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【SS】冷凍保存は便利です  (1254字)  #シロクマ文芸部

 冷凍庫は、彼氏の好きなものを冷凍したもので一杯に満たされている。もちろん、美憂の大好きだったものたちも凍らせてあった。美憂は冷凍庫の蓋を開けるたびに、満たされている状態を見てにっこりと微笑み、幸せに包まれる。

「今日も冷凍庫には好きなものがたくさん。ふふ、今日の夜は彼のために何を作ろうかなぁ」

 美憂が住んでいる場所は街から遠く離れた林の中。近くには一軒も家がない。買い物もままならない場所だ。ネットで注文する方法も考えたが、受け取る時は自分一人しかいないことを考え、利用することを断念した。結局、美憂は車を運転して隣街まで出かけ、大きなショッピングモールに入っているスーパーで大量に食材を購入して持って帰ることにしたのだった。買い物は月に一回と決め、できるだけ外出を控えることにしている。

 毎日彼氏が喜びそうな献立を考えることが楽しかったし、おいしいと言って食べてくれる姿を見るのはもっと好きだった。

「今日は、卵をたっぷり使ったオムライスと贅沢に黒毛和牛のお肉を使ったロールキャベツにしようかな。あとは…」

 楽しそうに献立を考えていると、美憂のスマホから聞き慣れたテンポのいい着うたが流れた。ミセスのライラック、彼氏が大好きな歌だ。美憂はこれまで使った着うたは全てその時に付き合っていた彼氏が大好きな曲を使ってきた。

「あっ、彼からだわ」
 いそいそとスマホを取り上げ、耳に当てた。
「あっ、美憂、ごめん。今日は夕飯いらなくなったんだ。ちょっと急に飲み会が入っちゃってさ。家は遠いから、今夜はホテルに泊まることにしたよ。ごめんね」
「えっ、帰ってこないの…そう、わかった」

 美憂は夕飯のおかずを作ろうと思って出していた冷凍された食材を元に戻しながら、静かに電話をかけた。

「はい、もしもし、いつもお世話になっております。元気電気店です」
「あのう、前回と同じ冷凍庫を一台届けていただけますか」
「いつもありがとうございます。明日の午前中になりますがよろしいでしょうか」
「構いません、お願いします」

 翌日、電気店からの配達が来た。もう何回も注文しているので顔見知りになっている。美憂は家の裏にある倉庫を指差して言った。

「裏の倉庫に設置してください。同じサイズの冷凍庫があるのでその隣に」
「はい、かしこまりました」

 倉庫には少し大きいサイズの冷凍庫が三台並んでいる。今回で四台目だった。配達員は何も考えることなく美憂に尋ねた。

「冷凍庫、だいぶ増えましたね?」
「ええ、好きなものが多くて冷凍だと長持ちしますから」
「なるほど。羨ましいぎりです」
「ふふ、内緒ですよ。外では話題にしないでくださいね。私の趣味なので」

 配達員は、冷凍庫を設置し、ぺこりとおじぎをして帰っていった。

「ふぅ、また買ってしまったわね。冷凍庫。でも仕方ないか。もう最後にしたいと思ったんだけどなぁ」

 翌日、美憂はマジックを持って冷凍庫の前にいた。全ての冷凍庫の裏側には名札が貼られている。買ったばかりの冷凍庫の裏には、昨日までいた彼氏の名前が書かれていた。


あとがき

 月の花を調べてみました。すると月下美人という花が出てきました。花言葉はなんだろうとみてみると「ただ一度だけ会いたくて」。なんとも切ない響き。イメージしたのは最後に一眼だけ会いたいシーンでした。今回は短めのお話でまとめてみました。確定申告をしなければならないので(笑

 表紙の画像はCHATGPTに作ってもらいました(便利になりましたよね)


下記企画への応募作品です。

先週の投稿 (月の花)


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