「”怖い” 金融庁検査」ー 「半沢直樹」の現場・時代から。
「半沢直樹」の新作ドラマが好調のようだ。話の題材はもう20年以上前のものだと思うが、脚色と強烈なデフォルメでなかなか面白くできている。「損切丸」が入行した銀行が舞台になっているところもあり、「現場」にいた者として感じるのは、その内容がかなりリアルなこと。誇張があるにせよ、日本の銀行というところのカルチャーがよく出ていると思う。
前作の題材になるが、ここでは「金融庁検査」について「半沢直樹」の現場にいた経験から少し書いてみたい。さすがにオネエ言葉の検査官はいなかっただろうが、かなりキャラの立った方はいた。このドラマが世に出た時、「 ”怖い” 金融庁検査なんてよくドラマにできるなぁ。」と感心したものだが、金融庁自体も随分改革が進んでいることもあり、まあ時効だろう。
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「損切丸」が外資系銀行に転職したのが1994年10月。当時日本は不良債権問題に苦しんでおり、そんな中外資系金融機関はまさにやりたい放題だった。「金融庁検査」など入ることはほとんど無く「治外法権」的な状況。
転機が訪れたのは山一証券(1997.11.24)、日債銀(1998.12.13)など相次ぐ金融破綻だ。その際「飛ばし」といわれる損失隠しを主導して「ぼろ儲け」していたのが外資系金融機関であり、それ以降「金融庁検査」が頻繁に入るようになった。その厳しさはある意味「半沢直樹」以上で、最たる例はクレディスイスの関連子会社CSFP(クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ)に対する銀行免許取消(1999.7)だろう。
ほどなく「損切丸」の在籍した銀行にも検査が入ったが、これから書くのはその時の実話をベースにしている(脚色ではない。苦笑)。
episode1
「OOさんは為替のヘッドだから良く証券の方に行かれるんですか?」
「いいえ、私は銀行員ですので証券には行きません」
「そうですよね(ニコニコ)」
翌日...
「OOさん、この1か月に53回も証券に行ってるじゃないか!(怒)」
「えっ...」
「なんで嘘をつくんだ!!(怒)」
「金融庁検査」で最もしてはいけないこと、それは「ウソ」をつくこと。このケースで検査官はビルの管理事務所へ行ってOOさんの入室記録を確認したのである。当時金融庁には警察庁や検察から出向組もおり、これは「検査」というよりもおそらく「捜査」の手法の1つ。外資系に勤める人ははっきりいって監督官庁をなめている人も多く、*まさかそこまで厳しくされるとは思わなかったのだろう。
*当時検査のターゲットになったのが、この「銀・証の壁」、特に「顧客情報共有」の問題だ。ロンドンでは既に金融自由化により取り払われていた「銀・証の壁」だが、東京では規制があり「飛ばし」スキームにおいても外資系の「銀・証一体営業」が問題視されていた。
episode2
「支店長、為替部門のポジションリスクについてどう考えているのか」
「私はクレジット部門(日本で言う審査部)の長で専門ではないので...」
「それでは東京支店の流動性リスクについては?」
「いや、私は支店長は兼務しているだけです」
「支店長の責務を何と心得ているのか!(怒)そんなことでは**支店の銀行免許も考えなくてはならないですよ」
**現在ではこのような「恫喝」と取られる発言は御法度だそうだ。実際「損切丸」の同期行員も検査でヤバイものが見つかり窮地に立たされたが、検査官がうっかり「お前、首だな」のような発言をしたことで状況が一変。「検査部」を「監督」する部署に通報し、「手打ち」になったそうだ。
当時外資系銀行の東京支店では、一部門の長が「支店長」を兼務することが多く「軽い」仕事だった。「損切丸」のデスクから支店長室が見えたが、朝10時頃から***主任検査官が椅子に座り支店長はお昼過ぎまで「立たされていた」。この時「たまたま」支店長だったのは運が悪かったと同情するしかないが、CSFPの実例があったので相当緊張感があったとは思う。
***真偽の程は定かではないがその時の主任検査官は大の外資嫌いで、日本人が外資系に勤めるなどもってのほか、との考えの持ち主と噂されていた。まあ当時外資系では無茶苦茶な部署もあったので、半分は自業自得だ。
episode3
「XX(「損切丸」の実名)、これからお店に立ち入るので出てくるなよ」
「何の件?」
「CSFP出身の行員を調べに行くから」
「”飛ばし”の件なら思い当たることもある。材料提供しようか?」
「ああ、その件はもう知ってるよ。ありがどう」
全くの偶然だが、郡山の小学校の同級生が警視庁の「知能犯」担当に所属していて金融捜査に関わっていた。「損切丸」は「資金繰り」を担当している立場上、海外支店を中継して巨額の「お金」が迂回していることを知っていたので材料提供を申し出たが既に知っていたという話。思い知ったのは、当局をなめてはいけない、ということ。警察、金融庁、財務省、日銀等はがっちり情報を共有しており、数ある「悪業」の中で規模が大きく質の悪いものを「見せしめ」的に立件するという。
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これらの経緯を経て、「損切丸」が退職する頃には東京の外資系も「コンプライアンス」の旗印の元、内部管理も邦銀並みになっていた。それどころか、リーマンショック後欧米で金融機関に対する規制が厳格化され、日銀や金融庁が「やり過ぎ」を心配するくらいであった。日本では銀行を叩き過ぎて日本経済が地盤沈下してしまった、という反省があったのかもしれない。
「裁判沙汰」等実はまだまだ書くのに躊躇うネタはあるが、それはまたの機会に。5年後くらいには解禁になる話もあるかも知れない(苦笑)
