アウェイ遠征にこんなバスがあったらいいな|サッカー版フィジカルインターネットが地域をつなぐ
「日本サッカー産業論|世界一になるための問い」
Kindle書籍『日本サッカー産業論』から生まれた問いを起点に、日本サッカーの現場と仕組みを考えるシリーズです。
アウェイ遠征に、こんな仕組みがあったらいい
以前、小説『ナンバーワンスポーツ』のなかで、「AIバス」という仕組みを描きました。
安西は尋ねる。
「AIバスの運行は?」
「リーグの管轄です。最小催行人数はAIが調整します。関東から地方、地方から地方。直行の“サポータールート”を常設します」
――アウェイは、特別ではなくなる。
思わず、そう書きました。
未来のサッカー産業を描いたフィクションの一場面です。
しかし、書き終えたあとで考えました。
これは本当に、ただの空想なのでしょうか。
もちろん、現在もアウェイ応援バスツアーはあります。鉄道も、高速バスも、航空機もあります。旅行会社が企画する観戦ツアーもあります。
「もう今の仕組みで十分ではないか」
そう感じる人も多いでしょう。
確かに、東京から大阪へ行く、新幹線に乗る、ホテルを予約する、観戦して帰る。それだけなら現在の交通機関で問題ありません。
しかし、今回考えたいのは、単なる移動手段の追加ではありません。
問いは、もう少し大きなものです。
アウェイ遠征という全国規模の移動需要を、クラブや交通事業者ごとに分断されたままにしておいてよいのか。
そして、
サッカーを目的に発生する人の移動を、地域経済や交流を生み出す共有インフラへ変えられないか。
という問いです。
アウェイサポーターは、町にやって来る「外からの視点」である
ホームゲームの日、町には普段と違う色のユニフォームを着た人たちが現れます。
駅を降り、商店街を歩き、飲食店に入り、スタジアムへ向かいます。
試合が終われば、勝った人も、負けた人も、それぞれの町へ帰っていきます。
アウェイサポーターは、単なる観客ではありません。
地域の外からやって来る来訪者です。
普段は地元の人が気に留めていない店を見つけるかもしれません。何気ない風景を写真に撮るかもしれません。地域の食事や文化を面白いと感じるかもしれません。
そして地元の人は、その反応を見て初めて、
「この店は、外から来た人には魅力的なのか」
「この景色は、私たちが思っている以上に価値があるのか」
と気づきます。
外から人が来ることで、自分たちの町の良さを再発見する。
逆に、遠征したサポーターも、訪れた町のスタジアム、駅前、飲食店、交通、応援文化に触れます。
「自分たちの町でも、こういうことができるのではないか」
「この町のサポーター受け入れは素晴らしい」
「自分たちのホームタウンには何が足りないのだろう」
そう考えるきっかけになります。
アウェイ遠征は、観戦だけではありません。
町と町が互いを見る機会です。
全国にクラブが存在するJリーグには、こうした交流を毎週末発生させる力があります。
問題は、需要がクラブごとに分断されていること
現在のアウェイ移動は、多くの場合、個人単位またはクラブ単位で設計されています。
サポーターは自分で新幹線や高速バスを探し、ホテルを予約します。
クラブが応援バスを企画する場合も、そのクラブのサポーターだけを対象に、一つの試合ごとに募集します。
一定人数が集まらなければ、中止になります。
これは物流に置き換えると、メーカーごとにトラックを用意し、それぞれが少ない荷物を積んで同じ方面へ走っている状態に近いものです。
あるクラブのサポーターが20人。
別のクラブのサポーターが15人。
同じ地域で開催されるバスケットボールの観客が10人。
観光客が15人。
一つひとつの需要だけを見れば、大型バスは成立しません。
しかし、同じ日時に、同じ方面へ向かう人をまとめれば、60人になります。
現在は需要がないのではありません。
需要が見えておらず、分断されています。
ここに、物流の「共同」という考え方を取り入れられないでしょうか。
物流では、「自社専用」から「共同利用」へ進もうとしている
物流業界では、企業ごとにトラック、倉庫、配送網を持つ個社最適から、複数企業が輸送資源を共有する全体最適への転換が求められています。
代表的な考え方が、共同配送です。
同じ方面へ向かう複数企業の商品をまとめ、一台のトラックで運びます。
さらにその先にあるのが、フィジカルインターネットです。
