リサーチ(Inquiry)方法(2)・・・帰納法,演繹法,仮説的推論の違い
はじめに
「アメリカ留学 ✅項目:リサーチ(Inquiry)方法(1)」の続きです。 このテーマは大学生、大学院生一般に共通するものです。そうした皆さんのお役に立てばと考えお届けします。前回はリサーチ(inquiry)の重要性を筆者自ら学生として教員として体験したことを通してお話しさせてもらいました。では具体的にどのようなリサーチ方法があるのでしょうか。
帰納法(inductive reasoning)、演繹法(deductive reasoning)、仮説的推論(abductive reasoning)の3つを押さえよう
このように科学方法論、すなわち、research approachは重要な課題であり、アメリカの大学、大学院への留学を考えている読者は、basicな知識として、inductive reasoning(帰納法)、deductive reasoning(演繹法)、abductive reasoning(仮説的推論)の3つをしっかり押さえておく必要があります。
インターネットで無料アクセスできるサイトから幾つか選んでみました。Merriam-Webster“Deduction vs Induction vs Abduction”(以下略称MW)は、これら3種類のreasoningを分かり易く簡潔に説明しています。
少々専門的になりますが、“Three Basic Types of Reasoning” (以下略称BOT)は、3種類以外にもう2種類のreasoningを取り上げ、比較しており、一読に値します。(*14)
これらの3種類のreasoningの内、最も重要なのは、inductive reasoningとdeductive reasoningの2つです。そこで、
Inductive vs. Deductive reasoning(以下省略Scribble)
および、
The Difference between Inductive and Deductive reasoning(以下略称DM)
の2つを選んでみました。これら4つのサイトは、日常のコンテクスト、そしてアカデミック・コンテキストからも例を挙げて分かりやすく解説しています。重複する部分がありますが、それぞれ強調するポイントが微妙に異なり、補完し合い、全体像を見るのに適していると思い選びました。他にも良いサイトが多数あります。(*15)以下、それぞれの強調ポイントを中心にreasoningごとに分けて要約します。TOEFL iBTテストの準備をしている読者は、原文で読んでください。TOEFL iBTテストでは中級中レベルから中級上レベルのreadingsです。コメント欄があったら書いてみましょう。
1. Deductive Reasoning(演繹的推論) = Deduction(演繹法)とは
[MW] 普く受け入れられている事実、理論を前提(premises)に推論(inference)する。前提が真であれば、結論は真であり、前提が虚偽であれば、結論は虚偽である。日常生活の例:
(1)飲料をストローで飲めるものとするなら、スープは飲料である。(*16);(2)10時に歯医者のアポイントがあり、家から歯科医まで車で30分掛かるとする。これら2つの事実から、アポイントに間に合うようにするには、遅くとも9:30には家を出なければならない。;(3)サンドイッチをスライスされた2枚以上のパン切れか、または、真ん中に切れ込みを入れたロールに中身を挟んだものとする。また、ホットドッグを真ん中に切れ込みを入れたロールに(熱せられた)フランクフルト・ソーセージを挟んだものとする。切れ込みを入れたロールに出されたホットドッグは、よって、サンドイッチである。
[BOT] 絶対に真であると言えるものを求める。ある理論が絶対に真であると証明する。論証・証明(prove)→答え(answer)の順に進める。シャーロック・ホームズの手がかり(clue)はその一例である。
