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【SS】 ヒマワリの思い出 #シロクマ文芸部

 ヒマワリへと続く道は暑い。暑い時期の花だから仕方ないと割り切って歩いている。季節は夏真っ盛り。汗だくになりながら歩いているが、照りつける太陽がなぜか心地いい。そういえば、場所は違うけど、小さい頃親父にヒマワリを見に連れて行ってもらった記憶がある。あの頃は、ヒマワリが大嫌いになったなぁ。

「ねぇ、父ちゃん。花なんて見ても面白くないよ。海に泳ぎに行こうよ」

「勝治、男だって花の良さを知ることは大切だぞ。ほら、着いたぞ。見てみろ、このヒマワリの海」

「うわっ、すげっ。まっ黄っ黄な海だ〜。みんな同んなじ方向向いてるね」

「そうだろう。ヒマワリはな。自分の親分をちゃんと分かってるんだよ。だから、みんな親分の方に顔を向けて一生懸命咲いているんだぞ」

「へー、じゃあ、おいら、大きくなったら親分になってやる」

「おお、そうだな。人の上に立つような人間になれるといいな」

 そんな話をして、小学校三年生の二学期が始まった。まずはクラスの親分になろうと思い、いきがっていたら、周りのクラスからも集まってきた男子にボコボコにされてしまい、俺は、小さくなって小学三年生の時期を過ごさなければならなくなったんだ。それ以来、ヒマワリは嫌いになったのさ。

 今日は長かった務めが、やっと終わって塀の外に出られた日だ。誰も迎えには来ていない。もう、何度この塀の中の生活をしただろう。北海道に住みついて、酔っ払いを相手に金を巻き上げる生活も飽きてきたのだが、なかなか組織から抜け出すことができない。俺みたいな下っ端は、上の言うことを聞いてないと明日どうなるか分からないから、下手なこともできない。今は、すっかり俺自身がヒマワリみたいになっていると思いながら、灼熱の道を歩いている。荷物は小さなカバンだけだ。塀の中に入った時は冬だったから革ジャンだった。真夏には似合わないが、脱ぐのも面倒だから、Tシャツの上から革ジャンを来たまま歩いている。滝のように流れ落ちる汗で気持ち悪いはずだが、全く気にならない。

 塀を出て三十分ほど歩いて、やっと着いた。網走の大曲湖畔園地だ。東京ドーム四個分もあるヒマワリ畑は圧巻だ。ふぅ〜っとため息を一つついて、同じ方向を向いて咲いている百五十万本のヒマワリの花を見渡しながらペットボトルの水を一気に飲み干した。一瞬だけ、サーっと一陣の気持ちいい風が吹いた。黄色い海は、風を受けてさざなみのように揺れている。暑さと時を暫し忘れさせてくれる光景だ。

「お前たちの親分は、太陽なんだよな。俺は太陽には慣れそうにないけど、ヒマワリにもなりたくないんだ。でも、お前たちの凄さは感じさせてもらったよ。ありがとう」


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