インターネット上のデータが、特定の一本の専用回線だけを通るのではなく、複数の経路や中継点を使って目的地へ届くように、物流でもトラック、倉庫、拠点、事業者を越えて荷物を運ぶ構想です。
重要なのは、すべてを一社が所有しなくてもよいということです。
標準化された情報と共通ルールがあれば、複数の事業者をまたいで一つのネットワークとして機能します。
この発想を、アウェイ遠征に転用します。
スポーツ版フィジカルインターネット
現在の応援バスは、多くの場合、出発地からスタジアムまで一台のバスで直行します。
便利ではありますが、人数が集まらなければ成立しません。
スポーツ版フィジカルインターネットでは、最初から最後まで同じバスに乗ることを前提にしません。
たとえば埼玉県の浦和から静岡のスタジアムへ行く場合、
浦和駅から小型バスで首都圏の遠征ハブへ向かいます。
遠征ハブから静岡までは、同じ方面へ向かう人が乗る大型の共同幹線バスを利用します。
静岡の地域ハブへ到着したら、清水、磐田、藤枝など、目的地別のシャトルへ分かれます。
イメージとしては、
浦和駅
↓
首都圏遠征ハブ
↓
東海方面共同幹線便
↓
静岡遠征ハブ
↓
各スタジアム・ホテル・観光地
という流れです。
これは物流における、
集荷
↓
共同幹線輸送
↓
地域配送拠点
↓
店舗別配送
と同じ構造です。
一人ひとりが特定のバスを探すのではありません。
利用者はアプリに、
「この試合へ行きたい」
と入力します。
AIは、出発地、目的地、到着希望時刻、予算、乗り換え回数、日帰りか宿泊かをもとに、最適な経路を組み立てます。
AIバスとは、一台の自動運転バスではありません。
人と交通機関を結び付ける、スポーツ移動のルーターです。
「クラブ専用」ではなく、「方面別」に考える
共同化のポイントは、クラブ単位ではなく方面単位で需要を見ることです。
たとえば、ある週末に首都圏から甲信越へ向かう人がいるとします。
新潟のJリーグを観戦する人。
長野でJ3を観戦する人。
新潟でBリーグを見る人。
地域の音楽イベントへ行く人。
温泉旅行へ向かう人。
現在は、それぞれが別々に交通手段を探します。
しかし、途中まで同じ方向へ行くのであれば、幹線部分は共同化できます。
首都圏から新潟方面まで大型バスで移動し、その先で目的地別に分かれます。
あるいは、バスだけに限定する必要もありません。
首都圏から新潟までは鉄道を使い、新潟駅から各地域へ共同シャトルを運行する方が効率的な場合もあります。
AIが選ぶべきなのは、バスを走らせる方法ではありません。
既存の鉄道、高速バス、貸切バス、路線バス、タクシー、ホテル送迎を組み合わせて、全体として最も利用しやすい移動をつくる方法です。
既存の交通機関を奪う構想ではない
この構想を聞くと、
「新幹線や高速バスの客を奪うのではないか」
「既存の旅行会社があれば十分ではないか」
という疑問が出てきます。
しかし、目指すのは既存交通との競争ではありません。
これまで移動できなかった人を、新たな利用者に変えることです。
現在の交通機関を使い慣れている人は、そのまま利用すればよいのです。
新幹線を自分で予約し、ホテルも自分で選び、自由に移動したい人にとっては、現在の方法が最も快適です。
一方で、
乗り換えが不安な人。
帰りの終電がないため遠征を諦める人。
小さな子どもを連れている人。
高齢で長距離移動に不安がある人。
一人では行きにくい人。
地方から地方へ向かう交通手段がない人。
バスが出るなら行ってみたい人。
こうした潜在的なサポーターがいます。
AIによる共同交通は、既存の利用者を奪うのではなく、これまで移動市場に参加できなかった人を加えます。
鉄道会社にとっても、共同予約システムから鉄道区間へ送客されます。
バス会社には、クラブごとの単発発注ではなく、リーグや地域単位でまとまった需要が提示されます。
旅行会社は、交通だけでなく、宿泊、観光、飲食、観戦を組み合わせた商品をつくれます。
既存の事業者を排除して新しい仕組みをつくるのではありません。
既存の事業者をつなぐための共通基盤をつくるのです。
見えない部分は共同化し、サポーター体験は残す
共同化には注意点もあります。
物流では、荷物がどのトラックに載っても、無事に届けば問題ありません。
しかし、サポーターは荷物ではありません。
仲間と一緒に行きたい。
クラブカラーに囲まれたい。
車内から遠征気分を楽しみたい。
対戦相手のサポーターとは分けてほしい。
