児童養護施設で親代わりをしてみたら、私が育てられていた。【支援の順序】
こんにちは。おまつです。
児童養護施設に住み込み、子どもとともに生活をしています。子どもたち1人1人に、大変な過去があります。でも、みんな一生懸命日々を生きています。
当たり前にすぎていく日常の中に、たくさんの感動がありました。そして、深い学びもありました。noteでは、子どもたちとの生活を通して学んだこと、感じたことを、専門的な視点を交えてお伝えできればと思います。
児童養護施設って?
みなさんはご存知ですか?児童養護施設。
各県にいくつか必ずあるんですが、子どもたちにとって非常に大切な場所です。簡単にいうと、子どものためのシェルター機能を果たしています。
入所している子どもの多くは、虐待が理由で保護されています。彼らは子どもながらに、実の親から離れるという道を進んでいます。とてもたくましいですが、とても悲しいことでもあります。
彼らの多くは、本人も気づいていないところで、いつも本当の愛情を探しているように思います。愛着障害というものが広まってきていますが、彼らにこそ、その知識と適切な対応、そして本当の愛情が必要です。
でも、それはとても難しい。
私が児童養護施設で経験した1つのお話を書いていきたいと思います。
私が落ちた深い落とし穴
当時のことです。「子どものためにできることを全力で!」「子どものどんな気持ちも悩みもすべてカウンセリングのように共感し受け止めてあげたい!」という意気込みで、前のめりに入職した私がいました。純粋な私でしたが、入職してまもなくその意気込みをくじかれることになります。
私が担当する子どもは当時6人いました。まだ慣れない環境で、どんな業務をしたらいいか分からないなかで、せめて子どもの対応は一生懸命しようと考えていました。そのため、子どもからの誘いや要求には全て応えようとしました。
「一緒に遊ぼ」と言われたら、例え休憩中でも外で駆け回り、「話を聞いて」と言われたら、自分の業務は全て脇に置き、その子の気持ちが晴れるまで話を聴きました。そうすると、子どもたちはみんな私に寄ってきてくれるようになったのですが、同時に要求も増していきました。
「〇〇ちゃんじゃなくて私と遊んで」
「まだ帰らないで!」
「あの子ばっかりずるい!」
気づけば毎日平均13時間ほどを、児童養護施設での業務や子どもとの関わりに費やしていました。私の心身は日に日に疲弊していきました。また、何でも子どもの言うことを聞く私の言葉を、子どもたちは無情にも聞いてくれません。ホームの規律は緩み、ルールを守らない子どもも増えていきました。
ホーム崩壊
「これ以上続けたら、私の心と体がもたない」
とそろそろ分かり始めた頃、先輩職員からこう言われました。
「断る所は断らないと、ダメなことはダメと毅然と伝えないと」と。
私も「このままじゃいけない」とうすうす気づいていたため、子どもの過度な要求に対しては断ったり、不適切な行動には注意をしていきました。
「今日はこれで遊ぶの終わりね」
「やること終わってから遊ぼうか」
「〇〇くんはさっき遊んだから次は□□くんね」
ですが、私のことをすでに「何でも聞いてくれる人」と思っていた彼らにとって、私の発言はあまりにも力がありませんでした。彼らは言うことを聞くどころか、強い反発を示しました。
「この前は遊んでくれたやん!」
「嘘つき!」「裏切り者!」
「私の話なんて聞きたくないんでしょ」
そんな言葉が子どもたちに増えていきました。
そして、何人かの子どもは私を無視したり、暴言を吐いたりするようになりました。
中には、以前私が渡したプレゼントがあからさまにゴミ箱に捨てられていたり、ゴキブリの死骸が部屋の前に置かれていたこともあります。
ホームのトラブルは解決できず、ルールは誰も守らない。子ども同士も牽制し合うような状態。ホームは崩壊していきました。
私の心はキシキシと軋み、ボロボロと崩れ落ちていくような感覚をリアルに感じました。
そのような中で、ある言葉をきっかけに状況は大きく変わっていきます。
子ども支援の大切な順序
私は毎日布団の中に身をうずめ背中を丸めて、しばらく出勤するかしないか葛藤する日々でした。毎日布団から出るのに1時間ほどかかっていたのを思い出します。子どもたちからの反抗や冷たい眼差しに対して
「もう嫌だな、、」
「なんでこんなに関わっているのに上手くいかないんだろう、、」
という無力感が滲み出るように湧いてきました。ですが、いつも初心の頃の私が
「まだやれる」
「心さえ折れなければいつか子どもに響くから」
という言葉で励ましてくれ、背中を押してくれました。
そんな時に、施設に研修講師として教育心理学の教授が話に来られました。
その方が言っていたのは、
「規律から受容共感、という順序が大切」
ということでした。
また、私が読み進めていた米澤好史先生の愛着障害の本には
「主導権を握った上で寄り添うことが大切」
ということが書かれていました。
それらを踏まえて、施設職員は連携して
「まずはルールを明確にする、その上で寄り添い安心感を育む」
という方針を掲げ、支援を一貫していくことにしました。
私は、臨床心理士として持っていた「子どものいかなる気持ちも受け止め、暖かく関わり見守る」という自分の支援の核を、しばらくの間捨てることにしました。
何の力も技術もない。肩書きも通用しない。まさに0から始めることにしました。
ホーム立て直し
