性格とは裏腹な行動心理を将棋の観点から分析

唐突な質問だが、あなたの性格は激しいだろうか?それとも穏やかだろうか?

私は長いこと将棋が趣味で、小学生の頃には将棋を指すために、渋谷区の千駄ヶ谷にある将棋会館に通い詰めるような子供だった。

※今回の記事に登場する棋士の名前は記事作成時の肩書きのみ、敬称略で進める。

一時期七大タイトルを独占した羽生善治(現九段)と、そのライバルとされる谷川浩司(十七世名人)が戦った名人戦の解説会にも行った。
その時は、先日亡くなった、ひふみんの愛称でも有名な加藤一二三九段が生解説だったのを覚えている。
その際、朝日新聞の入社試験に、羽生と谷川のどちらが最年少名人記録を持っているかという問題が出るという話をしていた。
まだご存知なく、興味のある方はまずはググったりせずに、当ててみてほしい。記事の最後の方に答えを載せておく。

前置きが長くなったが、将棋の指し方、つまり戦い方には激しいやり方と穏やかなやり方がある。
将棋用語でいえば攻めと受け。簡単にいえば攻撃と防御なのだが、それぞれ攻めの棋風や受けの棋風といわれる。
ある棋士に言わせると、ふだん激しい気性の人は穏やかな手を指し、穏やかな気性ならば激しい手を指すというのだ。
つまり性格の激しいタイプは受けの棋風、逆に穏やかなタイプは攻めの棋風といえるのだろう。
しかしこれは将棋に限らないことで、日常の発言や対人関係にも同様のことが現れるのではないだろうか。
私はこの見方について心理学的な裏付けなどは示せないのだが、自らを振り返っても心当たりを感じる。あなたはどうだろうか。
内に秘めた熱さを人から見せられると心動かされることがあるという人も多いと思う。

表に見せる雰囲気や言葉遣いは、内心と裏腹な現実があるかも知れないし、それが人間として魅力を作るとも思える。
私は幼い頃から将棋を趣味としてきたが、人間のそういった内面を浮き彫りにするのが将棋というゲームの醍醐味ではないかと改めて感じる。

俳優の渡辺徹は将棋を趣味にしていたが、相手の気持ちを想像してみることが楽しむコツだと言っていた。
実は加藤一二三もこれに関連することを語っていた。彼は対局相手の背後に回って、盤上の戦況を相手側から眺めることがあったそうだ。
マナー違反と批判されることもしばしばだったようだが、加藤自身によると、ある最高裁判所の判事が、この行動を引き合いに出してこう語ったという。
法律家たるもの、一方向から物事を捉えてばかりではいけない、敵の立場から見る視点を持つことが重要だ。その点において加藤のこの行動は参考になる。

ところで、将棋界には私の知る限り、藤井姓の人物が女流棋士を含めると3人いる。今回はその中でも藤井猛(現九段)という棋士に注目したい。
藤井猛といえば、2000年の羽生との竜王戦のエピソードとして語られる「一歩竜王」がある。
一番価値の低い駒の「歩」が一枚手駒にあったことが、最強の駒の名前にちなんだタイトル「竜王」獲得の決め手になったというお話。
他にも藤井システムや藤井矢倉などの新戦法の開拓もしているし、最近では詰将棋の栄誉といえる看寿賞を受賞している。
バリバリの実力者なのだが、日々更新される藤井聡太の情報の影になってしまっているとしたら本当にもったいない。

話を戻すと、性格の激しさと指し手の関係について発言した「ある棋士」とは、この藤井猛である。将棋の解説中、ふとした瞬間に一言そう述べただけなのだが、今でも記憶に残っている。

藤井猛は名解説をする棋士だと思う。テレビ対局の中継でも好カードの対局で解説に抜擢される印象だ。
さらに忘れてはならないのだが、加藤一二三も言葉数は多かったが、的確な解説をする棋士だった。
個人的に今後注目している解説者は他ならぬ藤井聡太なのだが、対局が忙しすぎてなかなか解説に呼べないのではないだろうか。

たくさんのタイトルを持っているということは、当然そのタイトルについては挑戦もしなければ予選を戦うこともない。
将棋棋士の対局は、大半がタイトル戦の予選なので、ほとんどのタイトルを保持している藤井聡太は必然的に防衛戦が多くなる。

羽生は全国各地で数多くのタイトル戦を経験しているが、二日制の対局で泊まりになると、朝起きた際に今どこにいるか分からなかったことがあるらしい。
そうなってきたら調子が悪いサインだと藤井聡太にアドバイスしたいとインタビューで言っていた。
しかし、その境地を経験するような棋士は将棋界の歴史上、まだ羽生と藤井聡太の2人に限られているのではないだろうか。

ちなみに、冒頭の最年少名人記録の正解は、この当時は谷川の21歳2ヶ月。しかし2023年に藤井聡太が20歳10ヶ月に記録を更新した。

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