【発表報告】副看護師長の学習と自己認識に関する実態調査 -MCチャート活用と成果実感の関連- 第29回日本看護管理学会学術集会(2025)講師:平林慶史
この記事は第29回日本看護管理学会学術集会(2025年8月22日開催)で行われた、弊社代表の平林が発表した「副看護師長の学習と自己認識に関する実態調査 -MCチャート活用と成果実感の関連-」を、再構成したものです。
目的意識
組織が次世代の管理者を育成していく上で、サブマネジャー(副師長)は鍵となる存在です。彼らは「現場の実践」と「管理」を橋渡しする立場であり、「スタッフ」から「管理者」へと進化するための足場となる役割を担っています。
しかし、ファーストレベル研修では、多くの副師長が「管理」という仕事に対する手応えのなさや自信のなさを感じている、という声を聞きます。
そこで、副師長の管理者としての学習や自己認識の現状を調査する必要があると考えました。これまで、組織横断的かつ経験年数横断的な副師長に関する調査は少ないのが現状です。
調査の概要について
今回の調査は2024年11月から12月にかけて実施しました。有志による「MC協働学習会」に参加している、大学病院、赤十字病院、厚生連病院の計8施設にご協力いただきました。これらの施設は、看護部が普段から他施設と定期的な学習会に参加するなど、看護管理者の組織学習に取り組んでいるというバイアスがかかっています。
調査対象者は、各施設で師長を補佐し、部署・組織のマネジメントに関与する看護職である副師長、係長、主任等の皆さまです。任意回答・無記名のWEBアンケート形式で、対象施設の看護部を通じて、調査へのご協力をお願いしました。
【倫理的な配慮について】
無記名アンケートではあるものの、複数の回答を組み合わせることで個人が特定される可能性がないとは言えません。そのため、ご協力いただいた各施設にも、個々の生データは開示せず、統計的に処理した集計結果のみを共有するという形をとりました。
調査結果の概要
最終的に、全体で299件の有効回答をいただくことができました。対象者数は全体で400〜500名程度と推定され、回収率は60〜75%と考えられます。所属施設と副師長としての経験年数の分布を見ると、概ね適切な分散が得られており、母集団に即したサンプリングができたと評価できます。(結果概要(1))

ファーストレベル受講歴については、40.5%が未受講でした。一方で、受講済みの方の中では、昇任後2〜3年で受講した人が最も多いボリュームゾーンを占めていました。
副師長業務に集中できる時間については、「ほとんどない」という回答が、半数以上の55.9%にのぼりました。次いで、週1〜2時間と回答した人が30.1%でした。この結果から、日常的に副師長業務に充てる時間は少なく、スタッフ業務とのバランスもまちまちであることがわかります。(結果概要(2))

仕事での成果実感と仕事の楽しさについては、いずれも概ね正規分布となりました。これは、非常に成果を出せていて楽しいと感じている人と、そうでない人が半々に分かれていることを示しています。
もう少し詳しく見ると、成果実感はやや否定的に振れており、楽しさはやや肯定的に振れているという傾向が見られました。(結果概要(3))

本研究の問いと仮説
本研究の問い(Clinical Question)は「副師長が『管理の仕事に手応えを感じる』には、どのような介入や支援が有効なのか」です。
この問いに対し、『管理の仕事で「成果を出せている」と感じるためには、管理は師長の仕事であるという認識ではなく、副師長も管理チームの一員として、課題や計画を共有し、一定の自律性を持って管理業務に取り組める環境が必要である』という仮説を立てました。
分析の構造
この仮説を検証するために、以下の質問項目について分析を行いました。
成果実感: 副師長として仕事で成果を出せていますか?
チーム感覚: 看護部や師長、同じ部署の副師長は、一つの部署を共にマネジメントするチームになれていると感じますか?
課題や計画の共有: 師長と部署運営について対話する機会はありますか?
MCチャートの理解と活用度合い: MCチャートというツールへの理解と活用の度合いについて尋ねました。
自律性: 副師長としてどの程度、自律性を持って活動できていますか?
これらの項目について、クロス集計とカイ二乗検定、相関係数、重回帰分析を用いて相互の関連を分析しました。
MCチャートについて
MCチャートは、部署単位の管理課題を分析・計画し共有するためのツールです。これは「看護管理のカルテシステム」のようなもので、外部から与えられた目標や問題(外発)と、自ら見出した目標や問題(自発)の4つのエリアで構成されています。

解析結果
解析の結果、以下の関係性が明らかになりました。
MCチャートの理解と活用は「管理チーム感覚」と関連がある。相関係数は0.22で、1%水準で有意差が見られました。
管理チーム感覚は「師長との対話」と関連がある。相関係数は0.41で、1%水準で有意差があります。
師長との対話は「自律性」を強く支持する。相関係数は0.43で、1%水準で有意差がありました。
「自律性」と「管理者としての成果実感」には非常に強い関連がある。相関係数は0.50で、1%水準で有意差がありました。
MCチャートの活用は、直接的な成果実感への強い関連は見られませんでしたが、「管理チームへの参加感」を高め、ひいては「師長への昇任意欲」にもつながることがわかりました。
考察と結論
この結果から、副師長の成果実感に直接的に最も大きな影響を与えているのは、「副師長として自律性を持って活動できていること」です。そして、その自律性を大きく支持するのは「師長との対話」であることが分かりました。
MCチャートの活用は、副師長が管理者として成果を出し成長するために有用です。しかし、ただツールを導入するだけで大きな効果が出るものではありません。大切なのは、師長との対話が持たれ、師長や組織が副師長の自律的活動を支援することです。
結論として、MCチャートの活用をきっかけとして、「師長との対話」と「活動の支援」こそが副師長として自律性を育て、「管理チームへの参加感」を高め、成果実感にもつながるといえます。更に、管理活動のイメージが持てるようになることで、師長への昇任意欲も高まるといえるでしょう。
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