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ネタバレを踏む前に読んでほしい、サイゼリヤの会話劇『ほぼすべ』

こちらは作者目線ではなく、映画レビューサイトやカルチャーメディアに掲載されていそうな、第三者目線の紹介記事をイメージして書いた【架空の記事】です。

ネタバレはありませんので、本編を読む前でも安心してお楽しみください。


六甲道のサイゼリヤで始まる、小さな会話劇

『ほぼすべ』という、くだらなくて愛しい時間

六甲道のサイゼリヤ。
金曜の夜。

看護師のヨッシーと、作業療法士のスミレは、月に一度だけ同じテーブルを囲む。

二人が開いているのは、「ほぼすべ」。

正式名称は、
「ほぼすべらないかもしれない話を、ほぼすべらないくらいまで仕上げる会」。

名前からして、だいぶくだらない。
けれど、そのくだらなさが、この物語ではとても大切だ。

第一話「地球と描いてSAKABAとよむ」
第二話「たかみな」
第三話「紙の下着」
第四話「送信ボタン」
第五話「ポストカード」

全五話。

物語のほとんどは、二人の会話だけで進んでいく。

職場で起きた小さな出来事。
誰かに話したくなる失敗談。
少しだけ言い方を変えれば、もっと面白くなるエピソード。

スミレは話の順番を整え、ヨッシーは何度も言い直す。

そのやり取りは軽やかで、テンポがよく、まるで隣の席から聞こえてくる会話のようだ。

そして、その会話の間に、サイゼリヤの時間が流れている。

ミラノ風ドリア。
辛味チキン。
赤ワインのデキャンタ。
溶けていくアイスティーの氷。

料理が少しずつ減っていくたびに、二人の距離や、言葉にされない感情が、ほんの少しずつ見えてくる。

『ほぼすべ』は、派手な恋愛小説ではない。

誰かが大声で気持ちを告げるわけでも、劇的な事件が起きるわけでもない。

それでも読み進めるうちに、読者は気づく。

笑い話を仕上げているこの時間そのものが、二人にとって特別だったのではないか、と。

笑える。
でも、笑ったあとに少しだけ黙ってしまう。

会話劇が好きな人。
職場の「あるある」が好きな人。
大人の恋愛を、説明されすぎずに味わいたい人におすすめしたい作品だ。

まずは第一話だけでもいい。

六甲道のサイゼリヤ、その向かいの席に座るつもりで読んでみてほしい。

きっと第五話を読み終えたあと、最初のサイゼリヤの景色が、少し違って見える。


文・架空野 雷太



▼ほぼすべ|第一話 地球と描いてSAKABAとよむ


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