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書けずに悩んでいたひとが、創作大賞をきっかけに2冊のビジネス書を出すまで

「自分にしか書けないことなんて、あるんだろうか」——そう考えた瞬間、書くことのハードルは一気にあがります。

創作大賞2024のビジネス部門で入選した萩原雅裕さんも、投稿前は「いまさら自分がこんな話を書いても」と悩んでいました。ところが、萩原さん自身の当たり前を書いた1つの記事から2冊の書籍化が決定。どちらも発売1週間以内に重版が決まり話題作となっています。

今回は萩原さんに、創作大賞に挑戦したいひと、書くことに迷いがあるひと、本を出したいひとにとって背中を押してもらえるお話をうかがいました。


写真左:東洋経済新報社『たたき台の教科書 頭の良さに頼らず一流の仕事をする技術』
写真右:ダイヤモンド社『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか? 仕事が3倍速くなる計画・実行・中断の技術』

受賞したのは、応募するために書いた記事ではなかった

——まずは、創作大賞の存在を知ったきっかけを教えてください。

萩原さん(以下、萩原) 私はもともと「40歳からのキャリアデザイン講座」という有料マガジンをnoteで発信していました。あるときnoteで収益化しているクリエイターの交流会があって、そこではじめて創作大賞の存在を知ったんです。

帰り際に、noteの方から「今年も創作大賞をやるので、よかったらぜひ」とお声がけいただき、「創作大賞って何ですか?」と(笑)。正直、その時点では自分が応募するものという感覚は、なかったですね。

——「応募してみよう」と思ったのは、どんなタイミングだったんでしょうか?

萩原 2024年2月に創作大賞を知ったものの、その後はすっかり忘れていました。入選作「コンサルと外資で学んだ、「アクション動詞」でタスクを書くと生産性が高まる話」(以下、「アクション動詞」)を書いたのは6月ですが、このときも創作大賞のことはまったく意識していませんでした。

7月の応募締切が近づくにつれて、創作大賞の告知を目にすることが増えていき、そこでようやく「そういえば、そんなのあるって聞いたな」と思い出したのです。興味本位で応募要件を見たら、「記事にハッシュタグを付けるだけらしいぞ」「過去に書いた記事でもいいんだ」と知って、拍子抜けするほどの手軽さに「じゃあやってみよう」と。

書けないときは、たくさん書けることを、ちょっと書く

——入選記事は、どういうきっかけで書いたのですか?

萩原 私の仕事は、経営アドバイザーです。ベンチャーや中小企業の経営支援をするなかで、ビジネスに役立つtipsを書きたいと思うようになりました。その中で、「ベーシック」かつ「みんなやればいいのに」と思うものを取り上げようと考えたんです。

じつは当時、noteになにを書けばいいのかわからずに悩んでいました。それで、個人の発信を支援するパーソナル編集者のみずのさんに相談していました。そのなかで、「たくさん書けることを、ちょっと書くのがいいですよ」と教えてもらったんです。

——書くうえで、最初はどんな壁があったのですか?

萩原 noteを書くなら、しっかり書かなくちゃいけないと、ハードルが高くなっていたんです。体系的に書かなきゃいけないとか、網羅感を出さなきゃいけないという意識がめちゃくちゃ強くて。ノウハウの完全版を追ってしまっていたんですね。

それをみずのさんに話したら、「心のなかに鬼編集長がいますね」と(笑)。そして「みんなが体系的なものを求めているわけじゃないですよ」という言葉をもらいました。それからは「冗長かな?」「ボリューム出すぎかな?」とバサッと削って、文字数もグッと減らしました。

——「アクション動詞」の読者が、「部下や若手に読ませたい」と思ってシェアが広がったと思うのですが、読者の反応はどういったものでしたか?

萩原 「俺は若手にこれをずっと言っているんだよ」や「言いたいことを後押ししてくれた」などの共感が6割ぐらい。そのほかは「なるほど」や「確かに」といった、はじめて聞いたような反応でしたね。

それまでの私のnoteで、シェアやスキが多かったのは、40歳からのキャリアをテーマにした話だったんですね。ビジネスに役立つ記事はうまく書けず、スキの数もいまひとつ。「アクション動詞」は、「すごく初速いいぞ!」と思うほど、反応が違いましたね。

