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Yellow Magic Orchestra「Technodelic」

1981年11月21日に発売の5枚目のオリジナルアルバムで前作「BGM」(1981年3月21日)からわずか8ヶ月後に発売された。タイトルは「テクノ」と「サイケデリック」を掛け合わせた造語。全体的なアルバムの雰囲気は前作を踏襲した暗めな感じの曲が多く、細野曰く「このアルバムは非常に暗い、トンネルのようなサウンド」。本作は「LMD-649」という手作りサンプラーを導入しており、工場音やら一斗缶を叩いた音やら人の声などをサンプリングした世界最初期のサンプリングミュージックとも言われており、本作がYMOの音楽として最高傑作と絶賛するファンも非常に多い。
前作で不調気味かつ少々影が薄かった坂本がこの時期に行った韓国旅行で見事スランプを打破したらしく、その影響が見事に投映されたアルバムでもある。Wikiによると逆に細野がスランプに陥ったと書かれているが、「要出典」と出ていた記述なので本当かどうかは不明。確かに本作は細野氏の影はやや薄いかもしれない。
本作発売後の翌年1982年はYMOとしての「音楽活動」を一切行わず(お笑い番組には3人で出演していた)、YMOとして活動している間はソロを出さないと述べていた細野もソロアルバム「PHILHARMONY」を発売したりと彼等の中では本作をYMOとして最後のアルバムとして認識していた節がある(結果的にはそうならなかったが)。
結成当初から携わり、第4のメンバーと言われた松武秀樹が最後に参加したアルバムであり、次回作「浮気なぼくら」以降、レコーディング・ライブ共に松武が不在となる。

メンバー

細野晴臣
坂本龍一
高橋幸宏

レコーディング・エンジニア、ミックス・・・小池光夫、YMO
アシスタント・エンジニア・・・飯尾芳史
マスタリング・エンジニア・・・湯浅ヒロシ

収録曲

Pure Jam / ジャム
作詞 高橋幸宏、ピーター・バラカン
作曲 高橋幸宏
イントロからいきなり幸宏のアカペラから始まり、淡々としたリズムにほわんほわんした音、「みょんみょん」「ぷしーぷしー」といったボイスパーカッションチックな声(?)が飛び交うユニークでちょい愛らしいサウンド。
元々はレコーディング中に近くの喫茶店で出前を取った際に注文した厚焼きのトーストとジャムを見て同席していたピーター・バラカンが「このトーストはブサイクだ」と発言したのがきっかけというちょっと可愛らしい理由。幸宏がこの光景をみて歌詞にした。
曲の合間合間に入る「ソレジャムデショ」等の声はピーターによるものらしく、トランシーバーを用いて喋っている。

NEUE TANZ / 新舞踊
作詞・作曲 細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏
ケチャを取り入れたアジアン・テクノ風味の曲。ガムランを意識しているであろうプリペイド・ピアノ(グランドピアノの弦の間にフォークやらゴムなどの小物を入れて打楽器のような音に変える演奏法)がチープながらも風味を醸し出している。それに加えて細野のさり気ないスラップベースがまたかっこいい。作詞クレジットがあるが歌詞は「Dance Neue Tanz」のみでほぼインストに近い。

STAIRS / 階段
作詞 高橋幸宏、ピーター・バラカン
作曲 高橋幸宏
ずっしりとした低音を響かせたピアノとうねるベースの音が不気味に調和した妖しい感じの機械的な曲。一定間隔で打ち鳴らされる「カンッ」って音もまた近未来の工場チックな雰囲気が出てる。2分頃から登場するピアノソロ部分は坂本がサンプラーのエミュレーターで演奏したものらしい。
歌詞は人々を誘導する何かを階段で例えているような節に思える。個人的にはサウンドも相まってペンローズの階段↓のようなものを彷彿する。

タモリはこの曲を聴いて「悪魔の音楽」と評したとか。

SEOUL MUSIC / 京城音楽
作詞 坂本龍一、ピーター・バラカン
作曲 坂本龍一、高橋幸宏
「NEUE TANZ / 新舞踊」同様ガムランを意識したアジアン・テクノ風味の曲でボイスパーカッションの「パーッ」「フクチキ」が終始鳴り響いたこれまた妙に印象的な曲。前述通り坂本が韓国に行った時の印象がもろに出た曲といったところか。
歌詞は当時の韓国の情勢を歌っていると思われる。この曲のボーカルはおそらく幸宏(坂本にも似ているが)で、ボーカル部分以外で入るトランシーバー越しの声は坂本によるものと思われる。ライブではトランシーバー部分をメガホンを用いて坂本が叫ぶ形を取っていた。