できれば乗り換えずに帰りたい。
そうした感情があります。
効率だけを優先し、対戦クラブのサポーターを同じ車両へ押し込めばよいわけではありません。
そこで、共同化する領域と、クラブごとに残す領域を分けます。
共同化するのは、
予約システム。
需要予測。
交通事業者への発注。
運行管理。
幹線区間。
乗り換え拠点。
ホテルや観光施設との接続。
決済とチケット。
安全基準。
遅延時の振り替えです。
一方で、
スタジアム直前のシャトル。
試合後の乗車場所。
車内の演出。
クラブ別のツアー企画。
対立の強いサポーターの分離。
こうした部分はクラブごとに設計します。
言い換えれば、
裏側は共同化し、表側ではクラブの個性を残す。
ということです。
物流でも共同配送を行ったからといって、商品のブランドまで一つになるわけではありません。
交通基盤は共有しても、サポーター文化は共有する必要はありません。
Jリーグが持つべきものは、バスではなく共通基盤
この構想で、Jリーグが直接バスを保有し、すべての運行を行う必要はありません。
バス会社にはバス会社の専門性があります。
鉄道会社には鉄道会社のネットワークがあります。
旅行会社には、旅行商品を企画し、安全に提供する役割があります。
自治体は、地域交通や観光政策を持っています。
クラブは、サポーターやホームタウンとの関係を持っています。
Jリーグの役割は、これらを奪うことではありません。
全国共通のプラットフォームをつくることです。
たとえば、リーグ公式アプリで、
出発地。
目的地。
観戦する試合。
日帰りか宿泊か。
希望料金。
希望到着時間。
乗り換え可能回数。
同行者。
車いすや子ども連れへの対応。
こうした情報を登録できるようにします。
AIは、正式予約の前に潜在需要を把握します。
現在23人。
催行可能性75%。
あと7人で直行便が成立。
人数が少ない場合は共同幹線便へ変更。
鉄道利用なら確実に催行。
宿泊便なら帰路を翌朝に変更。
そのように複数の選択肢を提示します。
従来は、旅行会社が先にツアーをつくり、その商品に人を集めていました。
新しい仕組みでは、先に人の希望を集め、その需要に合う交通を組み立てます。
アウェイ遠征を「町にお金を落とす仕組み」にする
交通が便利になっても、スタジアムへ直行し、試合終了後すぐに帰るだけでは、地域への経済効果は限定されます。
そこで、移動と地域滞在をセットで考えます。
利用者は、目的に合わせて複数のプランを選べます。
試合だけを見たい人には、スタジアム直行の日帰り便。
地域も楽しみたい人には、試合前に商店街や観光地へ立ち寄る便。
試合後に地元で食事をしたい人には、遅い時間に出発する便。
遠方から来る人には、ホテルと翌日の観光を組み合わせた一泊便。
全員に観光を強制する必要はありません。
選択肢を増やすことが大切です。
そして到着地には、仮に「AWAY WELCOME HUB」と呼ぶ共同拠点をつくります。
バスやシャトルの乗降場。
荷物預かり。
着替え場所。
観光案内。
飲食店の紹介。
ホテルへの接続。
スタジアムへのシャトル。
地域クーポンの受け取り。
こうした機能を集めます。
新しい巨大施設を建てる必要はありません。
駅、ホテル、商業施設、道の駅、既存のバスターミナルなどを活用できます。
以前考えたスポーツ遠征ホテル「STAYX」と連携することもできます。
STAYXが宿泊施設であると同時に、アウェイ遠征の地域拠点になります。
交通、宿泊、観光、飲食が一つにつながります。
地元の人も恩恵を受けなければならない
ここで重要なのは、サポーターだけが便利になる構想にしないことです。
サッカーの試合は、多くてもホームタウンで月に数回です。
試合のある日だけ走る交通では、地域インフラとしては弱いままです。
そこで、サポーター需要をきっかけに整備した交通網を、試合のない日にも地域で使います。
週末はアウェイサポーターを運ぶ。
平日は地域住民の買い物や通院を支える。
観光シーズンには観光客を運ぶ。
地域イベントの日には臨時交通として使う。
学校行事やスポーツ大会にも活用する。
複数の需要をまとめることで、車両と運転者の稼働率を上げます。
サッカーのために生まれた仕組みが、地域の日常を支える。
そうなれば、地元住民にとっても、アウェイサポーターの来訪は迷惑な混雑ではなく、地域交通を維持する力になります。
バス会社にとってもメリットがある
