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商船三井はなぜ下がり続けるのか【N+マーケット】

商船三井の株価が弱い。

世界の貿易はこれからも続く。

日本は資源を輸入し、製品を輸出し、エネルギーを海外から運ばなければならない。

その意味で、海運は絶対に必要な産業です。

では、なぜ必要な産業である商船三井の株価は下がるのか。

ここが非常に分かりにくいところです。

結論から言えば、商船三井が売られている理由は、会社が不要になるからではありません。

市場が見ているのは、

「必要かどうか」

ではなく、

「今後、利益が増えるのか」

です。

そして今の商船三井は、売上は増える見通しでも、利益は減る見通しになっています。

つまり市場が嫌っているのは、

増収なのに減益

という構図です。

これは株式市場ではかなり嫌われます。

なぜなら、売上が増えているのに利益が減るということは、簡単に言えば、

たくさん働いているのに、手元に残るお金が減っている

という状態だからです。

商船三井の場合、世界の貿易が増えても、必ずしも利益が増えるわけではありません。

なぜなら海運会社の収益は、

貿易量

だけで決まるのではないからです。

重要なのは、

運賃

船の需給

燃料費

為替

金利

航路の安定性

です。

たとえば世界の荷物が増えたとしても、それ以上に船が増えてしまえば、運賃は上がりません。

むしろ船が余れば、荷主はこう言えます。

「運んでくれる会社はいくらでもある。もっと安くしてほしい」

すると運賃は下がります。

海運で大事なのは、荷物が増えることだけではありません。

船が足りないことです。

船が足りなければ運賃は上がります。

船が余れば、荷物があっても運賃は下がります。

これが海運株の難しさです。

コロナ後、海運株が大きく上がった時期がありました。

あの時は、世界の荷物が増えたこともありますが、それ以上に、港湾混雑、コンテナ不足、船不足が重なり、運賃が異常に上がりました。

つまり、海運会社にとって一番おいしい環境だったのです。

しかし今は逆です。

コロナ後の高運賃を見て発注された新造船が、数年遅れて市場に出てきています。

大型船は注文してすぐ完成するわけではありません。

発注から完成まで時間がかかります。

そのため、景気が良い時に発注した船が、景気が落ち着いた後に完成する。

この時間差によって、海運業界では供給過剰が起こりやすい。

つまり今のコンテナ船は、

荷物はある。

しかし船も多い。

だから運賃が上がりにくい。

この状態です。

商船三井の株価にとって、特に重いのがコンテナ船事業です。

商船三井は自社でコンテナ船を直接大きく運営しているというより、ONEという持分法適用会社を通じてコンテナ船事業に関わっています。

このコンテナ船の利益が大きく落ちています。

ここが、株価の重しになっています。

さらに、今の商船三井には中東リスクもあります。

ホルムズ海峡、紅海、ペルシャ湾。

このあたりの航行リスクは、海運会社にとって非常に大きい。

一見すると、中東情勢が悪化すれば、運賃が上がるので海運会社にプラスではないかと思えます。

たしかに短期的にはそういう見方もあります。

ホルムズ海峡が封鎖される。

紅海を通れない。

航路が迂回される。

船の移動距離が長くなる。

すると、使える船が実質的に減り、船腹需給が締まります。

その結果、運賃上昇期待が出ます。

だから一時的に海運株は買われました。

しかし、米国とイランの合意によって中東情勢の緊張緩和期待が出ると、今度は逆に売られます。

なぜなら市場は、

「運賃上昇の期待が後退した」

と見るからです。

ただし、ここがまた難しい。

合意が出たからといって、船がすぐに安心してホルムズ海峡を通れるわけではありません。

実際の航行再開には、現場の安全確認が必要です。

つまり株式市場では、中東リスクによる運賃上昇期待が先に剥がれる。

しかし実務上は、運航制約や燃料費上昇、配船効率の悪化がすぐには消えない。

これは商船三井にとって、かなり嫌な形です。

良い部分は先に消え、悪い部分は残る。

これが株価には重い。

