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人材ポートフォリオは、何人から必要になるのか

人材ポートフォリオという言葉を聞くと、多くの人は大企業向けの管理手法を想像するかもしれません。

しかし私は、中堅企業にとっても人材ポートフォリオは十分に有効だと考えています。

もちろん、なくても会社は経営できます。
ただ、人材ポートフォリオがあることで、成長の詰まりどころが見えやすくなると考えます。


「見えているつもり」から抜け出す


事業成長とともに組織が拡大していくと、経営者は次第に現場が見えにくくなっていきます。特に150名を超えるあたりから起きやすいのが、「見えているつもり」になることです。

ここで改めて組織別の状況を整理してみましょう。

50名程度:
経営者が全員の顔・能力・志向を把握しやすい段階です。この時期は、人材ポートフォリオよりも、採用基準、カルチャー、オンボーディングの方が重要です。

50名~100名:
全社的な人材ポートフォリオよりも、キーポジション管理で十分です。次のマネジャー候補、退職されたら困る中核人材、採用で埋めるべき重要ポジションを押さえておくことが大切です。

100名~150名:
「見えているつもり」が増えていきます。埋もれた人材、部門ごとの偏在、次の管理職候補が見えにくくなり始めます。

150名~200名:
複数事業、複数部門、複数階層が本格化します。ここからは、個人名だけで人材を見るのではなく、「どの事業戦略に対して、どの人材群が足りないか」を構造的に見る必要が出てきます。

300名以上:
部長候補の不足、マネジャーの質のばらつき、成長事業への人材不足、後継者不在といった問題が顕在化しやすくなります。この段階で初めて人材ポートフォリオを作るのでは、やや遅いかもしれません。

こうして見ると改めて感じるのは、
社員の顔や名前を知っていることと、人材構造を把握していることは違う
ということです。
誰が優秀かを知っていることと、どの事業にどの人材が足りていないかを把握していることも違います。

この「見えているつもり」を乗り越えるには、人材を構造化して見る必要があります。そのための道具として、人材ポートフォリオが有効なのです。


人材課題は、マネジメントの問題として現れる


150名前後が一つの転機になる理由は、人数そのものではありません。
むしろ私は、根本的にはマネジメント構造が変わるからだと考えています。

一人の管理職が直接見られる人数、いわゆるスパン・オブ・コントロールを6〜8名程度と置くと、

・150名の組織でも20名前後の管理職・リーダー層が必要
・200名になれば25〜30名前後
・300名に達すれば40〜50名前後のマネジメントポジションが必要

もちろん、職種、業務の標準化度、メンバーの自律度によって適正人数は変わります。

それでも、この規模になると、経営者が見るべきものは「誰が優秀か」という個人レベルの評価だけではなくなります。

・どの事業にマネジャーが足りないのか
・どの部門に次の責任者候補がいないのか
・成長領域に人材を張れているのか
・事業戦略を実行できるだけのマネジメント容量があるのか

こうした組織全体のバランスを見る必要があると考えます。

では、150〜300名規模の企業は、どのような人材ポートフォリオを持てばよいのでしょうか。

重要なのは、大企業型の仕組みをそのまま持ち込まないことだと考えます。

例えば、
・ハイポテンシャル層の抽出
・9ボックス評価
・複雑なサクセッションプラン
こうした施策は、人事スタッフの層が厚く、データ運用のインフラが整った大企業だからこそ機能します。

成長途上の中堅企業に必要なのは、もっとシンプルなものです。

人材タイプは「新規創出」「事業拡大」「変革推進」「安定運営」など、簡易な4象限でよいと思います。レイヤーも「経営層」「部長層」「課長層」「リーダー層」「メンバー層」程度で十分です。
そこに、後継者不在、離職リスク、育成遅れ、配置ミスマッチ、プレイング過多、管理職スパンの過大といったリスクを重ねていく。

大切なのは、全社員を完璧に分類することではありません。組織全体のバランスを、経営判断のテーブルに載せることだと考えます。

配置転換の必要性はどこにあるのか。
採用の優先順位はどこか。
育成投資をどの層に集中させるべきか。
次の管理職候補は足りているのか。

こうした問いに答えるための「粗い地図」があれば十分です。


最後に:人材ポートフォリオは固定的な判定ではなく、経営仮説として扱うべき


人材ポートフォリオの導入当初は、運用することを考えれば、精緻に作り込みすぎない方がよいと考えます。

そもそも、人材ポートフォリオは、一度作って終わりの資料ではありません。事業戦略の変更、組織改編、人材の成長、異動、退職、新たな採用によって、常に更新されるべきものです。

だからこそ、現場や経営会議で継続的に使える軽さが重要です。

ただし、簡易的なものであっても注意点はあります。それは、人を固定的なラベルで分類してしまう危険です。

「この人はこの象限」と決めつけてしまえば、人の可能性を狭めてしまいます。本人も周囲も、その分類に合わせて人を見るようになってしまうかもしれません。

だからこそ、人材ポートフォリオは固定的な判定ではなく、経営仮説として扱うべきです。

仮説だからこそ、定期的に更新する。運用し続けるためにも、シンプルに始める。この順番が大切だと考えます。


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