9月3日 秋の睡眠の日 【SS】深い眠り
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 秋の睡眠の日
「睡眠の日」は、睡眠健康推進機構(公益財団法人 精神・神経科学振興財団)が日本睡眠学会と協力して2011年(平成23年)に制定。
世界睡眠医学協会(World Association of Sleep Medicine)が定めた3月の「世界睡眠の日」(World Sleep Day)に合わせて、日本独自の睡眠の日として3月18日を「春の睡眠の日」に、「ぐっ(9)すり(three=3)」と読む語呂合わせから9月3日を「秋の睡眠の日」としている。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】深い眠り
都会の片隅にひっそりと建っているワンルームマンションで、床出多眠男という男が静かに深い眠りに入り、息を引き取っていた。外傷は何もないし、首を絞められた後もない。ただ、どうみても自殺には見えない。一人暮らしのため誰にも気づかれなかったのだ。普段はリモートで仕事をしているプログラマーだったため、ZOOMを使った定期的な進捗報告の日が来るまで気づかれずにいたのだ。上司とプロジェクトメンバーがZOOMで参加を待っていたが、一向に入って来る気配が無いのでメンバーの一人が床出が住むマンションを訪ねたのだった。だが、チャイムを鳴らしても返事がない。オートロック玄関だったため部屋の前までいくことはできず一旦諦め帰宅し、上司に報告をした。上司は「面倒だな」と思いつつ、携帯に何度も電話をしたりメールを送ったりした。しかし、どれにも応答がない。流石におかしいと感じ警察に連絡をし、警官と共に床出のマンションまで出かけていった。そして、管理人の立ち会いの下、床出の部屋の鍵が開けられ、ベッドに横たわっている床出を発見したのだった。すでに死後三週間以上が経過していたため、腐敗が進み始めていた。
担当刑事は、証初見という若手女性刑事と縁梨賞という万年刑事だ。二人は床出の上司に一通り説明を受けたが、どうやらリモートでの仕事ということで放任されていたようで、詳細はわからなかった。監督責任は会社に任せて、二人は現場を鑑識と共にくまなく調査した。ひと通り捜索はしたが、特に不審な点は見当たらなかった。ベランダで、男が寝る前に干したと思われる洗濯物がカラカラに乾き風にそよいでいるだけだった。
関係者への聞き込み終了後に判明した気になる事実があり、証刑事と縁梨刑事が話をしていた。司法解剖の結果、青酸系の毒が原因での死亡と判断された。
「縁梨さん、被害者は同僚に相当金を貸していたようですね。しかし、その同僚の加瀬木翔流に、話を聞いた時、目は泳いでいましたが、アリバイがあったんですよね。彼女と一緒に自宅にいたって言うんです。確かに、加瀬木の彼女の宝望美は一緒にいたと証言しているし、近所の住民からは電気がついていて動く影をみたと言ってるんですよね。私は、絶対、加瀬木が怪しいと思ったのですが、思い違いなんですかね」
「証さん、いや、あなたの勘は、正しいんだと思いますよ。僕が気になったのは洗濯物ぐらいだったんですけどね。男なのに夜選択して寝る前に干すなんて細かい性格なのかなって感心してましたよ」
「えっ、それって。もしかして女性が部屋に入ったのかもしれませんね。洗濯バサミから指紋を確認してみましょうか」
縁梨の言葉に反応した証は、鑑識に指紋確認を依頼した。同時に、宝望美の指紋で照合依頼を実施したのだった。証刑事の考えた通り、指紋は一致した。加瀬木の彼女である望美はなぜか、被害者宅に出入りし、洗濯をして干していたことになる。証刑事は、加瀬木と宝望美に対して別々に事情を確認することにした。証は二人に同じ質問を投げかけてみた。
「加瀬木さん、本当は宝望美さんはあなたの所にいて少し部屋を出た時間があったんじゃないですか。近くの道を歩く宝望美さんを見た人がいたんですよ」
「え、あ、あぁ、そういえば忘れてました。確かに買い物に出ていた時間がありました。えっと、夜八時くらいから十時ごろまでだったかなぁ」
これに対し、宝望美は、一秒たりとも外出はしていないと開き直ったのである。ついに二人の意見にずれが生じたのだ。証刑事は考えた。殺害の時、被害者に眠ってもらってから、何らかの方法で毒殺したんだとしたら、なぜ、洗濯物を干しにベランダに出たのか。ベランダに出なければならない理由が、殺害を実行するためだとしたら、その方法は何だろうかと考えている時、横で縁梨刑事が呟いた。
「この部屋の空気、なんか澱んでるな。換気口は空いてんのかな」
その呟きで証刑事は閃いた。そして、鑑識に現場の換気口を調べるように依頼した。その結果、案の定換気口の中にジャムの瓶のようなものが入っていたと言うことがわかった。残留物を検証するとわずかではあるが、シアン化水素が検出されたのだ。宝の実家は殺虫剤の製造を担当しており、入手は可能だった。宝を任意で呼び寄せ、再び、問い詰めた。
「宝さん、あなたは床出さんのマンションに行き、洗濯をしてあげましたよね。そしてそれをベランダに干した。指紋が検出されたので言い逃れはできませんよ」
「ふぅ、はい。行きました」
「そして、洗濯物を干すときにシアン化水素が入ったビンを換気口の中にセットしましたね。床出さんを殺害しようとして。あなたの実家で容易に入手できる人体にとっては毒薬です。実家で紛失していることも確認済みですよ」
「え、バレてしまいましたか。はい、私が彼を殺害しました。シアン化水素が気化して寝ている床出さんは吸い込んでくれると思ったのよ。換気口の中は見つからないと思ったのになぁ」
「どうしてこんなことをしたんですか」
「だって、私の本当の彼は加瀬木なのよ。彼が窮地に立っているから何とかしようと思ったのよ。人助けだったのよ」
自分の恋人の窮地を救うために、被害者のマンションに行き、殺害することで恋人の借金返済を無しにしようと企んだようだった。しかし、恋人の加瀬木は、宝のことが重荷になっていたようだった。一途に思うことは善悪の区別までできなくしてしまうものなのかもしれない。それに、どんなに重要な睡眠でも目覚めない眠りになっては元も子もない。交友関係には気をつけたいものだ。
了
🙇🏻♂️お知らせ
中編以上の小説執筆に注力するため、コメントへのリプライや皆様のnoteへの訪問活動を抑制しています。また、ショートショート以外の投稿も当面の間は抑制しています。申し訳ありません。
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
一つ前のお話はこちら
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説 #毎日ショートショート
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。