さらに四季報でも、商船三井については「続落」と表現されています。

ばら積みは市況好転で改善。

LNGは安定貢献。

ここは悪くありません。

むしろ長期的には、商船三井の安定収益化にとって重要な部分です。

エネルギー事業では、2030年度までに新造船を増やし、LNG船などの長期契約を積み上げる方向です。

これは将来の安定収益につながります。

しかし、足元ではそれを打ち消す悪材料があります。

自動車輸送の後退。

ケミカルの後退。

燃油高騰。

コンテナ船の軟調継続。

中東関連の輸送量減少。

これらが重なって、連続営業減益の見方になっている。

つまり商船三井は、事業そのものが悪いのではありません。

むしろ長期的には必要であり、安定化にも向かっています。

ただし今の株価が見ているのは、長期の必要性ではなく、短期の利益の方向です。

ここが重要です。

投資家は、未来のアンモニア輸送やLNGの安定契約を評価しつつも、足元の決算ではこう見ています。

売上は増える。

でも利益は減る。

配当はある。

でも成長力は弱い。

長期契約は増える。

でも今期の利益にはすぐ効かない。

この状態では、短期資金は入りにくい。

今の日本株市場では、AI、半導体、電子部品、素材、電線、光通信関連に資金が集まっています。

三井金属、フジクラ、JX金属、村田製作所、太陽誘電のような銘柄には、

「これから利益が伸びるかもしれない」

という期待があります。

一方、商船三井は、

「必要な会社だが、今は利益が減る」

と見られている。

だから高配当でも、株価は重くなる。

ここは非常に現実的です。

株式市場は、必要な会社を必ず買うわけではありません。

利益が伸びる会社を買います。

海運は、社会に必要な産業です。

しかし、必要な産業ほど競争も激しくなります。

船が増えれば、運賃は下がります。

燃料費が上がれば、利益は削られます。

中東情勢が不安定になれば、航路は乱れます。

航路が乱れれば、効率は落ちます。

つまり海運は、世界に必要である一方で、利益が非常に読みにくい産業でもあります。

ここが株価の難しさです。

商船三井は、倒れる会社ではありません。

財務も事業基盤も大きい。

LNG、アンモニア、自動車船、タンカー、ばら積み、フェリー、不動産まで持っています。

しかも累進配当もあります。

長期投資で配当を受け取りながら見るなら、十分に検討できる銘柄です。

ただし、短期信用で値幅を取りにいくには重い。

なぜなら、今の商船三井には、上がるための分かりやすい材料よりも、売られる理由の方が目立っているからです。

今後、商船三井が見直されるには条件があります。

コンテナ運賃が底打ちすること。

新造船の供給過剰が落ち着くこと。

燃油価格が落ち着くこと。

ホルムズ海峡や紅海の航行リスクが正常化すること。

自動車船やケミカル船の下振れが止まること。

そして、会社側の減益見通しが上方修正されること。

このどれかが見えてくれば、商船三井は再評価される可能性があります。

なぜなら、必要な産業であること自体は変わらないからです。

今は、必要性が否定されているのではありません。

利益の伸び方が疑われているだけです。

つまり商船三井の下落を一言で言えば、

「必要な会社なのに売られている」

のではなく、

「必要な会社だが、今は利益が伸びにくいから売られている」

ということです。

ここを間違えると、海運株は非常に分かりにくくなります。

世界の貿易は増える。

船は必要。

商船三井も必要。

しかし、船が増えすぎれば運賃は下がる。

燃料費が上がれば利益は減る。

航路が乱れれば効率は悪くなる。

そして株価は、必要性ではなく、利益の方向を見て動く。

これが今の商船三井の株価下落の本質だと思います。

長期では、LNGやアンモニア輸送による安定収益化に期待。

短期では、コンテナ船の軟調、中東リスク、燃油高、連続減益が重い。

だから今の商船三井は、

現物で配当を取りながら待つ銘柄。

信用短期で攻める銘柄ではない。

この見方が一番現実的だと思います。

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