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人事として経営に関わるとは、どういうことか

人事として経営に関わるとは、どういうことなのでしょうか。

私が強調したいのは「循環を意識すること」です。


経営における人事の位置づけとは


経営の重要な仕事の一つは、限られたリソースをどこに再配分するかの意思決定です。

リソースには、資本や資産、時間など様々な種類があります。その中でも、人事が扱う最大のリソースは「人」です。

企業が成長し続けるためには、こうした「人」を循環させなければなりません。だからこそ、採用や配置は経営そのものの根幹に直結します。

外部から新しい力を迎え入れることもあれば、内部で役割を変えることで眠っていた力を引き出すこともあります。ここでの判断を誤ると、組織は容易に停滞してしまいます。

さて、ここまでは多くの人事が理解しているように見えます。ですが、実務に踏み込むと「採用計画を立てる」「紙の上で異動を動かす」といった表面的な作業に留まってしまうことが少なくありません。

そう、ここがまさに肝なのです。人事として経営に関わるうえで重要なのは、本質的に「人が動く」とはどういう現象なのかを理解するが極めて重要です。


「人が動く」というのは、循環である


人が動くとき、目には見えない「知」が動き、「関係性」が揺れ動きます。その人が培ってきた経験や信頼、暗黙知までもが、組織の中に新しい流れを生み出していきます。

だからこそ、採用や配置は単なる人事施策ではなく、組織の循環そのものを形づくる営みなのです。

ここで大切なのは「人材採用・配置=リソースの移動」ではなく、「知や関係性の循環」をどう生み出すかという視点です。例えば、異動を単なるポジション調整として捉えるのか、それとも組織に新たな流れをつくる経営行為として捉えるのかで、結果は大きく変わります。

仮に、ある営業部門で人員が不足しているとしましょう。採用担当者の視点では「欠員を埋めるために新たな人材を採る」という発想になります。けれども、人事が経営に参画する立場で見れば、その採用や異動は単なる補充ではありません。「どのような人材を迎えれば、新しい顧客接点が広がり、既存社員の成長機会も高まるか」といった、組織全体の循環をつくる視点が不可欠になります。

ここに、現場と経営の大きな隔たりがあります。現場が短期的な欠員補充を優先するのに対して、経営に関わる人事は「組織の未来をどう循環させるか」を見据えなければならないのです。


循環は、言語では理解できない。「身体知」が重要


ところで、採用や配置といった現象を、多くの場合、私たちは言語的に理解しようとします。例えば、配置担当者が配属先の責任者に理由を説明し、役割を整理し、フレームワークで正当化する、といった具合です。

もちろん、こうした取り組みは重要です。人は言語を使ってコミュニケーションをとる動物だからです。しかし、経営として人や組織を動かすときは、それだけでは不十分です。人の動きの背後には、言語ではとらえきれない揺らぎが必ず存在するからです。

言語でとらえきれない現象を、言語的に理解しようとすることには限界があります。

そこで必要になるのが「身体知」です。五感や直感といった非言語的なチャネルを通じて、現場の空気の変化を察知し、人と人との間に生まれる新たな流れを感じ取る力。この感覚を磨かなければ、経営の意思決定に資する人事にはなり得ません。

身体知を磨くためには、現場に足を運び、人と直接向き合い、会話や雑談の中から組織の呼吸を感じ取ることが不可欠です。机上のデータや制度設計だけでは決して見えてこない「組織の鼓動」を捉えることこそ、人事の役割です。

私自身、この感覚が腹落ちしたのは、実はつい最近のことです。各社のCHROと対話を重ねるうちに、多くのCHROが頭で理解するのではなく、身体知を使って人事という営みを捉えようとしていることに気づきました。これは大きな発見でした。

経営に関わる人事にとって重要なのは、知識を学ぶこと以上に「感じ取る経験」を積み重ねることです。数字や制度だけでは決して捉えきれないものに触れ続けることが、最終的に経営判断の質を高めていくのです。


最後に:CHROは現場に足を運ぶ存在でなければならない


だからこそ、人事として経営に関わることは、論理だけで物事を処理してはなりません。現場に身を置き、他者と対話を重ね、失敗も含めた経験を通じて、少しずつ身体に刻まれていく営みが重要だと考えます。

その意味で、CHROは現場に足を運ばなければなりません。人と直接会い、声を聞き、空気を感じ取ること。これを欠いたままでは、経営の意思決定に必要な「人の実像」を捉えることはできません。机上の数字や報告書だけで、経営を語ることはできないのです。

現場に足を運ぶことでしか見えてこないものがあります。組織に漂う不安や期待、リーダー同士の関係性の機微、メンバーの小さな違和感。それらは数値化される前に必ず兆しとして現れます。そうした「兆し」を感じ取り、経営の意思決定に結びつけられるかどうかが、CHROの真価を決めます。

では、自分はどれだけ現場に足を運び、その兆しを感じ取ろうとしているだろうか。

この問いは、私自身にも、そして経営に関わろうとするすべての人事一人ひとりにも突きつけられていると思います。


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