「練馬知らないの?東京だよ」

大輔は、にやっと笑う。

「知ってるにきまってるだろ 笑」

なんなんだ、この男の子は。

こんなタイプ、今までいなかった。

……ここじゃ普通なのかな。

でも大輔は、

授業中にノートを見せてくれたり、

小声でボソッとツッコミを入れて笑わせてくれたり、

私の筆箱に自分の鉛筆を入れようとボケたり、

私の手の甲をペンでツンツンしてきて、

思わず「キャッ」と声を上げて

みんなに見られたり――。

帰りのホームルームが終わったころ、
大輔がふいに聞いてきた。

「真由美ちゃんってさ、普段なんて呼ばれてるの?」

「うーん、まゆって呼ばれることが多かったよ」

「まゆかぁ……。
俺もまゆって呼ぶね」

夕焼けのせいか、
私の頬は少し熱くなっていた。

気がつけば、
最初の緊張はどこかへ消えていた。

というより――

昔からの気心の知れた親友が、
隣にいるような気がしていた。


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