バス会社は現在、運転者不足や燃料費上昇、安全対策など、厳しい経営環境にあります。
単発の応援ツアーを試合ごとに依頼されても、車両や運転者の計画を立てにくいでしょう。
しかし、リーグ全体の需要をまとめて、
「今シーズン、首都圏から甲信越方面へ年間80便」
「関西から中国地方へ年間50便」
「九州域内で年間70便」
という形で提示できれば、運行計画を立てやすくなります。
すべての便を同じ会社が担当する必要もありません。
地域ごとのバス会社が共通基盤に参加し、自社の車両や運転者の空き状況を登録します。
AIが利用需要と車両を組み合わせます。
物流でいう、荷物と空きトラックのマッチングに近い仕組みです。
ただし、安さだけで事業者を選んではいけません。
安全基準、運転者の待遇、休憩時間、車両品質、緊急時対応を統一しなければなりません。
共同化は、過度な価格競争を生み出す仕組みではなく、安定した需要を提示する仕組みであるべきです。
鉄道会社にも新しい需要が生まれる
AIバスという名称ですが、すべてをバスで運ぶ必要はありません。
長距離区間は鉄道の方が速く、快適で、環境負荷も小さい場合があります。
その場合は、
地域の駅まで小型バス。
幹線区間は新幹線や特急。
到着駅からスタジアムまで共同シャトル。
という組み合わせが適しています。
利用者は複数の事業者を個別に予約するのではなく、一つのアプリで購入します。
一つのQRコードで乗り継げます。
鉄道会社にとっては、これまで自家用車を使っていた人や、遠征自体を諦めていた人を新たな利用者にできます。
また、試合時間に合わせた臨時列車や団体枠を、リーグ全体の需要データをもとに計画できます。
「バスか鉄道か」ではありません。
交通機関同士が利用者を奪い合うのではなく、目的地までの移動全体を共同でつくります。
旅行会社は、移動販売から体験設計へ
旅行会社にも重要な役割があります。
交通手段を手配するだけなら、利用者自身がオンラインで予約できる時代です。
しかし、アウェイ遠征には、
試合日程の変更。
悪天候。
延長戦。
帰りの交通。
ホテル。
観戦券。
地域観光。
キャンセル。
遅延時の振り替え。
さまざまな調整があります。
旅行会社は、これらを組み合わせた安心できる商品を設計できます。
特に、初めて遠征する人、家族連れ、高齢者、一人参加者にとって、相談先があることは大きな価値です。
交通を共同化することで旅行会社の仕事がなくなるのではありません。
個別の乗車券を販売する仕事から、遠征全体の体験を設計する仕事へ変わります。
クラブにも、新しいファンが生まれる
クラブにとっての最大の効果は、アウェイ観戦者が増えることです。
ホームゲームの観客を増やすことはもちろん重要です。
しかし、日本サッカーの人気をもう一段引き上げるには、ホームだけでなく、アウェイにも多数のサポーターが移動する文化を育てる必要があります。
アウェイスタンドが埋まれば、スタジアムの雰囲気が変わります。
応援の掛け合いが生まれます。
試合の物語性が強くなります。
テレビや配信で見た人にも、熱量が伝わります。
「次は自分も行ってみたい」
と思う人が増えます。
アウェイ遠征は、既存の熱心なサポーターだけの文化ではなく、新しいファンを育てる入口になります。
ホームでは年に十数試合しか観戦できません。
しかし、アウェイへ行くようになれば、クラブとの接点は増えます。
その結果、
チケット。
グッズ。
ファンクラブ。
配信。
宿泊。
交通。
飲食。
観光。
地域産品。
サッカーを中心に、さまざまな消費が生まれます。
クラブの売上だけでなく、サッカー産業全体の規模が広がります。
自治体には、来訪者数ではなく「交流の質」が残る
自治体がバス代を単純に補助するだけでは、事業は長続きしません。
何人運んだかだけでなく、地域にどのような効果があったかを測る必要があります。
宿泊した人数。
地域の飲食店を利用した人数。
観光施設を訪れた人数。
地域交通を利用した人数。
土産や地域商品を購入した金額。
再訪した人数。
自分の町を他者に勧めた人数。
アウェイサポーターが地域に何をもたらしたかをデータで確認します。
さらに重要なのは、経済効果だけではありません。
サポーター同士の交流。
地域住民との会話。
子どもたちのクラブ間交流。
サッカー教室。
地域イベント。
アウェイサポーターによる清掃活動。
災害時の相互支援。
クラブ同士の関係が、町同士の関係へ広がっていく可能性があります。
