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二要素認証があるから大丈夫…って、本当にそう?

第1章:「二要素認証があれば安心」ではない

「二要素認証を設定していれば、もう大丈夫。」

私はこの意見に、少し懐疑的です。

最近ニュースで見かけたのは──
約2,772億円相当の金融商品が、勝手に売られるという、不正アクセスによる被害。

金融庁の発表によれば、2025年1月から5月の間に、証券口座への不正アクセスは10,422件
そのうち、不正に売却された金融商品の総額は2,772億円にのぼるそうです。

想像してみてください。
証券口座にある株が、自分の知らないうちに売られている。
しかも、それが全国で何千億円分も──。

この事態を受けて、ようやく証券会社が動き始めました。
2025年4月、日本証券業協会は58社に対して「多要素認証を導入してください」と要請

楽天証券やSBI証券、松井証券なども、ログイン時の認証を強化しはじめました。

多要素認証の設定必須化を決定した証券会社もリストアップされています。

ですが、
「二要素(多要素)認証を導入したから、もう安心」
──そう思ってしまう人が、また別の落とし穴にはまってしまうかもしれません。

この記事では、そんな「2FA=万能」という空気に対して、一度立ち止まって問い直してみたいと思います。

  • 二要素認証って、そもそも何?

  • なぜ、それでも突破されてしまうの?

  • それでも、私たちはどうやって資産を守ればいいのか?

中学生でも理解できるくらいの言葉で、説明できるように頑張ります。


第2章:二要素認証ってどういう仕組み?効果はあるの?

「二要素認証(2FA)」という言葉を正しく理解していますか?

ちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、仕組みは意外とシンプルです。

簡単に言うと、「パスワードだけでなく、もうひとつ本人確認をする」という考え方です。

たとえば、こんな組み合わせがあります。

  • パスワード + スマホに届く6桁のコード

  • パスワード + 顔認証や指紋認証

  • パスワード + 小さなセキュリティキー(USBメモリのような機器)

これは、「本人かどうかを確認する方法には、大きく分けて3つの要素がある」という考え方に基づいています。

認証の3要素

この中から違う種類の2つを組み合わせて使うのが「二要素認証」です。

過去の記事:「楽天証券のログイン追加認証は安全なのか?」の1章で詳しく書いています。

では、実際にどれくらい効果があるのでしょうか?

たとえば、パスワードが他人にバレてしまったとしても、
スマホを持っていないとログインできない、顔での確認が必要、というように、
1つ目だけでは突破できない壁をつくることができます

このように、2FAは非常に高い防御力を持つ手段のひとつです。

でも、ここで「2FAがあれば必ず安全」ということには残念ながらなりません。

たとえば

  • 偽物のサイトに誘導してログインさせる「フィッシング」

  • ログイン後の状態を盗み取る「セッションハイジャック」

といった手口には、二要素認証でも対応しきれないケースがあるのです。

それでも、2FAは「やらないよりは圧倒的に安全」です。
問題は、「2FAさえ設定していれば、全部大丈夫」と思い込んでしまうこと

次の章では、二要素認証がどのようにして突破されてしまうのか、
その“すき間”をねらった攻撃について見ていきます。

第3章:二要素認証が突破される“すき間”とは?

「2FAを設定していたのに、不正アクセスされた」──
そんな話、実はめずらしくありません。

いったい、なにが起きているのでしょうか?

2FAが守ってくれるのは“ログインの瞬間だけ”

まず、2FAはログインするときにだけチェックされるものです。
一度ログインが成功すると、そのあとはもう「本人として認められている」状態になります。

つまり、攻撃者に“ログイン済みの状態”をうまく盗まれてしまったら、2FAでは防げないのです。

たとえば、会社に入るときに社員証をゲートにかざす場面を想像してください。

これが「二要素認証でログインする」イメージです。

でも、一度入ってしまえば、オフィスの中ではもう誰も「あなたが本当に本人かどうか」をチェックしませんよね。

中に入っている=認証済み。つまり、その後は“本人としてふるまえる状態”が続くわけです。

二要素認証の例

つまり、一度ゲートを潜ることができれば(認証を突破できれば)、あとはやりたい放題という状態にできるわけです。

そのことを念頭に置いて、代表的な攻撃を見ていきましょう。

代表的な攻撃その1:フィッシング(そっくりな偽サイトでだまされる)

最近話題になってきている「フィッシング」という攻撃手口。

本物そっくりの偽サイトに誘導されて、
ID・パスワード・6桁の認証コードまで入力させられてしまうことがあります。

偽サイトに入力された情報は攻撃者に盗まれてしまいます。

🎭 たとえるなら、制服を着た偽警察官に、『身分証を見せて』と言われて、つい見せてしまうような感じです。

過去の記事:「楽天証券の画像認証って安全なの?」の3章で詳しく書いています。

代表的な攻撃その2:セッションハイジャック(ログイン状態ごと盗まれる)

もうひとつは、「セッションハイジャック」。

これは、ログインしたあとの“ログイン状態”を攻撃者に盗まれてしまうパターンです。
ウェブサイトでは、ログインに成功すると「セッション」と呼ばれる情報が発行され、それを使って、ページを移動したり、取引をしたりしています。

このセッションが盗まれると、その人のふりをしてログイン後の操作ができてしまうんです。

🎫 たとえるなら、お城の関所を正式に通過(ログイン)して『通行手形』をもらったのに、その手形をこっそり盗まれて、犯人があなたになりすまして城下町で自由に買い物や取引をしてしまうような感じです。

代表的な攻撃その3:MFA疲労攻撃(スマホ通知に“うっかり許可”)

