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最後の挑戦として選んだ創作大賞で、作家デビューへ。夢は「ゴシックホラーの間口を広げること」

小学生の頃から書き続け、コロナ禍に本格的な創作活動を再開した祇光ぎこう瞭咲あきささん。祇光さんは、創作大賞2025に物語投稿サイト TALESから「Memento Furor -聖バシリオ精神病棟慰問日誌-」を投稿し、角川ホラー文庫賞を受賞しました。本作はその後改題・改稿を経て、角川ホラー文庫より『ある修道士の自罪』として刊行されています。

今回は、担当編集者・高橋幸大さんにも同席いただき、受賞から書籍化までの背景や改稿の過程、そして創作を志すクリエイターへのメッセージをお聞きしました。


ネット掲示板の怖い話に憧れて、ホラー小説を書くように

――祇光さんは、いつ頃から執筆活動をされていましたか?

祇光瞭咲さん(以下、祇光) 小説を書きはじめたのは小学生の頃です。110万字くらいのSF群像劇のような長編をずっと書いていました。

ただ学生時代に書かない時期もあって、久しぶりに再開したのがいまから6年ほど前、ちょうどコロナ禍のあたりです。もともと書いていた長編もようやく完結できたので、「ほかの作品もどんどん書いていこう」と思って、Webでの活動をはじめました。

――その活動のひとつとして、noteでも作品を投稿してくださっていたと思いますが、そのなかで創作大賞を知っていただいたのでしょうか?

祇光 そうですね。ただ、当時のnoteはエッセイやビジネス方面に特化しているプラットフォームというイメージがあったので、小説も応募可能なコンテストを開催すると聞いたときは意外で……。最初に応募したのは創作大賞2024で、「たのしそうだから」という理由で短編を出したのを覚えています。

2024年はまだTALESがなく、長編を応募しようとするとちょっと書くのがむずかしくて。でも創作大賞2025では、あらたにTALESができて長編小説が応募しやすくなったので、うれしく思いながら参加しました。

――TALESという新しいプラットフォームをつかうことへのハードルはありませんでしたか?

祇光 それはなかったです。投稿されている作品を見ると、先行する小説投稿サイトさんとは少し違うと感じる点もありました。個人的には文芸よりの作品が多い印象を受けました。

そして新しいプラットフォームなので、作品が埋もれにくい。そのあたりに居心地のよさを感じたので、あまりハードルには思いませんでした。

――創作大賞で受賞された作品はゴシックホラーだと思いますが、もともと書かれていたのはSF作品ですよね。ホラーを書こうと思ったきっかけは?

祇光 ホラー小説自体にはあまり馴染みがなかったんですが、ネット掲示板の「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」というスレッドを読むのがすごく好きで……。その憧れもあって、「短編だったら、私も書けるかもしれない」と思ったことがきっかけでした。

創作仲間の声をヒントに、第二部を書き足す

――受賞作の舞台は1900年頃のヨーロッパの精神病棟ですよね。この設定はどのように生まれたのでしょうか?

祇光 もともとアガサ・クリスティばかり読んで育ってきたので、1920〜50年代頃のヨーロッパには個人的にすごく親しみがあったんです。だから自然と、その辺りの時代が書きやすいというのがまずひとつ。

それにホラーを書くのが初めてだったので、まずは短編から挑戦しようと思っていて。「病院ならば、1つのエピソードに1人の患者さん」という形式で、連作短編として成立させやすいと思い、精神病棟を選びました。

――舞台は100年以上前のヨーロッパですが、現代の読者に伝えるために意識したことはありますか?

祇光 心の病やトラウマを抱えた人物たちの話なので、それは時代や国を問わず普遍的なことかなと。なので特別な工夫はせず、描きたい世界をきちんと貫いて読者に届けることに専念しましたね。

――受賞作は最初からこの形だったのでしょうか?

祇光 最初は一部のみの短編集として書いていて、一度別のコンテストに応募したんですが落選したんです。でも読んでくれた創作仲間から「真相が気になる」という声をたくさんもらって。それなら明かしたほうがいいと思い、第二部を書き足してから創作大賞に応募することにしました。

――応募前の改稿についてはいかがでしたか?

