10月1日 国際コーヒーの日 【SS】朝陽を浴びながら
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 国際コーヒーの日
東京都中央区日本橋箱崎町に事務局を置き、コーヒー消費の更なる拡大とコーヒー業界の一層の発展を目的に活動する一般社団法人・全日本コーヒー協会が1983年(昭和58年)に「コーヒーの日」を制定。
日付は国際協定によって定められた「コーヒー年度」の始まりの日であることから。また、コーヒー豆の収穫が終わり、新たにコーヒー作りが始まる時期、コーヒーの需要が高まる時期でもある。
この日は「国際コーヒーの日」(International Coffee Day)でもある。飲料としてコーヒーの普及を促進し、祝典を行う記念日であり、世界中でイベントが実施される。国際コーヒー機関(International Coffee Organization:ICO)が承認して以降の最初の公式の記念日は2015年(平成27年)10月1日であり、イタリアのミラノでイベントが行われた。
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【SS】朝陽を浴びながら
毎朝、日の出と共に目を覚まし、コーヒー豆を手回しのミルで一回分だけ挽く。ドリップの準備をしてペーパーフィルターを準備する。もちろん、円錐型のフィルターだ。一点に集中してコーヒーの旨みを抽出できるから円錐型を使っている。部屋いっぱいに広がるコーヒーの香り。毎日が、ザ・朝という感覚。これから一日が始まるということを思いっきり自覚して、大きく息を吸い込む。満ち足りている時間だ。ベッドにはまだ横たわったままの君がいる。まだ日が昇った時間だから、起きるには早すぎる時間だ。
僕は君を起こさないように静かにお湯を沸かし、少し冷ましてドリップにゆっくりとお湯を滴らせる。挽いたばかりのコーヒーの粉がゆっくりとお湯を飲み込んでいく。するとたまりかねたように、プクっと気泡を出す。二酸化炭素の放出だ。しばらく様子を見たあと、またゆっくりとお湯を滴らせる。何も考えないこの時間が大好きなのだ。
そして、君は明るい日差しが入ってくる部屋でゆっくりと瞼を開けて大きく伸びをする。
「おはよう。今日もいい天気だよ」
「うーん、おはよう。コーヒーの香りが心地いいわ。こっちに持ってきて」
僕は淹れたてのコーヒーをマグカップに注ぎ分けて両手にもち、ベッドに戻る。まだ、朝の時間にはゆとりがあるから、ベッドの中でコーヒータイムを楽しむ。愛しい彼女と共に。
「いつも美味しいコーヒーありがとう。私、モカが大好きなのよね」
「わかってるさ。だからストレートのモカか時々モカブレンドにして楽しんでいるんだよ」
「フフ、いつまでも淹れてくれるのかしら。私のために」
「当たり前だろ。ずっと淹れてあげるよ」
だいぶん太陽が昇ってしまった。僕は慌ててシャワールームに入り、出勤の準備に入る。その間に彼女はお決まりのブレックファーストを作ってくれる。スクランブルエッグに生野菜のサラダ、そしてベーコンとトーストだ。ちょうどシャワーを終えて髪を乾かした頃に出来上がる。毎朝のルーティンだ。これで今日も一日頑張ろうという気持ちに切り替えられる。
窓から見える景色はタワーマンションだらけではあるが、人工物の美しい建物の間から差し込む自然の朝陽が大好きだった。僕が出勤したあと、君は簡単に部屋を掃除して、シャワーを浴びてから出勤する。僕に遅れること二時間くらいかな。地下駐車場に停めたレクサスに乗っての出勤だ。因みに僕は電車だけど。
会社は横浜のウォーターフロントにあるセキュリティ会社だ。セキュリティと言っても警備会社ではない。サイバーセキュリティの会社だ。僕は、そこで毎日コンピューターウィルスやフィッシングメールを見つける仕事を担当している。もちろん、世界中のネットワークを対象に目を光らせているのさ。チームメンバーは十人。十分とは言えないが、ストイックな連中ばかりで生産性は高い。僕も負けてはいられない。目を光らせながら、ハッカーたちとの騙し合いに明け暮れる。残業はしない。完全に交代制だからだ。残念ながら夜勤もあるので、その時ばかりは辛い。
今日も遅い出勤のボスの登場だ。いつもの様にめかし込んですらっと伸びた長い足にはフレアパンツが似合っている。それにハイヒールなので余計に足が長く見える。我々の上司は僕より二つ年下の女性上司だ。仕事では全く敵わないと僕は自覚している。
「みなさん、おはよう。今日は北米の方で新しいウィルスが発生したようね。ヨーロッパに飛び火しようとしているみたいだから、注意して追いかけてね」
「おはようございます。了解です。我々も今朝気づきました。現在注視している段階です」
「今日、私は午後から他のセキュリティ会社との情報交換会に参加するので、そのまま直帰します。もし、決済すべきことがあれば、できるだけ午前中にWEBで提出しておいてくださいね。会議中は確認できなくなりますから」
我々の会社では紙の伝票は存在しない。全てがシステムを通じて申請する様になっている。我々にとっては便利だが、上司は休む暇もなく大変だろうなといつも思ってしまう。
昼食の時間となり同僚と近くの安い定食屋に向かいながら、同僚が話しかけてきた。
「なぁ、庄司。俺たちの上司はかっこいいよなぁ。女性だけど憧れちゃうよな。名前も、朝野光だろ。かっこいいよな。いつでもお日様に照らされているみたいじゃないか」
「ああ、そうだな。かっこいいよな。宏太には彼女いないんだっけ」
「いないよ。お前だっていないだろ、まだ」
「えっ、あぁ、そうだな」
「あの上司の心を射止めるのはどんな野郎なんだろうな。きっと、エリートでバリバリ出世する奴なんだろうな」
「どうかな。現実はわからないんじゃないか。事実は小説より奇なりっていうしさ」
そんなたわいもない話で盛り上がりながら、定食屋でアジフライ定食を食べて満腹になった後、自動販売機で缶コーヒーを買ってオフィスに戻る。仕事では全く不満もないし、同僚にも恵まれていると思っている。今日は帰ってから彼女と一緒にマンションの近くのホテルにディナーに行く予定だ。だから今日は定時で仕事が終わり次第速攻で帰る。
察しのいい読者は気づいたかもしれないが、僕の彼女の名前は光。仕事場と家とでは全く違った女性を演じているんだ。そこがまたたまらないのだけれど。もちろん僕たちが付き合っていることは、まだオフィスでは秘密だ。バレてしまうと違う部署に異動させられてしまうから。
「ただいま。光、今帰ったよ。出かける準備できてる?」
「あっ、お帰りなさい、庄司。今日はドレスにしたわよ。合わせられる?」
「おう、一着だけ持っているパーティ用スーツに着替えて行こうかな」
僕は久しぶりのディナーデートに少し興奮しながら、タクシーを呼んだ。
了
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一つ前のお話は連載でした。最初のお話のリンクを付けておきます(7話連載)
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