正論が現場で消えていく理由
以前、私は、ある現場で成果を出していたやり方を、そのまま別の現場へ持ち込もうとしたことがある。
実際に成果を上げていた方法だった。
だから、同じようにやれば、同じような成果が出ると思っていた。
しかし、思うようには進まなかった。
大きく失敗したわけではない。
それでも、想像以上に強い反発があった。
当時の私は、「変化を嫌っているからだ」と考えていた。
しかし、時間が経って振り返ると、そうではなかった。
人は、正しいことを嫌うのではない。
自分たちが積み上げてきたものを否定されたと感じた瞬間、防御に入るのだ。
成果が出ている方法だからといって、そのまま持ち込めば受け入れられるわけではない。
現場には、その現場なりの歴史がある。
試行錯誤がある。
失敗も成功もある。
外から来た人間には見えていない努力もたくさんある。
それらを飛び越えて、「これが正しいから今日から変えましょう」と言われれば、誰だって身構える。
だから私は、考え方を変えた。
まずは話を聞く。
なぜ今のやり方になったのかを知る。
うまくいっていることは、そのまま残す。
改善が必要なところだけを、一緒に考える。
改革とは、今あるものをすべて壊して、新しいものに置き換えることではない。
残すべきものを見極めることも、改革の大切な仕事だ。
完成形は最初から求めない。
まずは現場が受け入れられるところまで進める。
一歩進んだら、また次の一歩。
そうやって少しずつ積み重ねていく方が、結果として遠くまでたどり着けることも少なくない。
正論は、押しつけるものではない。
ともにたどり着いていくものだ。
正しいことを伝えるだけなら、それほど難しくない。
難しいのは、相手が「やってみよう」と思える形に変えることだ。
管理職の仕事は、正論を語ることだけではない。
正論を、一緒に実現できる形へ変えていくこと。
それもまた、管理職の大切な仕事なのだと思う。
