#0221アメリカが覇権国をおりるなら、アメリカ第一主義は貫けない
こんにちは!釧路人おだわらです!
今年一月に再登板したトランプ大統領は、矢継ぎ早に政策を打ち出し、世界に再び衝撃を与えています。
WHOからの脱退、国際開発庁の解体、関税の引き上げ。いずれも「アメリカ第一主義」の姿勢を前面に押し出したものであり、米国がこれまで担ってきた「覇権国」の役割から降りようとしているように見えます。
私は、トランプ大統領のこうした姿勢に、極めて深刻なリスクが潜んでいると感じています。
それは彼が、「アメリカのパワーの源泉がどこにあるのか」を正確に理解しないまま、その源泉を自ら放棄しかねない方向へ舵を切っているのではないかということです。
トランプ-ゼレンスキー会談に続き、相互関税政策と、世界の常識が大きく変わろうとしている歴史の潮目に我々は生きていると感じます。
◯アメリカが担ってきた覇権国としての“世界的公共財”
これまでアメリカは、単なる一国のリーダーではなく、“覇権国”としての特別な地位を持っていました。
国際通貨の供給、安全保障の提供、国際機関の運営、法の支配の構築。これらは、単なる国家利益を超えた、「世界の公共財」と言える役割でした。
それがオバマ大統領のときに、「世界の警察」をやめ、トランプ大統領は「世界の道徳規範」「世界の銀行」をも降りようとしています。
◯ドルは「単なるアメリカの通貨」ではない
日中間の貿易、インドとヨーロッパの資本取引など、アメリカが関与しない取引にまでドルが使われています。
英語も同様で、日本人と韓国人、メキシコ人とドイツ人が英語で意思疎通を図ります。
米軍はNATOや有志連合の中で、世界秩序の保護者として行動し、GAFAをはじめとした米国のプラットフォームは、国境を超えて情報と資本をつなげています。
こうしたインフラを提供する一方で、アメリカは確かに多大なコストとリソースを“世界のために”費やしてきました。
そして今、トランプ大統領はその重荷を降ろし、アメリカ国内にそのエネルギーを集中しようとしているのです。
ですが、問題はここにあります。
アメリカが世界に与えてきた“公共財”の提供能力、圧倒的な経済力と影響力は、偶然生まれたものではありません。
それはアメリカが“ドル”という基軸通貨を持つ国だからこそ、享受できた特権だったのです。
◯「ドルは基軸通貨だから使われる」のではない
「世界中が使っているから基軸通貨」なのです
ドルの強さとは、経済の強さを反映するだけではありません。
世界中の人々が「ドルで取引することに安心感を持っている」という信用によって成立しています。
そしてその信用は、アメリカという国が提供する法の支配、経済力、情報力、軍事力、政治力、つまり、覇権国としての総合的な信頼性で成立し、と不可分な関係にあります。
ドルが基軸通貨であるとは、「ドルがドルであるから」ではなく、「世界中の誰もがドルを使っているから」
この“自己循環的な構造”が存在していることは、決して軽視できないことではないかと思います。
◯FRBはアメリカの中央銀行であり「世界の中央銀行」でもある
この構造は、アメリカにとってのジレンマでもあります。
基軸通貨ドルを発行するFRB(連邦準備制度理事会)は、アメリカの景気だけでなく、世界経済の安定をも視野に入れた金融政策を求められます。
国内が過熱気味なら金利を上げたい。
しかし、世界が景気後退に苦しむ中でドル供給を絞れば、グローバルに信用収縮が起きてしまう。
アメリカは自国のためにドルを管理する自由を持ちながらも、世界の責任も負っている。
この「二重性」こそ、覇権国アメリカの宿命でした。
トランプ政権が進めるような自国中心の政策は、この複雑なバランスを崩してしまう危険性があります。
◯アメリカ第一主義は、基軸通貨ドルという“最大の特権”を損ないかねない
通貨には「通貨発行益」(シニョリッジ)という特権があります。
通貨発行益
政府・中央銀行が発行する通貨・紙幣から、その製造コストを控除した分の発行利益のこと。
例えば、お札つまり日本銀行券はその名のとおり日本銀行しか発行することができない。つまり独占発行である。
そして、1 万円札であろうが、千円札であろうが、その印刷コストは 30 円程度である。
この 2 つを材料として、1 万円札を 1 枚発行すると日本銀行は 9,970 円の発行益をあげることができる。

世界中に流通するドルは、そのまま外国製品をアメリカが“無料で”輸入できているようなものです。
また、国際取引をドル建てで行うことで、アメリカの金融業は為替リスクを負わずに巨大な利益を得ることができます。
そう、両替せずに日本円で世界中で買い物ができ、世界中で金融取引ができるんです。これはめちゃくちゃ強力です。羨ましい限りです笑
しかし、トランプ政権のように「世界のためのコストを削る」方向に進めば、その特権の根幹である“世界の信用”が損なわれていくのです。
覇権を維持するにはコストがかかる。
その当たり前のコストを惜しんだ瞬間、覇権の根拠そのものが失われる。
これは、かつてのニクソンショック(1971年)にも通じます。
ドルと金の交換を停止し、変動相場制に移行したことで、アメリカはドルの信用の再定義を迫られました。
そして今、トランプはそれを、より激しく、より無秩序な形で再演しようとしているのかもしれません。
◯トランプ大統領は、矛盾の中に立っている
人民元もユーロも円も、世界共通の基軸通貨にはなりえないかもしれません。
その最大の理由は、「自由な資本移動と透明な制度、世界経済の秩序をコントロールする力」が存在しないからです。
ドルが基軸通貨であるのは、金融市場の自由・通貨の安定・予測可能性といった、アメリカ社会の信用そのものに根ざしています。
その構造を支えるためにアメリカが払ってきた「世界秩序の維持」という負担を、もし放棄するのであれば、アメリカは自ら基軸通貨国である資格を手放すことになるのではないでしょうか。
自国第一主義を掲げ、アメリカの国益に集中しようとするトランプ大統領。
しかしそのパワーの源泉である「基軸通貨ドル」「英語」「グローバルな影響力」こそ、アメリカが“公共財を供給してきた国”であるからこそ得られたものです。
自国のためにリソースを集中させるには、その前提となる世界的な信用が必要。
にもかかわらず、トランプ政権は、その信用の根幹にあった“世界のためのアメリカ”という姿勢を否定してしまっている。
この矛盾に気づかず、もし今の道を突き進めば、アメリカは覇権国としての地位を徐々に失い、
そしてその衰退は、アメリカだけでなく、世界経済全体を揺るがす事態へと繋がっていく可能性があるのではないでしょうか。
次回はこうした世界秩序の変化が、ミドルパワー国家である日本を含めた各国にどんな影響をもたらすかを考えていきたいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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