リサーチ(Inquiry)方法(3)・・・帰納法,演繹法,仮説的推論の違い
「リサーチ(Inquiry)方法(1)・・・大学授業に必須|鈴木佑治 N.Yuji Suzuk」
「リサーチ(Inquiry)方法(2)・・・帰納法,演繹法,仮説的推論の違い|鈴木佑治 N.Yuji Suzuk」
の続き(3)です。2024年4月に(前編)と(後編)の2部構成で配信ましたが、(後編)がなんが過ぎたので(2),(3)に再分割しました。未読の方は、まず、(1)と(2)をお読みください。
5種類のreasoningが追求する結論の違い
以上、5種類のreasoningを取り上げましたが、全5種類を取り上げているのはBOTのみで、それぞれのreasoningが追求する結論の違いを次のように纏めています。
Deductive reasoning → What is absolutely true? 何が絶対に真か?
Inductive reasoning → What is observably most true? 何が観察上最も真か?
Abductive reasoning →What is most likely true? 何が最も真らしいか?
Reductive reasoning→ What is not true? 何が真ではないか?
Fallacious reasoning → “What you think is true? 何が自分が思う真か?(BOTより)
induction、deduction、abductionの3つの語源を見ると違いが
MWは、induction、deduction、abductionの3つの語源を説明しています。Latin語からの借入語で、それぞれの違いがよく分かります。
Deduction: de– (“from”) + ducere(“lead”) = “lead from” = “lead from generally accepted statements or facts”
Induction: in-(“to”) + ducere(“lead”) = “lead to” = “leads you to a generalization”
Abduction: ab(“away”)+ ducere(“lead”) = “lead away” = “take away the best explanation”(BOTより)
reductive reasoningとfallocious reasoningについて一言
BOT以外は取り上げていませんが、reductive reasoningとfallacious reasoningについて一言。先ず、reductive reasoning(還元的推論)は、ある理論を否定したもの、即ち、その逆説が、偽り、または、奇妙な言説となれば、その理論は真であると証明することです。特殊なreasoningに見えますが、日常よく行うreasoningではないでしょうか。正反対の意見が対立した時、反対の立場に立ち考え直してみるというのもその一例です。BOTは、reductive reasoningは、deductive reasoningとinductive reasoningに類似しており、それらを混ぜたreasoningと述べています。
要は、これら2つのreasoningで導かれる結論を否定し、その真偽、有効性を再確認する(reconfirm)プロセスに過ぎないということでしょう。そうすると別項を立てるまでもないかもしれません。(*24)しかし、様々な文化が交差するグローバル社会にあって、自分の文化では正しいと思えることが、他の文化から見るとそうではないことが多々あります。異文化間の紛争には欠かせない重要なreasoningになることは確かです。
絶対に避けなければならないのは、fallacious reasoning(誤謬的推論)です。独りよがりの思いつき、個人の勘、誤認識を根拠にするわけですから必然的に誤った結論しか出てきません。意図的に行うとconspiracy theory(陰謀説)となり、残念ながら古今東西日常生活に蔓延しています。瞬時に多量の情報が交わされる現在の情報化社会においては、情報の真偽を見極める為に、deductive、inductive、abductive reasoning、時には、reductive reasoningも駆使して、的確な判断と的確な言動ができるようにすることが重要です。
一般的なreasoningはdeductive、inductive、abductive の 3つ
このように、deductive reasoning、inductive reasoning、abductive reasoningの 3つが一般的なreasoningとして集約されそうです。いずれのサイトも、これらのreasoningは、フォーマルな状況に限らず、日常生活で直面する問題解決においても頻繁に使われていることを強調しています。MWは、「アポイントメントに間に合うには家を何時に出たら良いか?ランチには何が一番良いか?キッチン・カウンターに半分食べかけのサンドイッチがある、どうして?」と、日常生活におけるこの種の問題発見・解決にdeduction、induction、abductionの3つのreasoningは欠かせないことを強調しています。わけても、ScribbrとDMを含め、その他多くの関連記事が焦点を当てているdeductionとinductionの2つのreasoningが最重要であることは確かです。
inductive reasoningで理論を導き、deductive reasoningでその真偽が得られるか?
