『ミドルマーチ』(Middlemarch)
『ミドルマーチ』(Middlemarch)は、19世紀イギリスのヴィクトリア朝を代表する女性作家ジョージ・エリオット(本名メアリー・アン・エヴァンズ)が1871年~1872年に発表した、イギリス文学最高峰と評される長編小説です。 [1, 2]
ヴァージニア・ウルフが「大人のために書かれた数少ない最高のイギリス小説の一つ」と激賞したことでも知られています。作品の概要と、なぜこれが重要なのかをいくつかのポイントで説明します。 [1]
1. どのような物語か(あらすじ)
舞台は1830年代、産業革命の波が押し寄せるイギリスの架空の地方都市「ミドルマーチ」です。特定の主人公一人の物語ではなく、この町に生きる様々な人々の人生が複雑に絡み合う「群像劇(大河小説)」です。 [1, 2, 3]
中心となるのは、理想に燃える2人の若者の挫折と成長です。 [1]
ドロシア(女性):高い理想を持ち、社会に貢献したいと願う知的な美女。尊敬する年老いた学者と結婚するが、彼の偏屈さに絶望し、結婚生活の現実に直面する。 [1, 2]
リドゲイト(男性):最新の医学で地方の医療を改革しようと燃える野心的な若き医師。しかし、見栄っ張りな女性と恋に落ちて結婚したことで借金に追われ、理想を失っていく。 [1, 2, 3, 4]
彼らを取り巻く政治家、銀行家、職人たちの恋愛、結婚、金銭トラブル、政治の腐敗などがリアルに描かれます。 [1, 2, 3, 4, 5]
2. なぜ「文学史上の傑作」と言われるのか?
残酷なほどの「心理描写」:人間のプライド、見栄、すれ違う夫婦の心理などを恐ろしいほど緻密に描き出しています。
一人の英雄ではなく「社会全体」を描く:恋愛だけでなく、当時の医学、宗教、政治、経済、鉄道の開通といった社会の変化が、一つの「宇宙」のように有機的に結びついて描かれています。 [1, 2, 3]
3. 最初にご提示いただいた「名言」の正体
この小説の最後は、文学史に残る次のような有名なメッセージ(結びの言葉)で締めくくられます。 [1]
「この世の善が増大していくのは、歴史に残らないような不条理な行動(unhistoric acts)のおかげであり、……私たちがそれほど悲惨ではない人生を送れているのは、人知れず忠実に生き、今は誰にも見守られていない墓で眠っている人々のおかげなのだ。」 [1, 2]
聖テレサやアンティゴネのような「歴史に名を残す偉大なヒロイン」にはなれなくても、現代の平凡な私たちが日々の生活の中で行う小さな善意こそが、世界を支えているのだという静かな肯定です。 [1]
新渡戸稲造は、この『ミドルマーチ』の精神を深く理解していたからこそ、歴史の表舞台から消え去ろうとしていた「無名の武士たち」の誇り高い生き様を、この小説の言葉を借りて世界に紹介したのです。
関連記事
武士道第17章 #15


1819-1880
いいなと思ったら応援しよう!
このたびはご評価をいただきありがとございます。また、チップまで下さるとは私にとって大変な喜びです。さらに英文訓読の役を進め、アップさせていきたいと思います。