かぎりない庭 | 十六夜 血液のかたち
前回:十五夜 家のひとの絵
-血液のかたち-
叔父は、よく女の人を連れてきました。
母の兄です。
庭の外れの「はなれ」と言う小さな家に住み、祖父の仕事を手伝っていましたが、どこか落ち着きのない人でした。
ある日、叔父が女の人を連れてきました。
きれいな人でした。
よく笑う人でした。
叔父の隣に座って、祖父母に向かって、丁寧に頭を下げていました。
祖父母は、にこにこしていました。
けれど、あまり驚いてはいませんでした。
その人は、「あら、かわいいぼくちゃんね」と言って、頭をなでてくれました。
ちょっと照れくさかったのですが「また違う人だ」と、子どもながらに思いました。
その人が帰ったあと、叔父は茶の間で得意そうに話していました。
「最初は血液型を当てるんだよ」
叔父は、そう言いました。
「ちょっと話してみて、おとなしそうで、真面目そうなら、A型。少し変わっていて、面白そうなら、AB型。おっとりしていて、やさしそうなら、O型。わからなかったら、とりあえずA型にしときゃいい」
「でもな、B型とは言わないんだな」
叔父は笑いながら言いました。
「なんでだい?」
祖母が聞きました。
「B型って言われて喜ぶ女は少ないんだよ」
叔父は、悪いことを言っている顔ではありませんでした。
むしろ、いいことを教えているような顔でした。
叔父が言うには、
「当たれば、すごいと言われる。話が盛り上がる」
「外れても、じゃあ何型なの?と聞ける」
「そのあとで、そう見えた理由を言やぁいい」
「真面目でしっかりしてそうだったからさ」
「よく笑って楽しそうな人だったから」
「穏やかでやさしそうだったから」
そう言えば、外れても相手は嫌な気持ちにならないのだそうです。
「それから、自分の血液型を言うんだよ」と、叔父は言いました。
「相性がいいやつを言うんだよ」
祖父は、黙って聞いていました。
「今日の子はA型だったからさ。俺もA型だって言った」
「血液型でも相性いいね!って、喜んでたよ」
叔父は、得意そうに笑いました。
祖母は、何も言いませんでした。
祖父が、ぽつりと言いました。
「おまえは、B型だろうが」
叔父は、少しも困った顔をしませんでした。
「そうだよ。だから、A型って言ったんだよ」
「俺がB型だって言ったら、相性が悪いって思われちゃうだろ?」
叔父は笑いました。
「本人が信じて、気分よくしてるなら、それでいいじゃん」
祖父は、それ以上何も言いませんでした。
祖母も、何も言いませんでした。
わたしには、血液型のことはよくわかりませんでした。
A型。
B型。
O型。
AB型。
血に、かたちがあるということが、不思議でした。
そのかたちで、相性があることが理解できませんでした。
あとになって、祖父も祖母もA型だったと知りました。
かぎりない庭
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