祇光 第一部のEpisode.3にリリィという病棟に入院している女の子が3つの噂話をしますが、第二部がなかったころはそれぞれがなんの関係もない話だったんです。でも第二部を加えようと考えはじめたら、それぞれの噂話のピースがぴたりとはまって、うまく絡み合っていきました。

すでに書いた作品を直すのは先入観があるので、すごく大変です。でもなにか1つ修正の方向を決めると、書いていたことが意外な伏線になるときがある。最初からセッティングされていたように辻褄が合うと気持ちいいので、作業は大変でもたのしかったですね。

――辻褄が合っていくというお話がありましたが、祇光さんはプロットをしっかりつくられるタイプでしょうか?

祇光 プロットは最初から最後までしっかり立てるタイプです。ただ、登場人物のひととなりは、書いてみるまでわからないんです。たとえば履歴書をもらっても、その方がどういうひとかってわからないじゃないですか。

実際に会話してみて初めて性格がつかめてくる感覚に近くて、書きながらキャラクターをつかんでいく部分があります。あまり多くはないですが、そこからプロットを変えることもありますね。

年代特定からはじめた改稿は、書き直しというより補強だった

――受賞のお知らせを受け取ったときはどんな気持ちでしたか?

祇光 犬と一緒に寝そべっていたところに連絡が来て、「わぁ!」と立ち上がって。見間違いかなと思ったので、とりあえずメールを音読しました(笑)。ホラー書きとして角川ホラー文庫さんはずっと憧れのレーベルだったので、余計に信じられない気持ちになりましたね。

――受賞後に角川ホラー文庫さんの選評を読まれたかと思いますが、いかがでしたか?

祇光 意外で、驚きました。というのも、主人公が日誌をめくるとともに物語の真相が明らかになっていく構成を褒めていただいたんですが、自分ではあまり強く意識していなかったところだったんです。

担当編集の高橋幸大さん(以下、高橋) エピソードを読むたびにさまざまな人物の物語が重なり、病棟の実像がどんどん見えていく構造がとてもおもしろかったです。最後の第二部ですべてがつながっていく感じがあって、ほかの作品より頭1つ抜けている印象を持ちました。

角川ホラー文庫さんの選評
実際の角川ホラー文庫さんの選評

――受賞後の改稿作業はいかがでしたか?

祇光 改稿にあたって最初にしたことは年代特定でした。受賞した段階では、作中の年代を特定していなかったんです。そういった部分も含めて、大幅に書き直すと思っていましたが、どちらかというと改稿より補強・強化をしていくような感覚で。「本当にこれでいいのか」と自分に問いかけながらも、たのしんで進められました。

高橋 先ほどプロットを立ててからというお話もありましたが、構成がしっかりしていたんです。それをひっくり返すよりも、中身をもっとおもしろくしていくほうがいいと思いました。

――高橋さんのフィードバックを受けて、祇光さんはどう感じましたか?

祇光 高橋さんのフィードバックから「謎めいた部分をもう少し膨らませて、読者にたのしんでもらう工夫をもっとしたほうがいい」ということを学び、読者をたのしませる視点が、自分にはまだ足りなかったなと気づきました。

高橋 怖いエピソードを並べていくより、「なぜこんなことが起きるんだろう」という謎の部分を強めていく感じですね。わからないことって、怖いじゃないですか。そこを深めていくことで、この作品の魅力がグッと増すと思いました。

たとえば、リリィをもう少し謎めいた存在にすることで、怖さがより強まっていったと思います。また、ほかの登場人物の造形をより具体的に設定することで、読者がキャラクターをイメージしやすくなったのではないでしょうか。

祇光 編集者さんならではの視点だと思って、とても勉強になりました。褒めていただいた点を伸ばしながら、フィードバックを自分の技としてしっかり吸収していきたいと、強く思いました。

長期的な目標として「ゴシックホラーの間口を広げたい」

――表紙もとても印象的ですが、こだわったポイントはありますか?

