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WEBデザイナーがやってきた!|デザインのあうんVol.2.3

こんにちは。d-fractalのデザイナー、Ochiです。

先日のカフェでの出来事。WEBの世界に少しばかり疲れを感じていた青年・竹田くんとの会話をボスに共有したところ、「ええやないか、いっぺん呼んでみ」とあっさり背中を押してくれた話をしました。

善は急げと、竹田くんに今週は月曜と水曜が大丈夫よとLINEを飛ばすと、「では水曜!」と、食い気味の即レス(笑)。そんな彼に、うちの事務所の名刺を渡してあったので直接来てもらうことにし、当日、約束の時刻に事務所のチャイムが鳴りました。

「本日はお世話になります」

扉を開けると、そこにはキリッとしたスーツ姿の竹田くん。うん、まずはその礼儀正しさに一安心。仕事以前に、こういった場での節度や立ち振る舞いができるかどうかって、実は結構重要な素養だと思うんです。ボスに挨拶を済ませると、ボスも「まあ、気になることあればなんでもこのOchiに聞いてや」と、いつもの懐の広さで彼を迎え入れてくれました。

■アナログとデジタルの交差点


早速、彼を事務所の奥へと案内します。まずは私のデスクから。
グラフィックもWEBも、結局は今は画面と向き合う作業であることに変わりはありません。でも、竹田くんが驚いていたのは、私のデスクの周りに散らばっている膨大なデザインスケッチやラフの数でした。

「すごい……。こんなに書き込んでいるんですね。これ、PCで直接作業を始めるのと比べて、時間かかりませんか?」

少し呆気にとられたような顔をする彼に、私は思わず笑ってしまいました。

「そう見えるでしょう?でもね、最終的なアウトプットが紙のプロジェクトである以上、まずは紙の上で思考を整理して、構成バランスを詰めてからPCに向かう。これが一番の『近道』であり、一番の『安全装置』なのよ」

PCでゼロから積み上げるよりも、手で引いた線のほうが、時に残酷なほど本質を突きつけます。そんなことを話していると、隣のデスクでショートカットキーを叩いていたTanakaさんが、画面から目を離さずに聞き耳を立てているのが気配で分かりました。あとで何を言われるか……少しだけ、背筋が寒くなります(笑)。

■「色校」という名の、物理的な現実


次に、実際に印刷所から上がってきたばかりの「色校」を見せました。

「これが色校。モニタで確認するのとは当然色が微妙に違うし、何より、配置のバランスや紙の手触りまで含めて確認できる最後の砦ね」

「これが色校ですか。チラシは何回か作ったことあるんですけど、Canvaで組んでそのまま出力していたので……こうやって出てくるんですね。周りの線はトンボ、ですよね?」

「そうね、よく知ってるわね。これは日本式トンボ。他にもUSトンボなんかもあるけれど、日本ではあまり見かけないわね」

専門用語を聞き取る彼の目は、純粋な好奇心で輝いていました。WEBという、クリック一つで世界が変わる軽やかな世界から飛び出した彼にとって、物理的なインクの乗りや、紙という物質と対峙するこの現場は、新鮮というよりは、少しばかり「重たい」ものに見えたのかもしれません。

■「楽はできない」というエール


見学も一段落し、彼から「普段はどれくらいの仕事を回しているんですか?」と質問が飛びました。

「今ね、同時進行で7プロジェクトくらいかな」

「7つ……? 3人で?」

「そうよ。この規模の事務所なら普通のこと。竹田くん、もしこの世界に入っても楽はできないわよ(笑)」

彼は「ハードですね……」と苦笑いしていましたが、その目からは逃げ出したいという弱気よりも、この圧倒的な物量をどう捌いているのかを知りたい、というプロとしての「飢え」を感じました。きっと、今の仕事だって決して楽ではなかったはず。それでも新しい場所を探したくなるのは、クリエイターとして、どこか共通した性(さが)なのかもしれません。

一通り見学も終わり竹田くんが帰った後、デスクのTanakaさんが珍しくぼそりと一言。

「なかなか好青年じゃない。でも、ちょっと線が細いから大丈夫かしら。私たち、体力勝負だから」

Tanakaさんのその言葉は、彼に対する期待の裏返しのように聞こえました。

WEBの軽やかさと、紙の泥臭さ。その二つを知るハイブリッドなデザイナーになるのか、それともこの重圧に押しつぶされるのか。彼にとっての新しい風が、d-fractalという小さな事務所を見たことで彼の中でどう吹くのか。少しだけ、楽しみな春の午後でした。

text by Ochi (d-fractal)


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