10月16日 世界食料デー 【SS】新たな食糧
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 世界食料デー
国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)が1981年(昭和56年)に制定。国際デーの一つ。英語表記は「World Food Day」。
1945年(昭和20年)のこの日、FAOが設立された。開発途上国における飢餓や貧困について考え、世界の食料生産と分配の改善と生活向上を通して、これらを克服することが目的。
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【SS】新たな食糧
「王様、我々の国の人口の増加スピードに食料の供給が追いつきません。このままでは、なんとかしなければ、この惑星から食料が枯渇してしまいます。どういたしましょうか」
「なんということだ。一千年の月日をかけて二百余もあった国を一つにまとめ、宗教の違いによる戦争も終焉したというのに。今度は食糧危機がこの惑星を襲っているのか。家畜の増産や野菜畑の開拓は間に合わないのか」
「王様、この惑星はすでに伐採できないギリギリの量の森林を残すだけとなり、砂漠も改善して畑になっています。しかし、人口がものすごいスピードで増加していますので、住宅地も不足気味になり、ほとんどが高層ビル化での対応を余儀なくされているのです」
「じゃあ、野菜の水栽培工場はどうなっている。あれなら高層マンションのように工場を縦に積み上げられるであろう」
「王様、野菜工場もすでに取り組んでおります。住宅地のために畑を埋め、その分高層の野菜工場に転化してはいるのです。それでも間に合わないのです」
「では、家畜はどうだ。遺伝子組み換えで育成のスピードを上げられないのか」
「王様、家畜もすでに高層ビルでの飼育を実施し、遺伝子組み換えやホルモン剤投与などで育成スピードを上げてはおりますが、これ以上早めてしまうと肉質が変わってしまうそうです」
「ならば、海はどうだ。漁獲量を増やすことはできないのか。温暖化により、水位が上がり、海は大きくなったのであろう。であれば、魚は増えているのではないのか」
「王様、温暖化のせいで水温が上昇し魚は逆に少なくなってしまっているのです。仕方がないので、養殖に加え最近では深海魚までが市場に出回る様になっているくらいです。それでも、全然足りません」
「うーむ、困ったものだのう。何かいいアイデアはないのか。生物研究者も山ほどいるだろう。何かいいアイデアを出してくれるように伝えてくれ」
王様の憂いは研究者たちにも伝わりました。しかし、今や陸海空の全てにおいてやれる事はやり尽くしてしまったと研究者たちは頭を抱えてしまいました。
「もうこの惑星には不毛の土地は無くなってしまった。それに、完全に惑星自体を無菌化できたので、我々を含めた全ての生物は菌やウィルスの脅威に犯されることも無くなった。しかし、そのことがついに裏目に出始めてしまったのだ。全ての生物のために良かれと思い進めてきた無菌化の結果、最も菌やウィルスに弱かった我々がその恩恵を最大限受けてしまったのだ。産後の死亡率の大幅低下と平均寿命の飛躍的更新を実現してしまった。更に千年前に各国で実施されていた少子化対策が尊重され継続され続けた結果、今や止ることのない出産ラッシュとなってしまっている。食料供給はもう足掻いても追いつけない。我々にはもうどうすることもできないんだ」
頭を抱えていた生物の研究者たちに一人の研究者が近づいてきました。生物研究のメンバーでは見たことがない研究者でした。全員の視線がその研究者に釘付けになりました。
「皆さん始めまして、私は宇宙を研究している者です。皆さんがこの惑星の全ての生物の研究をしていらっしゃるように私は広大な宇宙を研究し続けてきました。そして、見つけたのです。私たちの惑星の千年前の環境に酷似している惑星を。そこから不足分の食料を調達したり、移住を試みるというのはいかがでしょうか。ただし、今の我々に適した食料を見分けなければならないので、是非、皆さんと協業したいと思い、ここにやってきたわけですが、いかがでしょうか」
生物研究者にとっては渡りに船の話でした。自分たちでは到底解決できないことが分かり、王様の期待に答えられないのをただ悩んでいるだけでした。そこに、一筋の明かりを照らしてくれたのでした。宇宙研究者は続けて話しました。
「ただ、リスクもあるのです。千年前の我々の惑星には菌やウィルスが数多く存在していました。そのことで多くの命が奪われました。ところが今の我々の惑星はその心配が全く無くなったわけです。言い換えれば、もし、今、菌やウィルスがこの惑星に入ってきたら、我々は抵抗することができず、種として途絶えてしまうかもしれません。もちろん惑星外から持ち込むものは完全に無菌化されて持ち込むシステムがあるので、惑星内に菌が入り込むことは不可能でしょう。しかし、移住となるとそうではありません。私の言いたいことを理解していただけましたか。我々は、今、一度に十万人を乗せられる宇宙船を一万機ほど製造しています。もちろん、世界中の工場で作っているのです」
「それは、もしかして」
宇宙研究者はニヤリと不吉な笑みを浮かべました。
「はい、ご推察の通りです。しかも街ごと宇宙船に載せていけるのです」
この後、王様に生物研究者たちからの提案書が届きました。王様は首を長くして優れたアイデアの提案を待っていました。
「王様、現在の我々の惑星では増えすぎた人口を支えられる食料調達は不可能だという結論に達しました。それゆえ、人口の半数を我々の惑星によく似た環境の惑星に移住することを提案いたします。すでに、惑星は見つかっており、宇宙研究者と共に段取りを進めています。移住といっても街ごと宇宙船に載せての移住を実現しますので、国民の負担や心配は高く無いと考えています。惑星間で食料の貿易ができる様になれば、行き来も可能となり我々の惑星の発展にも寄与できるものと考えます。どうか、ご熟慮の上、実施のご判断をお願いします」
王様は、考え込みました。『他の惑星に国民を追いやることになるのでは無いだろうか。しかし、それ以外には方法が無い様でもあるし、困ったなぁ。なんで私が国王の時にこんな重要な判断をすることになってしまったのだろう。うーん』そう思って悩んでいるところにお妃様がみえられ、一言だけアドバイスをされました。
「王様、明日から王様の食事を半分以下にしてもよろしいですか。そうでなければ選択肢は一つしかありまん」
この一言で、王様は決断し、命令を下しました。
「皆の者、街単位で宇宙船に乗り込み、地球という惑星に移住する準備をさせよ。移住対象の街を世界中から今月中に選ぶが良い」
了
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