最近は、スマホに「ログインを許可しますか?」と通知が届くタイプの2FAも増えています。

とても便利ですが、そこにも落とし穴があります。

攻撃者があなたのパスワードを知っていて、何度も何度もログインを試すと、スマホに通知が何度も届きます。

通知がしつこく続いたときに、うっかり「許可」ボタンを押してしまう

そんな人いるの?と思うかもしれませんが、「MFA疲労攻撃(プッシュ爆撃)」と名前がつけられるほど攻撃件数は多いんです。

😩 夜中に何度もしつこくインターホンを鳴らされて、ついドアを開けてしまうような感じです。

代表的な攻撃その4:SIMスワッピング(電話番号ごと乗っ取られる)

SMS(ショートメッセージ)で認証コードを受け取るタイプの2FAを使っている人も多いでしょう。

でも、この方法にも大きな弱点があります。それが「SIMスワッピング」です。

攻撃者は、あなたの個人情報を事前に調べた上で、携帯電話会社に電話をかけます。
そして「スマホを紛失してしまったので、新しいSIMカードに電話番号を移してください」と嘘の申請をするんです。

携帯電話会社の担当者が騙されてしまうと、あなたの電話番号が攻撃者の持つSIMカードに移されてしまいます。
すると、あなた宛てのSMSがすべて攻撃者のスマホに届くようになり、認証コードも盗まれてしまうのです。

近年、この攻撃は急激に増えており、FBIの報告では被害額が2020年の1200万ドルから2021年には6800万ドルに急増しています。

📱 たとえるなら、役所で「印鑑を紛失した」と嘘をついて、あなたの印鑑証明を別の人の印鑑に変更してもらい、その印鑑を使って勝手に契約書にハンコを押されるような感じです。

2FAは大事。でも、過信は危険

ここまで読んで、「2FAってけっこう危ないんだな…」と思った人もいるかもしれません。

でも、2FAは「やらないよりずっと安全」なのは間違いありません。

大事なのは、「2FAがあれば大丈夫」ではなく、「それでも突破されることがある」と知っておくことです。

次の章では、こうした攻撃からどうすれば身を守れるのか、
「自分にもできる対策」をやさしく紹介していきます。

第4章:じゃあ、どう守ればいい?自分にできること

「二要素認証でも突破されることがある」
ここまで読んで、ちょっと不安になったかもしれません。

でも、大丈夫です。
セキュリティは“完璧”を目指すのではなく、「リスクをできるだけ下げる」ことが大事です。

この章では、特別な知識や機材がなくてもできる「ふつうの人がとれる対策」を紹介します。

■ 1. フィッシングにひっかからないコツ

まず大切なのは、「本物そっくりの偽サイト」には注意することです。

メールやSMS、SNSのメッセージで「パスワードを更新してください」「ログインが必要です」といった案内が来たときは、
リンクをそのままクリックせず、自分で公式サイトを開いて確認するクセをつけましょう。

🛑「急がせてくる」「不安をあおる」メッセージには要注意です。

以前iPhoneのパスワード管理ツールに関する記事を書きましたが、パスワード管理ツールを利用することも対策の一つです。

■ 2. スマホに届いた通知やコードは、本当に自分の操作か確認する

たとえば、「ログインしますか?」とスマホに通知が来たとき、
思い当たらないなら、絶対に“許可”を押さないこと。

💡 6桁のコードが急に届いたときも、「誰かがログインしようとしてる?」と疑ってください。
気づくことが、いちばんの防御です。

■ 3. より安全な認証方法を選ぶ

サービスが対応しているかにもよりますが、2FAの方式にもこだわってみてください。

代表的な認証方式は下記です。

代表的な認証方式
代表的な攻撃に対する耐性

🔐 証券口座など大事なお金が関係するサービスでは、できれば「セキュリティキー」がおすすめです。

ですが、セキュリティキーに対応しているサービスは少ないのが現状です…

「FIDO2って何よ?」ってところは別で記事にしたいと思います。

■ 4. ログイン通知や履歴をチェックする

サービスによっては、
「新しい端末からログインがありました」
「○月○日○時にアクセスされました」

といった通知や履歴の確認機能があります。

🔍 自分の使っている証券会社やアプリで、そういった機能があるか見てみましょう。知らない履歴があれば、それは危険サインです。

■ 5. 「安心しすぎないこと」がいちばんの防御

セキュリティでいちばん怖いのは、
「自分は大丈夫だろう」と思い込んでしまうこと。

  • 認証コードが届いたから安心

  • 2FAを設定したから完璧

  • パスワードを長くしたから安全

そう思った瞬間に、隙できてしまうんです。

🤔 「少し疑う」「確認する」
この2つのクセを持っている人が、一番だまされにくい人です。

おわりに:守るために、知っておくこと

二要素認証(2FA)は、効果のある仕組みです。
でも、それさえあれば“完全に安全”というわけではありません。

フィッシングやセッションの乗っ取りなど、人の行動や判断をねらった攻撃には、仕組みだけでは防ぎきれないこともあります。

だからこそ、

  • 2FAは「最低限の守り」としてちゃんと設定すること

  • でも「安心しすぎない」こと

この2つのバランスがとても大事です。

私たちが毎日使っているスマホやネットのサービスは、とても便利です。
でも、その便利さの裏側には、「すき間」があります。

そのすき間をすべて埋めることはできません。
けれど、「どこにすき間があるのか」を知っていれば、必要以上に怖がらずに、うまくつきあうことができます。

セキュリティは、“知っていること”がそのまま守りになります。

この記事が、その第一歩になればうれしいです。

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