Tacitus タキトゥス とは
武士道 第1章 #30 に登場する Tacitus(タキトゥス) は、古代ローマ帝国(1世紀後半~2世紀初頭)を代表する最高峰の歴史家であり、政治家です。
本テキスト(新渡戸稲造の『武士道』)の中では、彼が著した民族誌における記述が、日本の「武士(サムライ)」の起源や性質を西洋の読者に説明するための歴史的比較対象(パラレル)として引用されています。
タキトゥスの主な特徴
1. 古代ローマ最高の歴史家
西暦56年頃~120年頃に生きた人物で、ラテン文学の金字塔とされる優れた文章でローマ帝国の歴史を記録しました。代表作の『年代記(Annales)』や『歴史(Historiae)』は、当時の皇帝たちの政治や社会の動向を知るための第一級の歴史史料となっています。
2. ゲルマン民族を記録した『ゲルマニア』の著者
引用文にある「ゲルマン民族の首長に従った comitati(従士団)」という記述は、彼が西暦98年頃に著した民族誌『ゲルマニア(Germania)』から来ています。
当時、ローマ帝国の北方にいたゲルマン民族は、ローマ人から見れば「野蛮人」でした。しかしタキトゥスは彼らを単に蔑むのではなく、その勇敢さや、首長と部下が固い忠誠心で結ばれた**「従士制(コミタトゥス)」**の仕組みを詳しく記録しました。
なぜ『武士道』に登場するのか?
新渡戸稲造は、日本の「武士(サムライ)」が主君に命を捧げて仕える独特の主従関係を、西洋人に馴染みのある歴史に当てはめて説明しようとしました。
そこで、**「ローマの歴史家タキトゥスが記録した、古代ゲルマン戦士たちが首長(チーフ)の周りに集まって命がけで仕えたあの忠誠心の強い集団(コミタトゥス)と同じような性質のものです」**と伝えるために、彼の名前を挙げています。

55年頃 - 120年頃
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