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『対夢魔調停局東京支部』第3話

灰渕虎竹(4)(15)高校一年生。調停員
銀華  (4)(18)雪女の夢魔。虎竹の番
白峰無角(16)調停員
四ノ宮稟(26・声のみ)副支部長
男子生徒1(15・声のみ)
男子生徒2(15・声のみ)
男性(30)
機械音声
敵1



◯都立六辺高等学校・教室
   窓際に座っている灰渕虎竹(15)。


◯(回想)警察署・取調室(夕)
   虎竹、警察官と話している。

虎竹N「あれから二週間」


◯(回想)病院・取調室(朝)
   採血を受けている虎竹。

虎竹N「諸々の連絡も落ち着き、俺は──」


◯(回想)マンション・虎竹の部屋(夕)
   虎竹、書類を持っている。
   書類には『対夢魔調停局・雇用契約書』と書かれている。


◯都立六辺高等学校・教室
   周囲の生徒たちが集団で話している。
   窓の外を見ている虎竹。

虎竹N「クラスでめちゃくちゃ浮いている」


◯同・校門(夕)
   虎竹、ため息交じりに歩いている。


◯(回想)同・階段・踊り場
   虎竹、階段に座って菓子パンを食べている。
   男子生徒1(15)、男子生徒2(15)の声。

男子生徒1の声「3組の灰渕? やべぇよな〜」
男子生徒2の声「入学早々、喧嘩で休んだって」

   虎竹、驚いている。


◯同・校門(夕)
   校門を潜る虎竹。

虎竹M「どうしよう」

   校門脇に屈んでいる白峰無角(16)。
   白峰、コンビニの袋を持っている。

白峰「よっ」
虎竹「無角!」

   白峰、白シャツとスラックス。
   虎竹、白峰を指差して、

虎竹「それ制服?」
白峰「いーや、それっぽいだけの私服」


◯住宅街(夕)
   虎竹と白峰、並んで立っている。
   虎竹のスマホを覗き込んでいる白峰。

虎竹「ここ?」
白峰「そこ。終了時にも押してな」
虎竹「わかった」

   液晶画面に『稼働開始』と『稼働終了』のボタンが並んでいる。

虎竹N「今日は研修として、無角の巡回に同行する」

   歩いている虎竹と白峰。

虎竹「巡回では何をするんだ?」

   白峰、コンビニの袋から焼き鳥を取り出し、

白峰「そだなァ、まず」

   焼き鳥を食べて始める白峰。

白峰「人間と番になる夢魔の条件、わかるか?」
虎竹「……受肉体であること?」
白峰「アタリ。好きなのやるよ」

   白峰、袋を虎竹に差し出す。
   袋から菓子を取る虎竹。

白峰「んで、受肉体になれるのは強い奴だけ。近くを通れば雑魚は散るんだわ」

   虎竹、菓子を食べている。

虎竹「基本は文字通り巡回?」
白峰「そゆこと」


◯ビル街(夕)
   虎竹と白峰、並んで歩いている。
   白峰、焼き鳥の串を半分に折る。

白峰「例外は二つ」

   折った二本の棒を振る白峰。

白峰「一つは受肉体。もう一つは、精神汚染」
虎竹「精神汚染?」
白峰「まァ、精気を食われすぎたケースだな」

   白峰、串を紙に包んで袋に捨てる。

白峰「その場合、対象者の中の夢魔を追い出しに行く」
虎竹「なるほど……」

   白峰と虎竹のスマホに通知音。

白峰「おっ」

   白峰、スマホの画面を虎竹に向けている。
   『精神汚染を検知しました』と書かれている通知。

白峰「(笑って)さっそく実践だな」

   緊張した表情の虎竹。


◯同・空きビル・外階段(夕)
   階段を上がっている白峰と虎竹。
   虎竹、白峰の背を見上げ、

虎竹「精神汚染が進むとどうなるんだ?」

   振り返る白峰。


◯同・空きビル・屋上(夕)
   壁際で倒れている男性(30)。
   男性、口からよだれが垂れている。

白峰の声「廃人」

   愕然とした表情の虎竹。
   白峰、男性の首元に指を当てながら、片耳の通信機に触れる。
   虎竹、両拳を握っている。

白峰の声「虎竹」

   顔を上げる虎竹。
   白峰、男性に回復体位をとらせている。

白峰「核の破壊には至ってねぇ。まだ助かるぜ」

   虎竹、安堵の息を吐く。
   白峰と男性の元に向かう虎竹。
   ×  ×  ×
   白峰と虎竹、男性の両脇に座っている。
   虎竹、スマホを手に取る。
   マレーバクのアイコンをタップする虎竹。
   白峰と虎竹のスマホから機械音声。