[Scribbr] 既存の理論(an existing theory)を実証(test)する。4つのStagesから成る:Stage 1. 既存理論(例「格安flightsは遅れる。」)→ Stage 2. その理論を基に仮説を立てる(例「乗客が格安flightsで旅行すると、遅延に見舞われるだろう。」)→ Stage 3. 仮説を実証するためにデータを集める(例「格安flightsのデータを集める。」) → Stage 4.データを分析し、データが仮説を支持するかしないかを判断する(例「100格安flightsの内5flightsに遅延がなかった。」→ 仮説を却下、他方、「全100格安flightsで遅延があった。」→ 仮説確証)Deductive reasoningで結果を真とするには、全ての前提条件(premises)が真であること、使用する用語が正確に定義づけられていることが求められる。ここでいう既存理論はinductive reasoningの結果として得られるものである。(*17)
[DM] 理論(theory/hypothesis/idea)に始まり、実験・検証(experiment)し、確証(conclusion/confirmation/validation)する。理論(例 “All men are mortal.”) → 観察(例: “Jason is man.”)→ 確証。(例 “Jason is mortal.”)結果予測を可能にする既存の理論・考え・仮説を、実験を通して実証する。前提・根拠が真であれば、結果は必然的に真である。完璧な結論を導くが、前提・根拠が100%正確でなければならない。よって、実験室での実験(観察)を伴う科学(lab/science)以外の応用は難しい。日常生活で使いたいところであるが、一連の事実(a sequential sets of facts)を揃え、論(arguments)ずるのは至難である。Deductive reasoningは正確(precise)かつ量的(quantitative)である。(*18)
2. Inductive Reasoning(帰納的推論) = Induction(帰納法)とは?
[MW] 観察(observation)に基づき推論する。確率、可能性の要素(an element of probability)を取り入れた推論方法である。論理学では、複数の固有例から一般的な結論を推論することを言う。端的に言えば、観たり、知ったりするものから一般化できるものを推測することである。日常生活では、限られた事象を観察し、そこから可能性を探る推論、即ち、inductionが繰り返される。昼食時に、数名の同僚があるサンドイッチをオーダーするのを目撃したとする。そこから、そのサンドイッチは旨いに違いないと推測し、試してみる、などがその例である。
[BOT] 観察して最も本当と思えるものを見つけて証明する。例:数学的帰納法。観察(observe)→ 答え(answer)→ 証明(prove)の順。(*19)
[Scribbr] 理論を立てる(develop a theory)。あるテーマに関して理論が存在しない、または、希少で実証すべき理論が無いか、あっても乏しい場合に採る推論方法である。3つのStagesから成る。Stage 1. 観察(例「ある特定の格安flightが遅れる。」) → Stage 2. パターンを観る(例「20回の格安flightsが遅れる。」) → Stage 3. 理論を立てる(例「格安flightは遅れる。」)Inductive reasoningによる結論は、可能性であって、絶対に正しいと保証できるものではない。結論の信頼度はデータの量に比例する。データが少なければ信頼度が低下し、その分効力も低下する。
[DM] 観察(observation)に始まり、一般化(generalization)し、理論(hypothesis / theory / idea)を導く。個々のケースの観察を通して一般論を導く。手順は、観察(例“I break out when eat peanuts.”)→ 分析(analysis)→ パターン(例 “There is a symptom of being allergic.”) → 仮説・理論(例 “I am allergic to peanuts.”)である。Inductionの結論は、正しいかもしれないという可能性に過ぎない。根拠とする証拠(evidence)の良し悪しに依拠する。断片的な知識、確率性、実用性(usefulness)に依拠するところが多い。日常生活では物事が曖昧で、それらについての断片的な知識しか持ち得ず、問題解決にはinductive reasoningに依存せざるを得ない。Inductive reasoningは大まかで(general)、かつ、質的(qualitative)である。
