かぎりない庭 | 十五夜 家のひとの絵
前回:十四夜 脈打つ庭
-家のひとの絵-
幼稚園で、家の人の絵を描く時間がありました。
家の人。
先生は、そう言いました。
お母さんでもいいです。
お父さんでもいいです。
おじいちゃんでも、おばあちゃんでもいいです。
好きな家の人を描きましょう。
そう言われて、わたしは少し困りました。
幼稚園には、家の人はいません。
祖父もいません。
祖母もいません。
母もいません。
兄もいません。
叔父もいません。
みんな、家にいるはずでした。
けれど、部屋のすみに、ひいおじいちゃんがいました。
ひいおじいちゃんは、たまに幼稚園に来ていました。
部屋のすみで、わたしを見ていてくれます。
いつもニコニコしていました。
わたしは、ひいおじいちゃんが大好きでした。
だから、ひいおじいちゃんの絵を描きました。
先生が、わたしの絵を見ました。
「おじいちゃんを描いたの?」
「ううん。ひいおじいちゃん」
わたしは、部屋のすみを指さしました。
先生は、そちらを見ました。
「あら、そうなのね。おじいちゃんとよく似てるわね」
「ひいおじいちゃん。ときどき来てくれるよ」
先生は、それ以上は何も聞きませんでした。
その絵は、あとで母にも見せられました。
母は、少し困った顔をしました。
それから、わたしを叱りました。
「変なことばかり言わないの」
わたしは見たものを描いただけでした。
かぎりない庭
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