Lさんが貸したい本ベスト3の残り2冊は「蒲生邸事件」と「ミラノ霧の風景」(読書記録2026#7#8)
プノンペンの読書好きの友人Lさん。彼女が読む本が気になって、「本を貸してください」とお願いしたら、3冊ほど手元にやってきた。自分で選ばない本を読むというのは、おもしろき行為であります。1冊目は、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの『日の名残り』でありました。
久しぶりの大作「蒲生邸事件」(宮部みゆき)
執事の仕事への妄想が終わったところで、読みはじめたのが、宮部みゆきの『蒲生邸事件』。宮部さんといえば時代ものというイメージのわたしですが、こちらは、現代から二二六事件の日にタイムスリップしてしまう物語。で、680ページほどの大作。昼休みにさっさと自作の地味弁当を食べてから読書をするわたしのカバンに、少しずっしりくる本でした。いつも200ページ程度の本をほほほほ〜んと読むわたしにとっては、「こ、これは、挑戦や〜」という感じだったのだけど、宮部マジック! 宮部さんの文章がとても柔らかくて読みやすくて、案外サクサク行きました。あとは、次が気になってしまって止められない、という仕掛けね。
二二六事件は実際に起こった事件で、蒲生大将は、架空の人物。でも史実の中に溶け込んで、自称歴女のわたしも、ああ〜、蒲生大将ね、あの人ね、なんて思ってしまうくらい。すごいですよね、作家さんって。平成に生きる大学受験生の孝史が、タイムリープができる家系の人物と知り合って、宿泊先のホテルの火事から逃れて、二二六事件当夜にタイムスリップするというSF。SFなのだけど、感覚としては、歴史小説として読みました。そして、読み進めていくうちに、受験失敗生孝史が、太平洋戦争以前の東京で暮らして、強い男に成長していく、という一人の人間の成長記録みたいな感じもあるという。
そんなに盛り込まれたらば、680ページは超えますわな、という大作でした。感想をこんな単純な言葉では言いたくないけど、思いつかないので言いますが。面白かったです。
初めて読むタイプのエッセイ「ミラノ霧の風景」(須賀敦子)
3冊目が、エッセイ。こういうのを入れてくるのがね、Lさんの素敵なところよね。女性作家が書いたエッセイは、わりと好きで読むのだけど、須賀敦子さんという人の本は手に取ったことがありませんでした。思いもよらない本との出会いも、人から本を借りるからこそだな、と思います。須賀さんは随筆で初めて女流文学賞を受賞した作家さんだそうで、知らなかったで、ごめんなさい。
1929年生まれで、20代のときにフランスやイタリアに留学して、30代までイタリアで過ごした、というのを読んで、最初は、「この人は相当いい家の生まれだったんだろうなぁ」という穿った感想ではじまったわたし。船で40日かけて留学に行くとかなんてもう、特別なことだし、そうしようと思うことがかっこいいなぁとなってきて。須賀さんが、若い頃のイタリア生活の追憶のエッセイを綴ったのが、50代になってからってのを知って、もう、わたしの心は、素敵だ! の一色になっていました。
わたしも、こういうエッセイを書いてみたい。書くぞ! という出所不明の固い決意を産んでくれた一冊です。そして、イタリアに行きたくなります、これ、絶対に。イタリアは、ローマとナポリしか行ったことがないから、「ナポリを見てから死ね」とは言うけど、わたしは、「トリエステを見るまで死ねない」。
Lさんが貸したい本ベスト3(いや、ここまで書いてしまったけど、ベスト3とかでなく、わたしを見て選んでくれた3冊ってことなんだと思う)を読む体験、すごく興味深く、いい時間でした。
特定の指定をせずに「本を貸してください」というの、おすすめです。ただし、相手を選ぶのが本を選ぶより重要になりますけどね。
