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9月20日 バスの日 【SS】新交通網

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- バスの日

日本バス協会が1987年(昭和62年)に行った全国バス事業大会で制定。

1903年(明治36年)のこの日、二井商会による乗り合い自動車が京都市内の堀川中立売~七条~祇園の間を走った。これが日本初の営業バスとされている。最初のバスは、蒸気自動車を改造したもので6人乗り、風雨や砂ぼこりなどを防ぐための幌(ほろ)もなかった。
明治時代はライバルの乗合馬車屋からの妨害や車両の故障が相次ぎ、本格的な営業の継続が難しかったという話もある。大正時代に入ると、自動車の信頼性も高まり、全国的にバス事業の揺籃期(ようらんき:物事の発展する初期の段階)となった。その頃は、多くが数人乗りの小さな乗用車を使っていた。


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【SS】新交通網

 空は飛行機、地上は電車とバスとタクシー、海はフェリーと公共交通機関のインフラが整っていた時代はすでに過去となった。今では、建設コストの観点からレールを敷設しなければならない電車は姿を消した。最も、レールを不要とする重力制御による空中路線を定期的に走行する列車が、過去の電車に取って代わりインフラとして根付いていると言った方が正解だろう。新しい路線にもすぐさま対応できるため、日々新駅が誕生し利用者が混乱することもあるほどだ。ちなみに、過去の「駅」という固定的な建造物はもはや存在しない。全ては高層ビルの屋上で乗り降りできるようになっている。この交通網はエアトレインと呼ばれている。

 自在に重力を制御できるようになったことにより、車の存在意義も変化している。車道という存在は、地上十メートルから二十メートルほどの高さで四から五車線の立体構造の空中道路が定義されており、精密なプログラムにより車線をはみ出さないで走行できるような制御が実現できている。その車線にはバス専用車線も存在している。エアバスと呼ばれている乗り物だ。

 はるか昔の「バス」という乗り物はゴムでできたタイヤが転がることで進んでいたようだが、現在は地上を転がす必要がないので、タイヤというものが存在しない。独立して動く重力制御装置と緊急衝突回避装置以外は共通のプログラムがお互いに会話することによって渋滞を作らないようにし、混雑緩和も実現している。今の時代では過去でいうところの個人所有の自動車というものも存在しなくなっている。過去の時代とはまるで違う移動手段が確立しており、普段の生活において困ることはほとんど無くなっている。最も、都市部だけの話ではあるが。

「うわー、初めて都会に来たけど、都会の空中はエアバスやエアトレインだらけで空が見えないんだな」

「ああ、そうなんだよ。だから地上近くは、常に明るさを保つために人工の光を照らしているんだ」

「都会では天気も制御しているから、雨の心配も無いんだよな」

「ああ、そうだな。ダムの上だけに雨を降らせているし、ハリケーンは上陸しないように制御しているから、エアバスもエアトレインも常に正確に渋滞もなく稼働しているよ。都市部全体を大きなエアコンで覆っているようなものだな」

「凄いよなぁ、凄いけど俺たち田舎者からすれば、時には、少しぐらい時間がずれて到着するほうが人間味があっていいと思うけど違うんだなぁ、都会は」

「僕も本音はそう思うよ。今の都市部は全てがAI制御だから、安心はしているけど何となくつまらないよな。人間の笑顔まで少なくなった気がするし。とりあえず、エアバスに乗ってコーヒーでも飲みに行こうか」

 田舎から出てきた友達のジールを都市部に住んでいるリッチなヨーサンが案内している。ジールは事前に少し都市部のことを学習していたが、実際に目の当たりにして驚いている。田舎の方では、空を埋め尽くすほどの交通網はなく、たまに上空を通過する長距離エアトレインと日に数本のエアバスが運行しているのみだった。

「なぁ、ヨーサン。考えてみれば、エアバスとエアトレインを分ける必要はあるのかな。どっちか一つに統合してもいいような気がするけど」

「確かにね。ジールは鋭いな。実はエアトレインは高層ビル同士を繋ぐ交通網なので富裕層向けなんだよ。だから、どちらも存在し続けているってことさ」

「なるほどね〜。今の時代は過去よりも貧富の差が大きくなってしまったもんなぁ。僕も普段は本数は少ないけどエアバスを利用して通勤しているけど、田舎でも富裕層が乗るエアバスと庶民用のエアバスは車線が違うもんな」

「そうだな。今の時代も金を持っている人間が、より豊かな生活を送れるというのは、はるか昔の時代と同じだな。人間の本質みたいなところかもしれないな。時代が変わっても変わらないものだから」

「そういえば、昔は長距離バスというのがあったらしいな。寝ている間に目的地についてしまうみたいなサービスだったのかな」

「ああ、僕も資料で見たことはあるな。今で言えば、エアリビングだな。まるで自分のリビングにいるまま長距離移動できるというやつ。ソファをベッドにもできるし」

「でも、それも富裕層向けだよな。エアリビングは利用料も高いし庶民には手が出ないな。庶民用としてはエアトレインの長距離用ということになるのかな。今回、僕もそれに乗って来たんだけどね」

「そうだな、同じエアバスやエアトレインと呼んでも違いがあるよな。庶民と富裕層では」

 便利な時代になっても貧富の差は広がりはするものの、縮まることはないようだ。バス自体も大きく変化し、電車との差もほとんどなくなってしまっている。重力制御装置の登場は、海と空と地上の移動する手段を融合してしまった。ただ空中に数多くの乗り物が飛び交っている光景は心に安らぎを与えることはないようだ。日があまり当たらない地上でうごめく人々の表情に幸せやゆとりは感じられない。どうやら、効率化が進みすぎるとゆとりが無くなってしまうようだ。


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