——創作大賞を受賞をしたときの、率直なご感想をお聞かせください。

萩原 中間選考に通った時点で、めちゃくちゃうれしかったです!じつは2つの記事が選ばれていたので、これだけでもう満足という気持ちでした。作文や読書感想文で表彰されたことすら、ありませんでしたからね。

そして、受賞のご連絡をいただいたときは、食卓で大きな声がでました。ふだんはリアクションが少ない人間なので、「何か悪いことでもあったの?」と家族に心配されました(笑)

1つの記事から、どうやって2冊の本が生まれたか

——創作大賞では前例がないのですが、1つの記事から2冊の本が誕生しました。その経緯に興味があります。

萩原 2024年10月末の授賞式を待たずに、書籍化の話が進んでいました。noteの方から「東洋経済新報社さんからのご推薦です」と受賞のご連絡をいただき、10月初旬に担当編集者の齋藤さんとお会いしました。

齋藤さんから「書籍化に興味はありますか?」とお話があって、「もちろんです!」と即答しましたね。「では、どんな切り口にするか、企画を詰めていきましょう」ということで、その場で企画の話を少しだけしました。10月中旬には、私から切り口をいくつか提案しました。そこから、やり取りを重ねていったんです。

もう1社オファーをくださったのが、ダイヤモンド社さんです。授賞式ではじめて編集者の榛村さんと名刺交換をして、後日、企画のお話を進めていきました。

——出版大手2社と、企画を進めていったときのお気持ちは?

萩原 人生で一度は本を出したいと思っていたので、うれしかったです。でも、声がかかったからといって、出版が確定したわけではないんですよね。企画が通るとは限らないぞ、がんばるしかない、という気持ちで取り組みました。

両社の編集者さんと企画書を練り上げ、ダメ出しを何度も乗り越え、編集会議に通るまでがもう大変で(笑)。ダイヤモンド社さんの企画は2024年12月に決まり、東洋経済新報社さんの企画は2025年の2月に決まりました。

2冊とも仕事の停滞を解決する仕事の進め方の本ですが、切り口は違います。東洋経済新報社『たたき台の教科書 頭の良さに頼らず一流の仕事をする技術』は、アウトプットを組み立てる技術。ダイヤモンド社『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか? 仕事が3倍速くなる計画・実行・中断の技術』は、ムダをなくし仕事を速く進めるプロセスの技術についての本です。

——編集者さんとは、どうやって企画を練り上げていったのですか?

萩原 『たたき台の教科書』は、齋藤さんの問いからスタートしたんです。「手が止まっちゃうひとは、どうしたらいいんですか?」と。

「こうすればいいのでは?」と延々とやり取りを重ねるうちに、「議論を前進させる良いたたき台をつくればいいのでは?」となりました。たたき台をテーマに1冊まるっと書かれた書籍は、意外にないと盛り上がったんです。たたき台のベースであるタスク管理や段取りは、私が当たり前にやってきたことで、まさか本のネタになるとは思いませんでした。

『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか?』は、「アクション動詞でタスクを書く」を再定義するとどうなるのか?という問いからはじまり、こちらも何度もやり取りを重ねて、ダンドリ思考法の企画に決まりました。両社とも、企画で目次と書く内容を決めて、社内で通していただく流れでした。

——noteを書くことと、本を書くことは、どう違いましたか?

萩原 両者はまったく違いました。本の執筆で向き合う白紙のWordって、圧が強いんですよ。時間をかければかけるほど書けなくなる直感があって、2冊ともいったんは2~3ヶ月で書くと決めてやり切りました。

違いといえば、2人の編集者さんの進行や視点もそう。深い学びがありました。東洋経済新報社の齋藤さんは、繊細な視点で「なるほどな」と思わせる核心を静かに突いてきます。校閲や校正のクオリティも高い。「この日本語の使い方には違和感があります」とフィードバックをいただき、最初は「ここはそういう意図じゃないんです」と思っても、何度か読み返すと、「いや待てよ」「言われてみるとたしかにそうかも」となり、最終的に私が間違っていたことに気づくことが多々ありました(笑)

ダイヤモンド社の榛村さんは、構成を大胆に変え、読者の読みやすさにこだわる進め方でした。私ひとりでは、「計画の立て方」をカレーの調理に置き換えて、わかりやすく伝える技は出なかったですね(笑)

本を出すと、聞く耳を持ってもらいやすくなる

——2026年4月発売の『たたき台の教科書』は、1週間たらずで重版決定。1月に発売された『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか?』は、3月時点で3回も重版、2.1万部を突破しています。出版後に、どんな変化がありましたか?

