かぎりない庭 | 一夜 見たものを描いただけ
-見たものを描いただけ-
幼稚園で、絵を褒められたことがありました。
「友達の絵」を描いたときのことです。
その絵について、母が保育士に言われたそうです。
「この年齢の子どもにしては珍しいくらい、人の関節を理解して描いている」
「遠近感や、重なりもわかっているように見える」
そういうことを言われたのだと、あとで母から聞きました。
母は、とてもうれしそうに、そのことを祖母に話していました。
わたしも褒められました。
けれど、よくわかりませんでした。
褒められたことは、うれしい。
でも、何をそんなに褒められているのかはわからない。
だから、うれしさも半分でした。
見たものを描いただけなのに。
そう思っていました。
同じころ、祖父に言われた言葉があります。
「この子は、生き急いでる感じだよ」
祖父が誰に向かってそう言ったのかは、覚えていません。
母だったのか、祖母だったのか。
それとも、ただ独り言のように言っただけだったのかもしれません。
幼いわたしには、その意味がわかりませんでした。
けれど、その言葉だけは、なぜか耳に残っています。
生き急いでいる。
それが、よい意味だったのか、悪い意味だったのか。
ただ、わたしは見たものを描いただけでした。
かぎりない庭
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