がん闘病中の父と焚き火
お父さん入院しました。
詳しくはあとで電話で話します。
仕事を終えスマホを開くと母からLINEが来ていた。
年始早々、また入院かぁ‥‥
年末、家族で牡蠣パーティをした。
地元の集まりで余った牡蠣をもらったので、急きょ実家の庭で焼いて食べることになった。
やはり冬なので日が落ちると一気に寒くなり、焚き火もやることにした。
物置きから焚き火台を引っ張り出して、父と準備を始めた。
久しぶりすぎて、焚き火ってどうやるんだっけ‥
となっていた傍らで父は静かに、でもテキパキと動いていた。
ナタを取り出し手慣れた様子で薪を割ると、
ササッとその辺の落ち葉を集め、焚き付けを準備。
あっという間に種火をつくり、火を育てていた。
さすがだ。
まだ敵わないと思った。
「火はいいなぁ」
父は牡蠣を1個だけ食べただけで、あとはただただ焚火を楽しんでいた。
もう一緒にキャンプには行けそうにないが、父が喜んでいる姿を見られて嬉しかった。
焚火は熾火(おきび)がいい。
火は消えたように見えるのだが、実はまだしっかり残っている状態。
キャンプファイアーみたいに立ち上がる炎も魅力だけど、マグマみたいに静かにチカチカ燃えている焚き火もいい。
木を足して風を送ったり、ちょっとしたきっかけで、火はまた元気を取り戻す。
そんな様子を2人で眺めていた。
そして、火を囲みながら父とゆっくり話もできて、良い気分で年を越すことができた。
明けて2026年。
今年もきょうだい家族で集まった。
父もその輪に加わっていたが、食事をしながら何度もうつむいたりして辛そうだった。
母によると翌日は下痢をし、嘔吐もしていたようだ。
それから一週間後に、入院した。
入浴中に息ができなくなって119番。
救急車で運ばれた。
先日の3連休、成人の日に見舞いに行った。
父はもうスムーズに息ができるようになり、普通に会話もできて回復がうかがえた。
でも、細くなった脚を見せられて胸が詰まった。
真っ白で骨と皮だけの状態。
亡くなった祖父の脚にそっくりだった。
家では寝ていることが多く、食欲も落ちてどんどん痩せていっていることは気づいていたが、
筋肉質で元気な人
という元ラガーマンの父の姿は完全にどこかにいってしまった。
私:「おじいさんの脚やん」
父:「そやろ」
そんなやりとりをした後、
会話は続かず、いったんその場を離れた。
売店で買い物して部屋に戻ると父は本を読んでいた。
以前、体調が良くなったら体力をつけるために散歩したいと話していたので今回差し入れたウォーキングの本だった。
背筋はまがっていたが、集中して読みふけっている姿は、おじいさんなんかじゃない。
自分の知っている昔の父のままだった。
まだ大丈夫。
父も、熾火のようであってほしい。