これまで何も言わなかった大人が、だんだんと自分に指示を出してくるわけですから、子どもたちは猛反発します。ですが、そこで怯んだら元も子もありません。
「うるさい!あほ!」
「どっかいけ!」
なんて言葉は日常茶飯事です。私は心理士の畑なもので、すぐに「話を聴いてあげないといけない」「この子の怒りの裏には何があるんだろう」とか時間をかけて考えようとする癖があるんですが、それも脇に置き、子どもの反発に対してはできるだけ心を無にすることにしました。
子どもたちとの関係が悪化しようが、
まずは規律を整えて、
ルールを守る習慣を身につける
ことを最優先としました。
そのためにまず明確で分かりやすい評価制度を設けました。また、人の役に立つような良いことをしたら評価され、人の迷惑になるような悪いことをしたら罰がある、という対応を徹底しました。
そのルールや仕組みが浸透するのに、実は半年程度かかっています。その間に子どもたちは残忍なほど様々なトラブルや問題を起こしました。子どものどのようなトラブルや試し行動に対しても、決めた通りの対応を一貫しました。子どもが一通り反発しきると、「何をしても自分が損するだけだ」と諦めたのか、大人を試すような反発行為は減っていきました。
信頼関係を0から始める
私はこの時点で、強い無力感を抱えていました。
「私は自分の暖かさだけで子どもと関係を築くことはできなかった」「子どもたちは今、私のことを心底嫌っているだろうな」という気持ちを毎日胸に抱えていたのを思い出します。
そんな思いとは裏腹に、子どもたちはルールを守るようになっていきました。朝決まった時間に起き、決まった時間にご飯を揃って食べる。中学生以上は自分で皿洗いと洗濯をする。ゲームの時間は区切られ、テレビも順番に見る。そして、決まった時間に部屋に戻り就寝する。
ルールは増えましたが、子どもたちはこの当たり前の生活を送れるようになっていきました。すると不思議なことに、私と子どもたちとの関わりも落ち着いたポジティブなものが増えていきました。私は罪滅ぼしをするように、子どもとの時間をできる限り暖かい心で過ごすようにしました。
その年の年度末。施設では一年の振り返りをする会が設けられます。各ホームで豪華な食事を取り、担当から子どもへ手紙を読むのがこれまでの伝統です。私は例にならい、子どもたちに手紙を書きました。
「色々なことがあったけど、それを乗り越えて1年を通ってきたみんなを誇らしく思います」といったメッセージを伝えました。ですが、私の内心は「他の方が担当をしていたらきっともっと良いホームだっただろうな」「子どもたちは皆んな私を頼りなく思ってるだろうし、信頼ももうないだろうな」という情けない気持ちでした。
私が手紙を読み終えると、私に1番反抗していた中学生の女の子が立ち上がり部屋に戻っていきました。その子からは数ヶ月間無視されていたほど、関係に苦労した子どもです。その子は戻って来ると、右手には手紙を持っていました。
「ドッキリで子どもを代表して手紙を書いちゃった」と照れながら言っているのを聞いて、手紙の内容を聞いてもないのに涙が止まりませんでした。その内容は、私が子どもたちから逃げずに向き合い寄り添い続けたことに対する感謝でした。
私は嗚咽まじりにこどもたちの前で泣いたのを覚えています。
その後、子どもたちの落ち着きとともにルールを減らしていき、寄り添いの時間を増やしていきました。数年後、そのホームは他のどのホームよりもルールが少なく、子どもが自分たちで問題を解決していくホームへと変わりました。
まとめ
その年は、子どもたちに全力で向き合い寄り添い、そして真正面からぶつかった年でした。
その中で感じた子ども支援の核心の1つは
「規律を整えた上で、初めて寄り添いが響く」
ということです。ルールや適度な厳しさがない中で受容共感的な関わりを行うと、たちまち子どもたちの集団は崩壊へ向かってしまいます。これは、児童養護施設に限ることではなく、
学校でも家庭でも同じです。
今の時代、子どもに共感したり、無条件に受け止めることが大切だと言われますが、全て適切なルールや環境が整った上でのことです。その点を間違うと、私のように苦労することになってしまいます。
この投稿では簡単にまとめていますが、立て直しの期間に様々なトラブルやその対応、寄り添いの工夫、専門的な視点やケアを実践しています。この期間に行った対応は、子どもとの関わりに悩む方々を助けるヒントの宝庫でした。これらを具体的にこれから発信していけたらと思います。
最後に、施設で勤める中で私の心に残り、ささえてくれた言葉たちをここに残しておきます。
「子どもたちに1つの言葉が響くのは、それまでに9の寄り添いを重ねていた時だけだよ。」
「子育てはやっぱり石の上にも3年なんだ。ともに過ごす時間が育んでくれているものは僕たちの目に見えない。」
「卒院した子どもたちに1番思い出に残っていることは、勤務時間に関係なく遊んでくれた暖かさ、相談に乗ってくれた温もりなの。ここの子どもたちはいつも私たちの本当の愛情を見ているの。」
子どもを支えるということは、楽しくもあり、過酷なことでもあります。
子どもとの関わりに悩む全ての方にとって、少しでもお役に立てる存在になることが私の夢です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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