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スケッチブックの初恋【全9話】|vol.5|リクエストアワー ~甘酸っぱいラジオの告白

――本作品は、真由美(まゆ)と大輔が過ごした中学時代の、淡くて少し不器用な初恋を描いた全九話の記録です。


街はイルミネーションで飾られていた。

中学校のエントランスにも、
用務員のおじさんがツリーを設置していた。

くーちゃんに聞くと、
昔このあたりは林業が盛んで、
もみの木が身近にあった名残りらしい。

子どもたちにも自然を身近に感じてもらおうと、
毎年この行事をしているんだそうだ。

都会っ子だった私は、
一瞬でロマンティックな気分になった。

――が。

次の瞬間、現実に引き戻された。

その場に座り込みながら叫ぶ。

「もおーやめてよー!くーちゃんでしょ!!」

またスカートをめくられた。

寒くなってタイツを履いていたから
大惨事にはならなかったけれど、
もし男子がいたらと思うと気が気じゃない。

「まゆ、反応しすぎ 笑」

「大輔がいると思ったんでしょう?」

「違うわよ!」

心の中では叫んでいた。

――なんでわかるのよ。

日が暮れるのも早くなり、
部活の終了時間も少し早くなった。

この季節になると、
なんだかキュンキュンしたくなる。

そういえば、
この町ではあまり付き合っている人を見かけない。

東京では、中学生でも
もっとカップルが多かったのに。

お姉ちゃんも、
引っ越しで彼氏と別れちゃったしね。


寝る前、いつものようにFMをつける。

電気を消して、ヘッドホンをつけて、
みんなのキュンキュン話を聞く時間。

BGMに「So Much in Love」が流れて、
胸のドキドキに拍車がかかる。

そして。

今日ラストのお葉書紹介。

パーソナリティーの小林さんが言った。

「中学生のDくんからです」

「2学期に東京から引っ越してきたまゆへ」

えっ。

私は暗闇の中で飛び起きて、
ベッドの上で頭をぶつけた。

「東京の女子って、こんな田舎に来たら
 もっとツンツンしてるのかと思ってたんだ。

 でも、まゆは違った。

 少し寂しそうに見えたんだよ。

 最初、教科書がまだ届かなくて、
 二週間も机をくっつけていたよね。

 ちょっと意地悪して
 困らせてごめん。

 まゆの寂しそうな顔を
 少しでも笑顔にしたくて、
 たくさん変なことをしちゃった。

 教科書が届くまで一ヶ月の予定だったのに
 二週間で届いて、よかったーって思った。

 これで離れられるって言ったけど、
 本当はそうじゃなかったのかもしれない。

 まゆがこの番組をよく聞くって言ってたから
 はがきを書いてみました。

 パーソナリティーの小林さん。

 このはがきは読まれなくてもいいので
 まゆが好きな
 sumikaの『honto』をリクエストします。

 ――まゆの隣のDより」

「あー、甘酸っぱい青春の香りがするね」

小林さんが笑う。

「おじさん、このはがき見て
 すぐ読もうって思っちゃったよ 笑」

少し間があって、

「まゆ、大事にしてやれよ」

そして小さく言った。

「……だいす……じゃなかった
 まゆの隣のDくん」

「それじゃ、
 sumikaで『honto』」

音楽が流れた。

大輔だよね、これ。

私だよね、まゆって。

そのとき。

姉が電気をつけて、私のベッドへ駆け上がってきた。

「聞いてた?」

「うん」

「あんただよね?」

「……」

「大輔だよね?」

私は答えられなかった。

涙が、ナイアガラみたいに流れていたから。

なぜか、お姉ちゃんも泣いていた。

その夜、私は一睡もできなかった。

明日、大輔に会うのが怖くて仕方なかった。

それと。

寝不足で不細工になっていませんように。

……それだけは
本気で祈っていた。


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