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かぎりない庭 | 零夜 あの庭のこと

あらすじ
幼いころ、わたしにとって祖父母の家と庭が世界のすべてでした。

底知れぬ祖父母、暗い物置、干し柿、不思議な昆虫、池の底、やまのひと、美しいなめくじ、おわらない廊下、おかあさん。

大人には何でもないものが、子どもの目には妙に大きく、近く、不可思議で、逃げられないものに見えていました。

今はもうない庭に残された記憶をたどる、怖いけれど、どこか懐かしい連作ホラーです。

わたしの庭にとじこめてあげる。

全22話 完結です

序文 -あの庭のこと-


こどものころ、祖父母の家には、サッカーができるほど広い庭がありました。
と言っても、それは幼稚園児だったわたしの目にそう見えていただけで、実際にはそこまで広大な庭だったわけではありません。

それでも、祖父母の家には、数台の車が出入りできるだけの広さがありました。

庭には、大きな柿の木と栗の木があったのを覚えています。
ほかにも、ちょっとした茂みと、小さな池がありました。
池と言っても、今で言うビオトープのような、小さな水場です。

祖父母の家には、そういうものがいくつもありました。

周辺の家々と比べても広い敷地に、数台の車。
木々に囲まれ、小さな池もある。
当時としては、かなり恵まれた環境だったのでしょう。
普通と、そうでないことの違いも、まだわかっていませんでした。


そこは、観光地としても知られる、山間の地方都市でした。
祖父母は古い時代の人で、祖父は戦争から帰ってきたあと、自営業をしていました。

母は、わたしと兄を連れて実家に戻っていました。
当時のわたしには、父の記憶がありません。

祖父母と母、兄、そしてわたし。
そこに、祖父の仕事を手伝っていた叔父が出入りしていました。

幼いわたしにとって、その家の庭が世界のすべてでした。

大人にとっては、何でもないもの。
昔からそこにあり、これからもそこにあるのが当然だと思われているもの。
幼いわたしには、それらがときどき、妙に大きく、妙に近く見えました。


小学校に上がるころ、わたしたち母子は祖父母の家を出て、団地へ引っ越しました。
それから、ああいう不思議なことは起きなくなりました。

あの家から出たことで、わたしの世界が変わっただけなのか。
今でも、よくわかりません。

世界は広がったはずなのに、祖父母の家の庭の広さだけは、今でもかぎりがないように感じます。


あの庭は、もうありません。


かぎりない庭

次回:一夜 見たものを描いただけ


【完結済み作品】


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