機械音声「対象選択完了。精神転送を開始します」

   虎竹、壁に背を預け、両目を閉じる。


◯(精神世界)ワンルーム
   和式のワンルーム。そこら中に黒い穴が空いている。

機械音声「フルダイブ成功」

   両目を開ける虎竹。
   白峰、虎竹の脇で屈んでいる。
   白峰、近くの穴に手を伸ばす。
   塞がっていく穴。

白峰「まずは最低限の精気を補う。虎竹は範囲を確認してきてくれ」
虎竹「(頷いて)わかった」

   虎竹、玄関の方に向かう。
   玄関扉に手をかける虎竹。

虎竹M「開きそう」

   虎竹、扉を開く。
   扉の向こうにバルコニー。
   バルコニーの窓の先に白峰の姿。
   室内を振り向く虎竹。

白峰「ん? どした?」

   台所の炊飯器が鳴る。
   虎竹、両肩が跳ねる。
   炊飯器の蓋が開く。
   炊飯器の中に収まっている敵1。
   敵1、黒いアルマジロのような見た目。

虎竹「い」

   炊飯器から出て、リビングに跳ねていく敵1。

虎竹「いたー!! そっちいった!!」

   敵1、白峰に飛びかかる。
   白峰、マチェットで防御する。

白峰「(小声で)重てぇなクソ」

   敵1、虎竹の方に弾かれる。
   両腕を上げる虎竹。
   虎竹の額で跳ねる敵1。

虎竹「いだっ」

   敵1、玄関を潜り抜ける。
   玄関を通る白峰と虎竹。


◯(精神世界)同・バルコニー
   白峰と虎竹、着地する。
   敵1、室内に転がり込む。

虎竹「……ループしてる」

   虎竹、はっとして駆け出す。


◯(精神世界)同
   台所の蛇口に手を伸ばす虎竹。
   ×  ×  ×
   転がっている敵1。
   敵1を追っている白峰。
   シンクから水が溢れ、台所前の床が水浸し。
   敵1、水の上を転がる。
   虎竹、脱衣所から身を乗り出し、床の水に触れる。

虎竹「銀華! 頼む!」

   敵1の足元が凍りつき、動きを止める。
   白峰、鍋を敵1に被せる。

白峰「(虎竹に)ナイス!」

   虎竹、笑みを浮かべる。


◯ビル街・空きビル・外観(夕)
   男性、救急車に乗せられている。
   救急車を見送る白峰と虎竹。
   虎竹のスマホに着信。
   液晶画面に『四ノ宮さん』の文字。


◯(液晶画面)同・エントランスホール(深夜)
   虎竹、気絶している銀華に肩を貸している。
   銀華の首輪が拡大。

四ノ宮の声「これとは別に、とある物が発見されました」


◯(液晶画面)卓上
   黒い筒状の容器が写る。
   ガラス部分が一部割れている。


◯ビル街・空きビル・外観(夕)
   無線イヤホンをつけて、スマホを見ている虎竹。
   白峰、スマホの画面を覗き込んでいる。

四ノ宮の声「見覚えは?」
虎竹「(眉根を寄せて)黒服の誰かが持っていた、ような……」
四ノ宮の声「物質転移装置です。内部から君の血液が検出されました」

   両目を見開く虎竹。

四ノ宮の声「君の心臓は持ち去られた。そして現場にいた夢魔は『君のイマジナリーフレンド』」

   冷や汗をかいている虎竹。

四ノ宮の声「虎竹くん。君の心臓は、意図的に狙われた可能性が高い」


◯(精神世界)月面・日本家屋・縁側
   両目を開ける虎竹。縁側に立っている。
   縁側に座っている銀華。

虎竹「銀華……」

   銀華、自分の膝を指差し、手招きをする。

虎竹「え?」
銀華「(舌打ち)……チッ」

   銀華、虎竹の胸ぐらを掴んで引き寄せる。

虎竹「うわっ!?」

   虎竹、銀華の膝に頭を乗せて横になっている。

虎竹「あの、銀華さん」
銀華「精気を吸ってる」
虎竹「……これで?」

   虎竹の頭を撫でる銀華。
   虎竹、体に力が入る。
   頬を赤くする虎竹。

虎竹「あ、あのさ、昔のこと覚えてるか?」

   銀華、手が止まる。
   ×  ×  ×
   灰渕虎竹(4)と銀華(4)、雨傘の下で体育座りをしている。
   笑顔で絵本を読んでいる虎竹と銀華。
   ×  ×  ×
   懐かしそうに両目を細めている銀華。

銀華「……一応」

   銀華から目をそらす虎竹。

虎竹M「それだけで、ここまで助けてくれたのか」
銀華「お人好しには言われたくない」
虎竹「心の声に返事しないで?」
銀華「フン」

   虎竹、銀華を見上げて、

虎竹「なぁ、あの黒服達」

   虎竹、固まる。
   銀華、舌を出している。
   舌に黒い蝶のマーク。

虎竹「それ」
銀華「口枷よ。情報提供は期待しないで」

   銀華、虎竹の頭を撫でる。

銀華「行動には影響しないわ。安心なさい」

   両目を細める虎竹。

虎竹「……わかった」

   ×  ×  ×
   虎竹を抱きしめている銀華。
   ×  ×  ×
   虎竹、銀華の膝から体を起こす。
   銀華に向かい合って正座する虎竹。
   小首を傾げる銀華。

虎竹「俺を、救ってくれてありがとう」

   銀華、両目を見開く。
   虎竹、左胸に片手を置いて、

虎竹「探すよ。それを外す方法も。絶対見つけるとは、言えないけど」

   ゆっくりと微笑む銀華。

銀華「……なら、次はあんな見え見えの罠に引っかからないことね」

   指先で空中に蝶を描く銀華。

虎竹「(顔を歪めて)ぐぅ」

   銀華、虎竹の耳元で囁く。

銀華「浮気しちゃ嫌よ?」


◯マンション・虎竹の部屋(朝)
   スマホのアラームが鳴っている。
   虎竹、布団に仰向けになっている。
   片耳を押さえている虎竹。頬が赤い。
   虎竹、アラームを止める。
   液晶画面には『7:30』と写っている。
   布団から起き上がる虎竹。

虎竹M「びっっくりした」

   虎竹、布団を畳む。
   畳まれた布団に顔を埋める虎竹。

虎竹M「浮気って……そういう仲みたいだ」





【第1話】


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