これら2つのreasoningにつき、もう一言。DMは、「両者一対で連続的に使用される。即ち、inductionでtheoryを求め、deductionでそのtheoryの真偽を決める」と指摘しています。BOTの文言を借りれば、inductionから得られる結論は、「観察上最も真(observably most true)」であり、「絶対に真(absolutely true)」を目指すdeductionとは質的に違います。DM自体の文言を借りれば、deductionでは完璧で揺るぎの無い一連の事実(a sequential sets of facts)を揃えて論(arguments)を組み立てる必要があること。よって、実験室実験を伴う科学(lab / science)以外での応用は難しいこと。正確(precise)でより量的(quantitative)reasoningであること。一方、inductionでは不完全な知識しかなく、絶対正しいとは言えない物事に囲まれた日常生活において最善の問題解決を示す道具として欠かせないこと。大まかで(general)で質的な(qualitative)reasoningであること、等々、これらの根本的な相違点に鑑みるに、inductive reasoningで得られる理論をdeductive reasoningで実証するという言及は、分かりやすいですが、もう少々説明を要するものと考えます。
ハードサイエンスはいざ知らず人文科学、社会科学ではinductive reasoningの理論をdeductive reasoningで実証有り得る?
そうした疑問はさておき、柔軟に考えれば、inductive reasoningで理論を、deductive reasoningでその理論を実証する、という構図は人文科学や社会科学では十分考えられます。筆者がGeorgetown University言語学博士課程で訓練されたのはこれに近い方法論でした。言語データを収集しそれを観察し理論・仮説を立て実証するという流れです。筆者自身の英語法助動詞に関する博士論文、を例にすると、The Brown Corpusから全英語法助動詞を含む英文を取り出し、法助動詞ごとに意味解釈を行いながら観察し、仮説を立てて実証することにしました。データ収集(collecting data)→ 観察 / 分析(observation・analysis)→ 立論(theorization)→ 検証(verification)という手順です。論文執筆のproposalにはresearch methodの詳細を明記した概要(abstract)を提出します。それが受容されると、主査1名、副査2名から成る審査委員会(Ph.D. Committee)が形成され、論文指導、執筆後の論文審査、口頭試問(oral defense)を受けることになりますが、それぞれの段階でresearch methodについてもかなり厳しく諮問され、必死になってdefenseしたのを思い出します。 (*25)
COVID-19 Pandemicでonlineによる活動が強いられリサーチ方法はどう変わるか?各大学の変革は?
アメリカの大学・大学院の2021―2022 Academic Yearは、依然COVID-19 Pandemicの影響の中の幕開けとなると思われます。恐らく、in-personとonlineを混ぜた学習blended learningなどが中心に進められる可能性がありますが、かなりの部分でonline化が進むのは必至でしょう。実際、多くの分野の学術雑誌はonline化されており、現下のCOVID-19 Pandemicの影響から、例えば、医学学術会議などは、Eventbrite見ると、その多くがonlineで進められるなど、この傾向は加速すると思われます。すなわち、学術論文・記事・発表・討論はonline上で繰り広げられことになるのでしょう。若い読者は、10年後、20年後はそうした世界で活躍することになります。当然research方法論、reasoningも変わるでしょう。COVID-19禍で苦境と戦いながらも、各大学・大学院は、そうした将来の変化も見据えて変革・邁進するものと期待します。
多発するconspiracy theoriesはfallacious reasoningに起因、大学がResearch mindで光(lux)と真実(veritus)をどう保つか
最後に、ここ数年多発したconspiracy theoriesに目を向けると、上述したようにfallacious reasoningに起因するところが多く、research mind、critical thinkingの必要性が浮き彫りになりました。最高学府としての高等教育機関は、その最前線に立ち、research mind、critical thinkingの実践訓練の場を提供する使命を負っています。ただ、そこに高額の授業料という壁が立ちはだかっています。国内外の多くの有望な学生が夢を諦めることがないよう切に祈ります。(*26)COVID-19禍に置ける一条の真理(veritus)の光(lux)として、その創造力をもってすれば必ず解決できると信じています。光(lux)のエネルギーの源は創造力です。その創造活動に多くの若者が参加し貢献できるよう願います。(完)
(2021年1月12日記)
(*24)注20で触れたKarl Popperらにとっては、最重要で中心的なreasoningです。
(*25)口頭試問では、審査委員会メンバー以外に専門分野(筆者の場合英語学)の何名かの教授が加わり、次から次へと厳しい質問を受け、答えました。留学生活の最後を飾る思い出深い一幕でした。細部に至るまで手を抜かぬあの厳しさに敬意を評し感謝しています。
(*26)“Average Income around the World” によると、GNP世界3位の日本でさえ平均所得は$41,700です。アメリカ留学に掛かる総費用はその倍近くでいつしか高い壁ができてしまいました。日本からの留学生が激減しているようですが、それも頷けます。
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