蝉が見た夏は、梅雨でした。
蟻が、蝉を運んでいた。
夏の終わりを、
静かに知らせるように。
ずり、ずりと。
けれど今年は、
八月になっても、雨が降る。
梅雨は明けず、夏も来ないまま
蝉だけが、命を終えていく。
人は空を見上げ、不満を零す。
「いつになったら、梅雨は明けるのか。」
梅雨の中、
命を終えた蝉は
何を思ったのだろう。
思い描いてた、夏とは違う
そう嘆いただろうか。
雨の音も、夏の一つだと
受け入れたのだろうか。
あの日の雨は、
誰の世界で見れば、
夏だったのだろうか。
そんなことを考えながら、
今日もまた、
傘をひらいた。
ああ、
わたし、いま
余裕があるんだ。
命を終えた形が教えてくれました。