祇光 高橋さんに、全部よくしてもらって。私からは表紙に人物の絵を入れたいという要望をお伝えしたのですが、それも叶えていただきました。

高橋 祇光さんのなかに表紙のイメージがしっかりとあったんです。なので、それをより膨らませる方向でイラストやデザインを考えていきましたね。

『ある修道士の自罪』書影
ある修道士の自罪』(著:祇光瞭咲/角川ホラー文庫刊)

――書籍化を経て、なにか変化はありましたか?

祇光 書店に本が並んだときに「やったー」という気持ちよりも、「これ全部ライバルなんだ」というプレッシャーのほうが大きくなりました。

ライバルなのは、ほかの作家さんだけではありません。読者の方が同じ1,000円でなにを買うのか。おいしいごはんではなく私の本を選んでもらわないといけないんだ、と実感しました。それと同時にこの1冊で終わらせないように、小説家を生業として続けていきたいとも強く思いましたね。

――改めて創作大賞を振り返って、印象的だったことはありますか?

祇光 印象的というより、お伝えしたいことがあって。この作品は一度別のコンテストで落選していますが、私は絶対にこの作品はおもしろいし、ひとを惹きつけるに違いないと、自信を持っていたんです。もう最後の挑戦のつもりで創作大賞を選びました。

創作大賞は複数のレーベルさん・出版社さんが選考に参加されているので、1回の応募でいろんな方に読んでいただける可能性があるんですよね。だから一度落選した作品でも、日の目を見られるかもしれないと思って、創作大賞に応募しました。そう信じて、よかったなと思います。

――今後はどんな作品を書いていきたいですか?

祇光 ゴシックホラーは、書店に行っても翻訳ものが多くて文章が少しかたく感じられることもあって、もともと好きなひと以外にはあまり目に触れにくいジャンルだなと感じます。

なので、この作品、あるいはこれから書いていく作品を通じて、ゴシックホラーの間口を広げたい。「こういうジャンルもあるんだ、おもしろいじゃん」と多くのひとに知ってもらえるきっかけになりたいというのが、長期的な目標です。

高橋 私としても、祇光さんに角川ホラー文庫を代表する作家になってもらいたいのはもちろん、何十年後も語り継がれるような代表作をつくっていただきたいと思います。

――最後に創作活動に取り組むクリエイターへ、メッセージをお願いします。

高橋 さまざまな投稿プラットフォームがあるなかで、noteとTALESがこうして創作大賞をつくってくださり、編集者としても新しい作品に出会える、すばらしい取り組みだと思っています。これからもたくさんの作品と出会えることを願っています。

祇光 ぜひ書店に足を運んでほしいと思います。自分の作品が最終的に商品になったとき、どこに並ぶか。書店に立ったときにどういう本だったら目が行くか。そこから得られる情報はたくさんあると思います。

もちろん机にかじりついて書くのも大事でたのしいんですけど、定期的に本屋さんへ行って生の情報を吸収しておくのもいいと思います。作家にとってのイメージトレーニングみたいなものだと思っていて、私もnoteにまとめたことがあるくらい大切にしていることです。

そして作品には、自分らしさを詰め込めるだけ詰め込んでほしい。受賞した方々にお会いすると、「自分のやりたいことを詰め込めるだけ詰め込んだ」という点で同じだなと感じたので、ぜひみなさんもがんばってほしいです。

――ありがとうございました。

※敬称略

【受賞者プロフィール】

祇光 瞭咲(ぎこう あきさ)

祇光 瞭咲さんプロフィール画像

『Memento Furor -聖バシリオ精神病棟慰問日誌-』でnote×TALES主催 創作大賞2025角川ホラー文庫賞を受賞。同作を改題・改稿した本作で単著デビュー。

note:https://note.com/par_rik 
TALES:https://tales.note.com/par_rik
X:https://x.com/gikou_akisa

創作大賞について

あらゆるジャンルの作品を対象にした、日本最大級の創作コンテストです。2026年は、34のメディアが12部門の選考に参加。大賞受賞作品には担当者がつき、雑誌・メディアへの掲載や、書籍化、連載化、映像化などを目指します。

創作大賞2026のスケジュール

創作大賞2026のスケジュール
  • 応募受付期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月8日(水) 23:59

  • 読者応援期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月31日(金)23:59

  • 中間発表:2026年9月上旬

  • 最終結果発表 & 授賞式:2026年11月上旬