「あの人がいないと回らない」をなくす——中小企業バックオフィスのゆるい自動化入門
こんにちは、ぬまLabの沼倉弘幸(ぬまくら ひろゆき)です。 平日はゆうちょ銀行で経理・総務まわりの仕事、週末は中小企業診断士として発信・支援活動をしています。
「○○さんがいないと経費精算が止まる」 「△△さんが辞めたら、請求書の出し方がわからなくなる」 「あの人のExcelファイル、触れる人が他にいない」
こんな会話、心当たりはありませんか?
これは能力の問題ではありません。仕組みの問題です。
今回は、中小企業・小規模事業者のバックオフィスによく起こる"属人化"の構造と、それを少しずつ崩していく「ゆるい自動化」の入り口について書きます。
📌 この記事でわかること
・なぜ「この人がいないと回らない」という状態(属人化)が起きるのか、その構造
・自社のバックオフィスの属人化レベルを、4段階チェックでざっくり診断する方法
・自動化に入る前にやるべき「見える化」3ステップ(棚卸し→ボトルネック特定→標準化)

📌 結論
いきなり高度なDXやAI導入を目指すのではなく、
① 業務を棚卸しして現在地(属人化レベル)を見える化する
② ボトルネック業務を標準化し、「誰でも60点出せる」状態にする
③ 繰り返し・定型・データ転記の業務から、ゆるく自動化を始める
なぜ「属人化」は起きるのか
属人化が生まれる背景には、次のような構造があります。
①「頼める人」に仕事が集まる
「あの人に頼めば早い」が積み重なると、気づけばその人しかやり方を知らない業務ができあがります。
②忙しいほど整理できない
本来は手順書を作ったり引き継ぎをしたりすべきですが、忙しいときほどそれが後回しになります。結果として、属人化はさらに深まる悪循環に入ります。
③「Excel職人」の誕生
誰かが作った高度なExcelファイルが、そのままブラックボックスになって運用され続けるケースも典型的です。作った本人がいなくなった瞬間、誰も触れない"負の遺産"になります。
私自身、銀行で16年以上仕事をしてきた中で、こういった属人化の現場を何度も目にしてきました。
大企業でさえそうなのですから、リソースが限られる中小企業では、より深刻なケースも多いはずです。
まず自社の「属人化レベル」を把握する
対策を打つ前に、現在地を確認しましょう。 以下の4段階チェックリストで、自社のバックオフィスがどのレベルにあるか確認してみてください。

$$
\begin{array}{|l|l|l|}
\hline
\textbf{レベル} & \textbf{状態} & \textbf{典型的な症状} \\
\hline
レベル1 & 口頭・記憶のみ & 「聞かないとわからない」が多発 \\
レベル2 & 個人のExcelで管理 & 担当者のPCにしかファイルがない \\
レベル3 & 共有フォルダあり、でも属人的 & ファイルはあるが、使い方がわからない \\
レベル4 & 誰でも同じアウトプットが出せる & 手順書・チェックリストが整備されている \\
\hline
\end{array}
$$
多くの中小企業のバックオフィスは、レベル2〜3あたりに集中しています。 レベル4を目指すことが理想ですが、一足飛びに到達しようとするから挫折します。大事なのは、一段階ずつ着実に上げていくことです。
自動化の前にやること——「見える化」3ステップ
ここが多くの企業が見落とすポイントです。
ツールを導入したり、AIを使ったりする前に、まず業務を「整理」しなければなりません。整理されていない業務をそのまま自動化しても、混乱が速くなるだけです。

STEP 1:業務の棚卸し
「何を・誰が・どのくらいの頻度でやっているか」を書き出します。 ExcelでもNotionでも、紙でも構いません。まず一覧にすることが目的です。
棚卸しのポイントは「頻度」と「時間」を必ず記録すること。「月次・2時間」「週次・30分」のように数字にすると、後で優先順位をつけやすくなります。
STEP 2:ボトルネックの特定
棚卸しリストを眺めて、次の問いに答えてみてください。
どの業務でいちばん「待ち」が発生しているか?
誰かに聞かないと進まない業務はどれか?
ミスが起きやすい・起きると影響が大きい業務はどれか?
これがボトルネックです。自動化の優先順位は、ここから決めます。
STEP 3:標準化(手順書・チェックリスト化)
ボトルネックが特定できたら、そこから手順書を作ります。 最初は完璧を目指さなくていい。「新しい人が見て、60点のアウトプットが出せる」レベルで十分です。
この3ステップが完了して初めて、自動化・AI活用の出番が来ます。
はじめての自動化はここから選ぶ
標準化できた業務の中から、自動化に向いているものを選びます。 判断基準はシンプルで、次の3条件をすべて満たすものが候補です。
繰り返し:毎週・毎月など定期的に発生する
定型:やり方が決まっていて、判断が少ない
データ転記:AのデータをBに移す、集計するなど
この条件を満たす業務は、ExcelマクロやClaude Codeといったツールで比較的シンプルに自動化できます。
たとえば
売上データをシステムから落としてExcelに整形する作業
経費申請データを集計して承認者に送る作業
定型文メールを名前や金額だけ変えて送る作業
これらは、ツールさえ整えれば担当者がいなくても回る業務にできます。

まとめ
属人化の解消は、ツール導入より先に「整理」から始まります。
今日からできることを整理するとこうなります。
自社の属人化レベルを確認する(レベル1〜4)
業務を棚卸しして、ボトルネックを特定する
まず手順書・チェックリストで「標準化」する
繰り返し・定型・データ転記の業務から自動化を始める
完璧な仕組みでなくていい。まず「誰でも60点が出せる状態」を目指してください。それだけで、バックオフィスの現場は大きく変わります。
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現場の細かな事務作業やムダな二度手間を見直し、業務の自動化や仕組み化によって、作業時間の削減と事務ミスの低減を同時に実現していきます。
もし「自社のこの業務で試してみたい」「ここはどうすればいい?」といったテーマがあれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。
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