萩原 聞く耳を持たれる度合いが高くなりました。会社をやめて独立した人間は、「おまえ、だれやねん」という見られ方をします。話を聞く姿勢になってもらうまでのハードルが高いんですよ。でも、本が信頼の入口となって、話を聞いてもらいやすくなりました。

——次に書きたいテーマはありますか?

萩原 名著『イシューからはじめよ』(安宅和人 著)のような、問いの立て方や課題設定の仕方について書いてみたいですね。『たたき台の教科書』は、仕事を振られる側にいる若手に向けて書いた本なんですよね。結果として、「思った通りのたたき台が上がってこない」と悩む部下を育成する立場の方にも好評です。でも、リーダー層になると、自分で問いや課題を設定しなきゃいけません。そもそも「なにを解くべきか」というテーマは、すごく大事で難しい話なので、どちらの書籍にも書き切れませんでした。

——本を書くことで、新たに書きたいテーマが見えたのですね?

萩原 そうですね。読者の方から「チームでこう使うと良さそう」といったお話をいただき、研修やワークショップ仕立てにして、チームに導入することを、いまやっています。

本になった瞬間に、自分がいままでリーチできなかったひとたちにも届くようになりました。そこで返ってくるフィードバックによって、「そういう捉え方があるのか」と気づかされることも多いんですよ。本自体が読者との対話のたたき台になり、そこから次のアイデアが生まれている感覚があります。

——最後に、創作大賞に応募したい方、本を出したい方に、メッセージをお願いします。

萩原 「自分にとっての当たり前は、他人にとっては当たり前じゃない」というのは、何度でも強調して伝えたいですね。「いまさら、こんな話を私が書いてもなぁ」と思うなら、それは違います。だれかにとっては、新しい視点だったりするんです。

私自身、タスク管理の話で本を書くとは、夢にも思っていませんでした。自分では当たり前にやってきたことだったので、そこにオリジナルのノウハウや強いこだわりがあるとは思っていなかったんです。noteを読んだ方から「目からうろこでした」といわれて、本当に驚きました。

たとえ他者と同じテーマでも、あなたの視点で書いたことで、はじめて届くことがあります。この書き方、この切り口、このタイミングだから響くことが、確かにある。だから、「いまさらこんな話を書いてても」と思わず、一度世に出してみることが大事なんだと思います。

ビジネス系のひとからすると、創作やクリエイターという言葉は、縁遠く感じるかもしれません。でも、noteは「あらゆるひとがクリエイター」とすてきに捉えてくれているので、乗っかってみたらいいんじゃないかなと思います!

——ありがとうございました!

*敬称略

【受賞者プロフィール】

萩原雅裕(はぎわら まさひろ)

Prodotto合同会社代表/ベンチャー・中小企業の社長に伴走する経営アドバイザー

NTTデータ、ベイン・アンド・カンパニー、日本マイクロソフト、マイクロソフト米国本社を経て、創業メンバーとしてワークスモバイルジャパンに参画。プロダクト責任者、マーケティング責任者、カスタマーサクセス責任者、経営戦略担当役員などを歴任。法人向けコミュニケーションツール「LINE WORKS」の立ち上げに携わり、4年連続市場シェアNo.1、導入社数20万社超、売上78億円(2021年当時)までの成長に貢献。25年の会社員生活に区切りをつけ独立。

ダンドリ磨いて30年。1974年群馬生まれ、横浜・横須賀・鎌倉育ち。慶應義塾大学卒業、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)修了。

2万部を突破した前作『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか?』(ダイヤモンド社)に続き、異なる出版社から連続での書籍化が実現。
note:https://note.com/masa_hagiwara X:https://x.com/Masa_Hagiwara

創作大賞2026について

あらゆるジャンルの作品を対象にした、日本最大級の創作コンテストです。各部門には、34のメディアが選考に参加。大賞受賞作品には担当者がつき、雑誌・メディアへの掲載や、書籍化、連載化、映像化などを目指します。2026年7月8日(水)まで、noteもしくはTALESでエントリーが可能です。くわしくは、下記のスケジュールや特設サイトをご覧ください。

創作大賞のスケジュール

  • 応募受付期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月8日(水) 23:59

  • 読者応援期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月31日(金)23:59

  • 中間発表:2026年9月上旬

  • 最終結果発表 & 授賞式:2026年11月上旬

text by 曽根明子