LIGHT IN DARKNESS / 灯
作曲 坂本龍一、高橋幸宏
インスト曲。イメージ的には陽が完全に沈んだ小さな島の隅っこで灯台の灯が夜の暗闇の中をグルグル周って点灯している情景を思い浮かべる一枚の油絵のような曲。シンセのウェーブがまさに灯台の灯を意識付けるようだ。
細野のベースがこれまたいい味を出しており、これは坂本と幸宏から「チャック・レイニーのようなベースを」という依頼の元弾いているらしい。またハイハットの音は声で、ドラムの音は一斗缶を叩いた音をサンプリングしたものらしい。
凄くどうでもいいが1分36秒ほどから登場する音がマクドナルドのポテトが揚がった時のティロリサウンド↓に聴こえてしょうがない…w

個人的にこのアルバムの中で一番好きな曲。

TAISO / 体操
作詞 坂本龍一
作曲 坂本龍一、YMO
アルバム制作時に一番最初に作られた曲で後にシングルカットされた。細野から「ジョン・ケージのプリペアド・ピアノみたいなミニマルな曲」という注文の元作られた曲で、つい体を震わせてしまうような軽妙でリズミカルなピアノの音が特徴的で、このアルバムの中で一番明るいバンドサウンドテイストのポップソング。YMOの曲の中でも結構異色寄りの曲ではなかろうか。
間奏の声は幸宏だが、ライブでは「SEOUL MUSIC / 京城音楽」同様メガホンを用いて坂本が間奏部分を叫ぶパフォーマンスが恒例だった。
この曲のみ作詞にピーターが関わっていないが、歌詞が体操の号令なのでまぁ。歌詞(というより号令)に登場する「ブルマ」「トレパン」「トレシャツ」は今の子供には通じないだろうし、ブルマ=ドラゴンボールのキャラという認識でしかないであろうな。
余談だが、ブルマは自分が小学校時代(ちょうど2000年頃)の時にはすでに廃止されていたので実物は見た事がない。

GRADATED GREY / 灰色の段階
作詞 細野晴臣、ピーター・バラカン
作曲 細野晴臣
このアルバムで唯一細野がボーカルを務めている曲で、細野がリズムをループ仕立てにしたミニマル的な曲。個人的な印象は秋の曇り空、枯葉を舞う中コートを着込んだ細野氏が街の中を歩いている風景が浮かんだ。
歌詞はおそらく、遠く見知らぬ場所を不安を抱きながら歩いている様子を歌っているように感じた。だとしたら自分が感じ取った印象とだいぶ近いかも。終盤のボーカルを被せてくる箇所が好き。
結構スルメ寄りな曲ではなかろうか。

KEY / 手掛かり
作詞 細野晴臣、ピーター・バラカン
作曲 細野晴臣、高橋幸宏
後にシングルカットされた「TAISO / 体操」にカップリングで収録された。細野と幸宏曰く前作のアルバム「BGM」に収録されていた「CUE / キュー」の続編。坂本曰く「YMO版ハイスクールララバイ」。
何かを探しているような慌ただしい雰囲気のサウンドが特徴。スネアは石油缶を叩いた音をサンプリングしたもので、ベースはアープ・オデッセイを使用しているらしい。
歌詞は「CUE / キュー」が心の叫びならば、こちらはそこから逃れる為の答えを探し求めている葛藤を歌っている様のようにみえる。
一応誰かに訪ねている様子だがあまり親身になってくれない将又理解してくれてない様子。

PROLOGUE / 前奏
作曲 坂本龍一
インスト曲で制作当時近くにあった工場のプレス音をサンプリングしており、終始この音が人間の鼓動のように鳴っている。プレス音と共に淡々と働く小さいロボット達(ピクサー映画の「ウォーリー」みたいな)の風景が見えてきそうな童話チックながらも不穏な感じがチラ見させてくるちょっと可愛らしい感じの曲。
このようなタイトルなのにあえて1曲目に持ってこないあたり彼等らしい。

EPILOGUE / 後奏
作曲 坂本龍一
同じくインスト曲で前曲のプレス音のサンプリングが引き続き鳴り響く。曲の雰囲気はまさに人生を終える瞬間のような儚くも美しく、悲しいメロディがプレス音と共に響き渡る。根拠はないが本当に死ぬ間際に脳内で流れてきそうな曲で、この曲が流れ始めたらこれまでの人生の走馬灯が映し出され、最後のプレス音が止まったあたりで心肺停止、ご臨終を迎えた瞬間がイメージできてしまう。おそらく坂本もYMOをこれで終えるつもりで作曲したのだろうなと。


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