6月13日 小さな親切運動スタートの日 【SS】未来に続け
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-小さな親切運動スタートの日
1963年(昭和38年)のこの日、「小さな親切」運動本部が発足した。
この年の東京大学の卒業式の告辞で、総長の茅誠司が「小さな親切を勇気をもってやってほしい」と言ったことがきっかけとなった。その後、実践例が新聞などで報じられ、社会から幅広い共感が寄せられ、6月13日のこの日に茅を始めとする学者・ジャーナリストなど8名の提唱者が運動を発足させた。茅が初代代表に就任し、以後23年間同職を務めた。「できる親切はみんなでしよう それが社会の習慣となるように」、「人を信じ、人を愛し、人に尽くす」をスローガンに運動が進められている。
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【SS】未来に続け
今や小さな親切運動は日本国内から世界に広がり、人々の心の中に平和の大切さを伝えるとともに他人への気遣いを通じ、人間として成長することを教えてくれた。それでも思いやりを忘れた人間はあちこちで紛争を繰り返したり、他人を傷つける行為を「正義」と称して続けていた。それでも少しずつ小さな親切運動は広がっていった。
西暦2150年、ロボットが人間の通常の生活の中に入り、違和感なく活動する頃には、経済成長を支援する以外でも家庭内の仕事を担当するロボットも登場していた。同時に古いロボットは分解され最新ロボットの部品として再生されて利用され始めていた。そんな時に登場した運動が、分解される対象だった初期型AI搭載のロボットとともに、人々に対して小さな親切を実施するという活動だった。人前に出ることが苦手な人たちが、自分たちの未来を変えたいという思いから考え出されたことから始まった活動だったが、それが社会に認識されるまでになっていた。
人と親切ロボットの連携による親切活動が広がるにつけ、黄色のユニフォームをつけたロボットということで認知されるようになり、知名度は上がり「小さな親切」運動本部のメンバーの耳にも届いた。「小さな親切」運動本部は二百年近く前から始まった小さな親切活動だったが、時には人の命を救う活動にも繋がり、その重要性はじわじわと浸透していた。だが、残念なことは、大人になるにつれ経済重視、財産を作ることに重きを置きすぎる人たちも増加していて、見て見ぬ振りをする人も増加してしまっていた。そんな社会の中で、親切ロボットのニュースは嬉しい出来事だった。
人間と違い、忖度を必要としないロボットは小さな親切を実行し続けた。もちろん、ペアとなって活動していた人が隣にいたからできたことではあるが、ロボットに対する偏見もなくなり、ロボットとの共存生活は多くの人から受け入れられていた。この活動はまさに「小さな親切」運動本部の「人を信じ、人を愛し、人に尽くす」というスローガンに一致する活動だった。
活動を聞きつけた「小さな親切」運動本部のメンバーは、黄色のユニフォームを着ているロボットを街の中から探し出し、ロボットと一緒に活動している人と話をすることができた。ロボットとの二人三脚で親切活動している人は「小さな親切」運動本部の存在を知らなかった。運動本部のメンバーが趣旨を説明するととても喜び、一緒に活動を盛り上げようということに発展した。
「初めまして。やっとお話できます。私は、小さな親切運動本部の前田といいます。全世界に向け、小さな親切を広げ、平和への道を目指しています。あなたたちのロボットとの活動も今や立派に平和へつながる活動だと思いました。ついては、我々と活動をともにしてもっともっと親切の溢れる街づくりを目指していきませんか」
「どうも、初めまして。親切ロボットとともに活動をしている良田です。もともと親切を推進する活動があったのですね。知りませんでした。私たちの場合は、自分たちが人前でうまく話ができないということからロボットと一緒だったらできるかもという発想で始まった活動だったのです。なので特に組織化もしていませんがSNSでは繋がっています。みんなにも連絡して一緒に活動するようにしたいですね」
「ありがとうございます。ぜひ、ご連絡していただいて、みんなで活動していきましょう」
こうして親切ロボットも人同様にメンバーとして参加することになり、いよいよ親切の活動が活気を帯びるようになっていった。本来は人間が小さな親切を実施することが目的で発足した「小さな親切」運動本部だったのだが、今やロボットとの共存社会が当たり前の時代になってしまったことを受け、ロボットが活躍することを快く受け止め、ロボットと共に人間が住みやすい環境を作っていく必要があると判断された。
人の善意の心をロボットが行動に移してくれる関係、それを見て小さな子供が困っている人に声をかけるようになる。そんな連鎖反応も期待しながら、彼らの活動は未来へと続いていくだろう。
了
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