Jリーグの全国ネットワークは、単なる試合日程表ではありません。
日本中の地域を結ぶ交流網になり得ます。
人気クラブだけが得をする仕組みにしない
共同交通を市場原理だけに任せれば、人気クラブと大都市圏の路線だけが残ります。
首都圏から大都市への便は成立しやすい一方、地方から地方への移動は人数が集まりにくいでしょう。
しかし、日本サッカーの価値は、全国各地にクラブが存在することにあります。
地方から地方への移動こそ、支える必要があります。
そのために、採算のよい路線の一部を共通基金へ回す方法が考えられます。
スポンサーが地方路線を支援する方法もあります。
サッカーだけでは人数が足りない地域では、他競技、観光、地域イベントと共同化します。
自治体も、実際の宿泊や消費に応じて支援します。
一つのクラブで満席にするのではありません。
地域全体の需要を束ねることで、路線を成立させます。
これは単なる赤字補填ではありません。
サッカーを起点に、これまで存在しなかった地域間交流をつくる投資です。
全員が得をする関係をつくれるか
この構想は、誰か一人の犠牲によって成立してはいけません。
サポーターは、安く、安心して、遠征しやすくなる。
クラブは、アウェイ観戦者とファン接点が増える。
ホームタウンは、来訪者と消費が増える。
バス会社は、まとまった安定需要を得られる。
鉄道会社は、新しい利用者を獲得できる。
旅行会社は、地域体験を組み合わせた商品をつくれる。
ホテルは、試合日に加えて前後の宿泊需要を取り込める。
飲食店や商店は、来店客と売上が増える。
自治体は、観光だけでなく地域交通の維持につなげられる。
スポンサーは、広告ではなく地域交流を支える企業として価値を示せる。
地域住民は、外から来た人の視点によって自分たちの町を再発見できる。
アウェイサポーターは、訪れた町の良さを知り、自分の町について考える。
この循環が生まれるなら、サッカーは試合当日の娯楽を超えます。
アウェイは、地域と地域を結ぶ産業になる
Jリーグのクラブは、日本各地に存在しています。
毎週末、どこかの町から別の町へ、人が移動します。
これほど定期的に、全国規模で、人々の感情を伴った移動を生み出す産業は多くありません。
試合に勝ちたい。
選手を応援したい。
仲間と喜びたい。
悔しさを分かち合いたい。
そうした強い動機が、人を町から町へ動かします。
この移動を、サポーター個人の負担だけに任せておくのは、もったいないと思います。
クラブごとの専用交通から、地域間で共有する交通へ。
単発の応援ツアーから、年間を通じた共同ネットワークへ。
一台のバスを満席にする発想から、複数の交通機関と地域をつなぐ発想へ。
これは、自動運転バスの話ではありません。
AIという名前の新しい乗り物をつくる話でもありません。
すでに存在する交通機関、旅行会社、ホテル、地域施設を、共通のデータとルールでつなぐ構想です。
物流が個社最適から共同配送、そしてフィジカルインターネットへ進もうとしているように、スポーツの移動も共同化できるのではないでしょうか。
アウェイサポーターが町を訪れる。
地域の人が、自分たちの町の価値に気づく。
遠征した人が、訪れた町から学び、自分のホームタウンへ持ち帰る。
クラブとクラブの交流が、町と町の交流になる。
その積み重ねが、日本サッカーの人気を広げ、日本の地域を元気にしていく。
アウェイは、特別な人だけが行く特別な旅ではなくなる。
サッカーがあるから、人が動く。
人が動くから、町がつながる。
町がつながるから、日本が少し元気になる。
そんなサポータールートが、日本中に張り巡らされたら面白いと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事は、「日本サッカー産業論を起点に生まれた問い」シリーズの一編です。
スタジアム、育成、交通、宿泊、地域経済。
サッカーを試合だけで終わらせず、日本の産業や地域を動かす仕組みへ発展させられないか。
そんな視点から、これからも日本サッカーの未来を考えていきます。
本記事は、Kindle書籍『Jリーグアウェイ経済論 サポーターの移動から始まる地域交流』の調査・構想記事です。アウェイ遠征を、交通、宿泊、観光、地域消費、関係人口の視点から考えています。
蒼色真琴
MA Publishing
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