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9月4日 オークションの日 【SS】盗品

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- オークションの日

不動産オークションサイトを運営する株式会社ジアース(現:日本アセットマーケティング株式会社)が制定。

日付は「オー(0)ク(9)ション(4)」と読む語呂合わせから。


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【SS】盗品

 絵画オークション会場が騒然となった。なんと、つい最近亡くなった新進気鋭画家、マーガリン四葉氏の作品が登場したのだ。描かれている絵は、溶けたマーガリンの海で漂う小舟の上で、どこか寂しさを纏ったビーナスが月を見上げて涙を流している作品だった。マーガリン四葉が亡くなった後、紛失していたと噂され続けた遺作だった。実際にはマーガリンの海ではなく、海がまるでマーガリンが溶けているような濃厚な黄金色で表現されているため、「マーガリンの海」と鑑定家などが表現しているものだった。これは、マーガリン四葉が海や川などを表現する際、常に濃厚な液体のような表現と青色ではなく黄色を主な色として表現するのが特徴だった。誰しもがもう世の中には現れることはないだろうと諦めていた作品だったのだ。

「さぁ、お集まりのみなさま。皆さんがすでに諦めていた、マーガリン四葉の最後の遺作『マーガリンの海に泣くビーナス』の正真正銘、本人直筆の絵の登場です。もう、マーガリン四葉の作品を見ることはできません。相応な価格での落札をお願いします。落札開始価格は、五千万円から。さぁ、どうぞ」

「一億円」

「一億五千万円」

 なかなか競りの終わりが見えない。どんどん価格は上昇した。集まった人々はオークショニアの言葉に促され、高値を更新していった。

「五億円」

 ここで、競りが止まった。最終落札価格は、五億円まで上がった。最終的には、二人の買い手によって競り合っていたが、五億円に乗った時点で、一人の買い手が諦めたのだ。その瞬間、この絵の持ち主は、金持金太という富豪が落札した。そして、手にすることができなかった買い手はスッと立ち上がりオークション会場を後にした。会場では、ステージに金持金太が登壇し、小切手で五億円を渡していた。

 マーガリン四葉が亡くなったのは、一年前だった。その死には不審な点が多かったが、自殺と他殺の両面で捜査が始まった。捜査担当は証初見あかしはつみという若手女性刑事と縁梨賞えんなししょうという万年刑事のお馴染みコンビだった。決定的証拠は見つからず、絶食による自殺として処理され、捜査は終了していた。ただ、証刑事は何となく引っかかるものがあったが、どうしようもなかったのである。マーガリン四葉が亡くなった時、アトリエからは一枚の絵が忽然と消えていた。それが、今回のオークションで登場した絵だった。マーガリン四葉が死亡した後、ネット上でその死を煽るように最後の作品に対する話題で盛り上がっていたのだ。それから、半年たった今、オークションにその絵が突然現れた。当然、会場は騒然となったのである。オークション終了後、一ヶ月が経過した頃、縁梨刑事は、すごい高値に驚くばかりだったが、証刑事は、刑事として盗難されたものではないかと疑いを持った。証刑事はオークションの経過を聞き、当時の映像も確認して、最後まで競り合った人物に的を絞った。その人物は、生前のマーガリン四葉が出入りしていた画廊クローバーの店主だったのだ。早速、二人の刑事は画廊を訪ねた。

「こんにちは。警察です。刑事の証、縁梨と申します。少しお話を伺いたいのですがよろしいですか」

「えっ、警察の方がどんな用事ですか」

 突然の刑事訪問で動揺しているのを証刑事は見逃さなかった。縁梨刑事は画廊内の絵を食い入るように見ている。マーガリン四葉の絵を探してみたがどうやら飾ってはいないようだ。

「先日、オークション会場にてマーガリン四葉氏の絵を最後まで競ってましたよね」

「えっ、いや。オークション会場なんて行ってませんよ」

「ご主人、映像でも残っていますので、正直にお話しください」

「うっ、そう言えば顔を出したかもしれません」

「なるほどね。この画廊、先月までは四億以上の借金があったはずですが、一括返済されていますよね。それはどこから調達した資金ですか」

「そ、そんなことを言わなければならないのですか。ビジネス上の取引ですよ」

「マーガリン四葉の絵の売却価格がどこに振り込まれたかを確認すればすぐ分かりますよ。本当に、関係ありませんか。我々が確認後に申告されるとあなたに取って不利になりますよ」

「・・・今、私への嫌疑は一体何なのでしょうか」

「マーガリン四葉氏の絵画の盗難容疑です。不必要な価格上昇を狙った詐欺罪。それに盗難品であれば売上金の横領にもなりますね。来年までに税の申告がなければ脱税容疑も追加されますよ」

「そ、そんな。やっと借金を返したのに。ふぅ、分かりました。正直に話します。あの絵は、マーガリン四葉氏が、生前この画廊に持ち込んで来たんです。それを私が百万円で買い取りました。その時の領収書もありますよ。随分と生活費に困っていたようでした。私は、長い付き合いだったので色を付けて値段を付けたつもりでした。でも、彼があんなことになってしまい、ネット上で急激に人気が出たので、もしかしたらと思って待っていたんです。そしたら、誰かがネット上で煽ってくれて、最後の作品が幻の作品とまで呼ばれるようになり、人気急上昇になったところで、絵画オークションが開催されることになり、出品したんです。何としても、借金を返したかったので、一か八か、競り自体にも参加してしまいました。それは認めます」

「ふむ。意図的に値を釣り上げたのは、詐欺罪が適用される可能性は高いですよ。それに借金に当ててしまったら、税金はどうするつもりだったのですか」

「目の前の借金返済のことしか考えていませんでした」

 こうして、画廊の主人はオークションでの意図的な価格釣り上げ行為を認めたが、一方相手も納得して競っていたのは事実であり、満足されていたため起訴にまでは至らなかった。あとは、来年の確定申告の際に税金申告の課題を残すのみである。ただ、マーガリン四葉氏が自殺で処理されたことに、証刑事はまだ納得できていないようだった。きっと、しばらくは個人的に捜査を続けることだろう。


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