3. Abductive Reasoning(仮説的推論) = Abduction(仮説推論)とは?
[MW] 既知の知識・情報から結論を導く事である。結論は可能性に過ぎない、メジャーな前提が明白であっても、マイナーな前提は可能性に過ぎないからである。この種の推理は日常生活のあちこちで見られる。例えば、食べかけのサンドイッチがカウンターにある(メジャーな前提)、そこから10代の息子が、サンドイッチを作り、それを食べかけたところで、バイトに間に合わないと知り(マイナー前提)、カウンターに食べかけを残したまま後片付けもせずに出て行ったのではと推論する(結論)。明白な事実は半分食べかけのサンドイッチがあったということだけで、後は、同居する息子に関する知識を前提に推理しており、結論は全くの可能性である。(*20)探偵が犯行現場での証拠を結び合わせて犯人を絞り出す場合、食卓の皿のスープはまだ温かい(メジャーな前提)、恐らく、飲んでいた者はすぐに戻ってくるに違いない、などもその一例である。
[BOT] 信頼できるデータやエビデンスを観て、説明できる仮説を立て、推論する。(*21)
4. Reductive Reasoning(還元的推論)とは?
[BOT] 当該の言説を否定し、その結果が誤っているか、馬鹿げているか、そのいずれかになってしまうことを示すことにより言説が真であることを証明する。(*22)Inductive reasoningとreductive reasoningに適応可能で、混合とも言われる。
5. Fallacious Reasoning(誤謬的推論)とは?
[BOT] 独断で勝手に真と思い込むこと。間違った認識(misconception)、間違った根拠(false premises)、独りよがりの結論(presumptuous conclusion)など、議論・推論上の誤りである。要は、真のreasoningでは無いと言うことである。(*23)
(MW, BOT, Scribbr, DMの4つのサイトより- 編集、要約、少々加筆、翻訳、鈴木佑治)
(2021年1月12日記)
「リサーチ(Inquiry)方法(3)・・・帰納法,演繹法,仮説的推論の違い |鈴木佑治 N.Yuji Suzuki」に続く
(*14)注1参照、pragmatismの提唱者Peirceの著作を編集したThe Rule of Reason: The Philosophy of Charles Sanders Peirceからの要約です。
(*15)余白の関係でここでは取り上げませんが、“Deductive vs. Inductive Reasoning: Make Smarter Arguments, Better Decisions and Stronger Conclusions” は、更に詳しく分かり易く解説しています。
(*16)現実に、熱いスープをストローで飲むかは疑問です。理論上OKでも実際にどうか疑わしい例は沢山あります。言語分析でも、理論上OKでも現実には疑問という例は沢山あります。Chomskyの”Colorless ideas sleep furiously.”は、文法理論上OKですが、意味論上“ideaと“colorless”や“sleep”はそぐわず、隠喩で無い限り、言うかどうか疑問です。
(*17) ここでは「格安flightsは遅れる」ですが、Scribbrのinductive reasoningの例の結論と同じです。
(*18)“Quantitative”と“qualitative”の違いについては、余白の関係でここでは割愛します。“Quantitative vs. qualitative data, What’s the difference?” などのサイトを参照してください。アメリカ留学で必要な知識です。
(*19)関心ある読者は、“mathematical induction”または”proof by induction”で検索してみてください。
(*20)不法侵入者の仕業かもしれません。そうだとしたら、10代の息子は濡れ衣を着せられることになります。身内ではなく他人であったなら大変です。冤罪(fraud)に繋がりかねません。
(*21)“The American philosopher Charles Sanders Peirce first introduced the term as “guessing”.”が付け加えられており、ここでの“hypothesis”は、Peirceの言う“guessing”(推察)という意味のようです。
(*22)このreasoningに関連し、関心ある読者は、“Karl Popper Theory of Falsification” も読んでみてはいかがでしょう。勿論、falsificationはfallacious reasoningではないので混同しないように。
(*23)巷間耳にするconspiracy theoriesはfallacious reasoningの最たるものです。また、reductive reasoningやinductive reasoningであってもconspiracy theoriesに陥る可能性があります。例えば、evidenceが改竄されたり、曲解されたり、都合のいいものだけであったり、はたまた、DMが指摘するように、inductive reasoning(単なる可能性としての結論を求める)で、deductive reasoning(絶対的真理の結論を求める)かのように議論を進めてしまうなど、情報化社会ではあちこちにその危険性が潜んでいます。
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